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2006/05/28

NGOから国連安全保障理事会への手紙(2006年5月)【ダイジェスト版】

国連安保理では、決議1637により、6月15日までに多国籍軍への治安権限委任について再検討が行われることになっています。これを前に、英国のIraq Analysis Groupや、United Methodist Churchなど、27の非政府組織が連名で安保理常任理事国(英米仏中露)に宛てて手紙を出しました(5月19日付け)。

以下、その手紙の日本語化ですが――差出人の数が多く、また注(「半角カッコに数字」で示してあります)も細かくつけられていて、このブログでは全文は投稿できない分量になってしまっているので、ここでは手紙の本文の部分だけを抜粋して掲載します。

差出人や注(資料集)のついた完全版は、私のウェブスペースにアップしてあります。資料として使えるのは、断然、完全版なのですが、トラバやコメントはこの記事にいただければと思います。
http://www.geocities.jp/nofrills_web/translation/
ngo-unsc_may2006.html


原文:http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?
SectionID=15&ItemID=10299

または、http://www.globalpolicy.org/security/issues/iraq/unrole/
2006/0519iraqletter.htm



国連安全保障理事会常任理事国代表者の皆様へ

2006年5月19日

大使各位

決議1637により、国連安保理は2006年6月15日までに、イラクにおける多国籍軍(Multinational Force: MNF)への(治安権限の)委任について再検討を行なうことになっています。同決議はまた、イラク開発基金(Development Fund for Iraq: DFI)について、および国際諮問監視理事会(International Advisory and Monitoring Board: IAMB)の作業内容について、再検討を行なうことも定めています。

今回わたくしどもがお手紙を差し上げておりますのは、国際社会が期待しているとおり国際法の基準、および財務面での監視の基準を用いた上で、これらの件について厳密かつ徹底的に再検討を行なっていただくよう、安全保障理事会に要請するためです。すでにご存知のように、多国籍軍は数多くの重大な国際法違反の疑いをかけられております。また、イラク開発基金と復興計画には、広汎な汚職および違法行為の疑いがあります。これらは極めて重大な事柄であり、安保理はこれらを調査し策を講じるべきであります。

近々予定されている安保理での再検討に際し、以下の各点についてご精査のほど、お願い申し上げます。

1)拘束と拘置施設(刑務所)

多国籍軍は、長期間にわたり、起訴することも裁判にかけることもないままで、数千人単位でイラク人を拘束しています(1)。そのように拘束されている人々の大多数は、法律面での相談や家族との面会といった基本的な権利を許されぬままです。多国籍軍はまた、人権団体が拘置施設を訪れたり被拘束者と面会することを何度も求めているのも拒んでいます(2)。さらにおそらく、多国籍軍は、被拘束者への完全な面会については、国際赤十字委員会にさえ許可を与えていません(3)。国連イラク支援団(United Nations Assistance Mission for Iraq)によれば、多国籍軍が4件の大規模な刑務所および多くの地域単位の拘置施設で拘束している人数は、2006年2月時点で14,000にものぼっています(4)。国連イラク支援団はまた、イラク政府が約15,000人を拘置していると報告しています(5)。また多くの情報源が、これら被拘束者たちは同様に、起訴も裁判もないままで、またひどい条件下で拘束されていることは確実と述べています(6)。人権団体および国連職員による苦情は数え切れないほど出されていますが、それにもかかわらず、多国籍軍はこういったことを3年以上も続けており、また、イラク政府による拘置条件違反が増加していることに対しても、ほとんど策を講じていません。これらは、1966年市民的および政治的権利についての国際規約(International Covenant on Civil and Political Rights(1966))に、明らかに違反していることです。

