イラクの子どもたちが選ぶクリスマスのおもちゃ
イラクの子どもたちが選ぶクリスマスのおもちゃ
ダール・ジャマイル&アリ・アル=ファディリー
2006年12月26日
Electronic Iraq 原文
ファルージャ(IPS)。アフメド・ガジは、ファルージャにある自分のおもちゃ屋にクリスマスのおもちゃを置いておく必要を感じていない。最近の子どもたちが何を欲しがるかわかっているからだ。
「銃や戦車といったおもちゃを輸入するのが一番よいのです。イラクの少年たちにはそうしたおもちゃが一番よく売れますから」とガジはIPSに語る。「子どもたちは、路上で起きていることを真似しようとするのです」。
少女たち向けのおもちゃも決まっている。「少女たちは、踊ったり音楽を演奏し歌を歌う人形よりも、鳴いている人形を好みます」。
アメリカ合衆国を始め世界中の子どもたちがクリスマスを祝い、新年を迎える準備をしている中、イラクの子どもたちはまったく別の世界に暮らし、その世界に応じたおもちゃを手にしている。
バグダードにあるイラク子ども発達研究所の社会学者ヌハ・カリルは、IPSに、最近、少女たちは押し込められた悲しみを、小さな少女の世話をする母親の役割を演ずるままごとを通して表すことが多いと述べる。
「回りを見ても、目にするものはといえば、愛する人たちを失い悲しみに暮れる女性の集まりばかりだからです」とカリルは言う。「こうした少女たちを慰め、内面のダメージを癒すという私たちの仕事は、ほとんど不可能に近いのです」。
何らかのトラウマを抱える子どもたちは何万人もいる。そうでなくても、普通の生活が送れないことは、十分なトラウマになる。
娯楽がないことも、大きな問題となっている。バグダードには映画館が10軒しかなく、公園は荒れ果てたのが二つあるだけだ。どこも、子どもたちにとっては安全な場所ではなくなっている。
子どもたちは外に遊びにでかけなくなっているし、家でももう安心できない。国連の推定では、毎月10万人のイラク人がイラクから逃げ出している。周辺アラブ諸国に暮らすイラク人は今や180万人にのぼる。さらに、イラク国内に、160万人の国内避難民がいる。
「難民インターナショナル」によると、イラクで家を追放された人々がこの調子で増えると、まもなくダルフールの難民危機よりも大きな危機となるだろうという。そして、家を逃れて、また別の場所に行くことで、最も苦しむのは子どもたちである。
「家をなくした子どもたちは乱暴になりがちで、新しい環境や新しい同級生から孤立しがちです」と、ファルージャの小学校の校長(女性)ハヤム・アル=ウカイリはIPSに説明した。「新たな環境になじめずにいます。無理矢理その環境に置かれたと感じるようで、それを拒否するのです」。
先生たちやソーシャル・ワーカは、子どもたちはアメリカ合衆国に対する深い敵意を抱くようになると語る。良い生活のイメージでアメリカ合衆国が考えられることは、もはやない。
「アメリカ合衆国とイラク政府に対する期待を子どもたちは失っています。毎日毎日、状況は悪化するばかりだからです」。子ども支援を行っているイラクのNGOのアブドゥル・ワヒド・ナトゥムはバグダードでIPSにこのように語った(彼は自分の組織の名前は言いたがらなかった)。
「今起きている状況について子どもたちは信じられないほどよく理解しています」と彼は言う。「たぶん、家族の年長者たちが政治について話し、ニュースを見ているからでしょう。12歳の子どもと話していると、その頭の中に膨大なニュースが詰まっていることに驚かされます。いいことではありません」。
「悲劇的な事件で最も大きな影響を受けるのは子どもたちです」とファルージャの精神科医カリル・アル=クバイシ博士は語る。「パーソナリティが繊細なので、周囲で恐ろしい事態が進んでいることに加え、親を失ったり家を失ったりすることに耐えられないのです。破滅的な帰結をもたらします。イラクの子どもたちは、孤独に閉じこもるか暴力に訴えるかという、深刻な危険に晒されています」。
子どもたちが抱える困難は、今年特に明らかになった。「胸に抱いていることといえば、銃と銃弾、死と、米軍の占領に対する恐れだけです」とイラク心理学者協会(API)の報道担当マルアン・アブドゥラーは、今年2月の調査開始の際の記者会見で述べていた。
調査報告書は、「イラクの子どもたちはあらゆるフアン、とりわけ誘拐と爆発のフアンの中で、心理的に深刻な苦しみを抱えている」と述べる。
APIは、4カ月にわたりイラク全土で1000人以上の子どもについて調査を行い、「調査した子どもの92%が学習障害を抱えており、それは主として現在の恐怖と不安の環境に起因する」と述べている。
イラク人口の半数近くが18歳以下である中、暴力的で混乱を極める占領の破滅的な影響は、極めて大きい。1980年以来の三度にわたる戦争、驚くべき規模の難民危機、家族を失うこと、自爆攻撃、自動車爆弾、そして最近では占領米軍や死の部隊により家を襲撃されることへの恐れから、若いイラク人たちは身体的にも精神的にも人格を破壊されている。
2003年4月の時点で、ユニセフは、米軍主導の侵略により50万人の子どもたちがトラウマを抱えることとなったと推定していた。それ以来、状況は劇的に悪化している。
今年前半にイラク教育省が発表した報告書は、たった4カ月の間に学校に対する攻撃が417回あり、それにより64人の子どもたちが殺され、57人が怪我をしたと述べている。また、同じ時期に、登下校の途中で47人の子どもが誘拐された。
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投稿者:益岡
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