2)被拘束者虐待および拷問

数多くの拘置施設および刑務所において、多国籍軍は被拘束者たちを、残酷で非人間的で自尊心を傷つけるような扱いのもとに置いてきました。それらは人権当局によって「虐待(abuse)」とか「拷問(torture)」であると認められています。多国籍軍の警備担当者および尋問担当者は、拘束しているイラク人たちを、ありとあらゆる肉体的・精神的虐待(mistreatment)のもとに置いています。例えば、長時間にわたって激しく殴打する、頭にフード(袋)をかぶせる、水に沈める、強制して裸にする、性的に虐待する、睡眠を奪う、窒息させる、電気ショックをかける、犬で脅すといったことをはじめとする、辱めが行なわれています(7)。アブ・グレイブ刑務所における虐待の事例は世界中に広く知れ渡りました。多国籍軍は、あのようなことはもう行なわれていないと主張していますが、非常に信頼できる情報筋が、不法な扱いは今も続いていることを示唆しています(8)。先日、アムネスティ・インターナショナルが、イラクでは被拘束者たちは米国によって「拷問もしくは虐待(ill- treatment)に相当する可能性のある条件」で拘束されている、という報告を出しました(9)。アムネスティ・インターナショナルはまた、イラク政府の管轄下にある刑務所や拘置施設において、拷問やひどい虐待(abuse)が当たり前のようになっていることを報告しています。アムネスティ・インターナショナルによれば、多国籍軍は司令官が6について「十分に承知している」場合にも、イラク当局に被拘束者を引き渡しています(10)。これらは、 1985年国連拷問禁止条約、1907年ハーグ条約、1949年ジュネーヴ条約に、明らかに違反しています。

3)不法で無差別的で、殺傷能力の極めて高い兵器の利用

多国籍軍は、国際条約で禁止されているか、または容認されず非人間的であると広く考えられている、無差別的で殺傷能力の極めて高い兵器を使用してきました。多国籍軍はナパーム型のMK-77(11)、および白燐弾薬(white phosphorus munitions)を使用してきました(12)。これらの兵器は、建物の密集した市街地に位置する標的に対して直接用いられていますが、その条件から、一般市民への影響があることはかなり確実でした(13)。これらの兵器は極めて残酷なものです――肉に貼り付き、犠牲者を焼き殺す(burn victims to death)ものです。またこれらは無差別的で、女性や子供を含む無辜の市民を焼き殺してきました。これらの兵器をこのような形で用いることは、1980 年「過度に負傷能力が高く無差別の効果を生む可能性のある武器」に関する国連の条約の第3議定書(Protocol III of the UN Convention on Weapons Which May Be Deemed To Be Excessively Injurious Or To Have Indiscriminate Effects (1980))で禁止されています。2003年のイラク侵攻の間、連合軍は劣化ウラン(14)およびクラスター爆弾(15)を使用しました。クラスター爆弾の子爆弾が爆発せずに残ると、後になって一般市民を殺傷しますし、人の住む地域で爆発すれば一般市民を傷つけます。爆発した劣化ウラン弾からの粒子は、長期にわたる健康被害を引き起こすと考えられています。多くの人々が、これら兵器のどちらか、もしくは両方が、ジュネーヴ条約第1議定書にある、不必要な苦しみと無差別的な被害を及ぼす兵器の禁止の条項に違反するものであると見なしています。

4)人口密集地への攻撃および包囲という戦術

国連安保理は、武装衝突においては一般市民を保護すべきと主張してきました(16)。しかし多国籍軍は何度も繰り返し、人口の密集した文民目的のセンター的地域を標的とし、空から、また陸上から爆撃し、重兵器を用いてきました。2004年の2度のファルージャ攻撃に加え、アル=カーイム、タル・アファル、サマラ、ナジャフといった都市に、複数回の攻撃が行われてきました。このタイプの作戦は、今もまだ行われているようですが、多くの一般市民の犠牲という結果になり(17)、また都市インフラを大規模に破壊し(18)、多くの割合の住民たちを難民としています――ファルージャの事例だけで、およそ200,000人が難民となっています(19)。これらの作戦の間、多国籍軍部隊は、水(20)や医薬品(21)といった非常に重要な必需品をカットしていたと伝えられています――ジュネーヴ条約第2議定書第14条ではっきりと禁止されている包囲という戦術です。また、多国籍軍は明らかに、医療機関の中立を尊重することを守っていません(22)。こういった行為は1949年ジュネーヴ条約の数多くの条項で禁止されています。

5)不正支出、およびイラク開発基金に対する監査のないこと

2003年5月、安保理は決議1483に基づいてイラク開発基金を設立し、最終的に国連は9978ドルを同基金に託しました(23)。同基金はまた、以前は凍結されていた基金から資金を受け取り、イラクの原油売り上げの収益から定額を受け取ってきました。これらの資金に対しては連合軍/多国籍軍が管理もしくは影響を与えてきましたが、使われていながらその用途が不明という割合が、愕然とするほど高いのが実情です(24)。米国政府の会計士による調査によって、多くの契約が入札なく与えられていたことが明らかになりました(25)。米国および国際的監査によって不規則支出と認定されたものがまったくの窃盗にまで拡大しているケースもいくつかあります(26)。このほかにも、単独供給契約(sole-source contracts)、書類の紛失、巨額の水増し請求、キックバック、書類に残されておらず説明もできない支出などの不正支出が、国際諮問監視理事会およびイラク復興についての特別監査官(Special Inspector General for Iraq Reconstruction)によって、繰り返し重要視されています(27)。最近公表されたある契約スキャンダルでは、1億8,600万ドルが費やされたのに、建設予定の150の診療所のうち、できたのはわずか6軒に過ぎません(28)。このように、多国籍軍の管理と監査は効果をあげず、汚職が横行する環境を許容しているのです。さらに、密輸集団が公式なチャンネルから石油を密かに流し、イラク国外に運び出してもいます。それも大きな規模で(29)。その結果、イラクのニーズは高まっているのに、イラク開発基金の収益は収縮し、汚職に侵食されてしまっているのです。最近発効した2003年国連腐敗防止条約(UN Convention Against Corruption (2003))が、こういった問題の多くを重点課題としています。

6)文化遺産保護についての恐るべき失敗

しっかりとした専門家集団から何度も警告があったにもかかわらず(30)、連合軍は侵攻と戦争の初期の数週間において、イラクの極めて貴重な文化遺産を守ることに失敗しました。国立図書館は火災でひどく損傷し、その保管文書は完全に失われました(31)。国立博物館からは大量の貴重な物品が略奪されました(32)。また略奪者たちは歴史的建造物や芸術品を損傷もしくは破壊し、守られていない考古学的に重要な地点から大量の略奪を行ないました(33)。そしてその後、多国籍軍はバビロンの遺跡の場所に軍事基地を建設し、その結果甚大な損害を遺跡に与えました(34)。多国籍軍は歴史的建造物や考古学的に重要な地点に対する保護を実質的に増すことにも失敗しています。そしてさらに、イラクの考古学的に重要な意味を持つ場所(世界で最も重要な文化遺産のいくつか)の、悲劇的で予防可能だった略奪は、今も続いているのです(35)。こういった行為は、1972年の世界遺産条約で禁止されています。

7)刑事免責

刑事免責を前提としていては、法治は機能不可能です。安保理は、平和と和解へ向かう方法として、法治の重要性と免責を終了させることの受容性を確認しています(36)。しかしながら、多国籍軍は広汎な刑事免責を主張しています。その範囲は、多国籍軍の部隊から、私営(軍事企業の)警備担当者、外国の軍および文民請負業者、果てはイラクと取引をしている石油企業にも及んでいます(37)。イラク人と彼らの政府は、事実上、何らの法的な償還を得ていません。米国をはじめとする多国籍軍各国は、ごくわずかの極めてひどい拷問や目を覆いたくなるような財務上の違法行為について、限定的な法的な罰を適用してきましたが、拷問の場合であってさえ、完全な調査を受け法の裁きを受けた事例はごくわずかです。それはヒューマン・ライツ・ウォッチとヒューマン・ライツ・ファーストとニューヨーク大学法学部による先日の報告に明らかです(38)。命令の責任を負う人々は、依然として、法の埒外にあります。多国籍軍の将校たちが、安保理の委任(決議1483、1511および1546)を、自身の行動の第一の法的根拠として挙げている以上、安保理はこれら免責の慣行について、特別の責任を負うものです。

最後に、わたくしどもは国連安保理に対し、多国籍軍への委任を厳格かつ完全に再調査していただくよう要求します。最低限、安保理は多国籍軍の行動の基準が国際法と一致するよう、行動の基準を規定することができるはずです。例えば、安保理は、被拘束者は短期の後に起訴されるか、釈放されるかすべきである、と主張することができるはずです。あるいは、すべての拘置施設が国際赤十字委員会や人権団体による調査に開かれるようにすべきであると命じることもできるはずです。一般市民の集中している区域への攻撃をは禁止することもできるはずです。無差別的で極めて殺傷能力の高い兵器を使ってはならないとすることも、遺跡を十分に守るよう主張することもできるはずです。汚職防止のための厳格で強制力ある基準を設けることも、虐待および拷問を完全に禁止することも、免責の慣行を終わらせる方策をとることもできるはずです。

国連安全保障理事会がその責務を担い、国際法に照らしてこれらの事柄を徹底的に話し合い、国際社会と相談し、そして安保理が多国籍軍に与えている権限を実質的に再考、もしくは修正、あるいは終了するときは来ていると、わたくしどもは信じています。

敬具


※この記事はダイジェスト版です。本文中で「半角カッコに数字」で示されている注などは、完全版でご覧ください。

投稿者:いけだ