新たな拷問ケースが調査で明らかに
新たな拷問ケースが調査で明らかに
リサ・アシュケナス・クローク
NewStandard紙原文
2004年12月31日
イラク全土の米国が管理する収容所に入れられていた男女に対する聞き取りを行なっている米国の法律家チームは、2004年8月に最初の事実確認使節を派遣して以来、新たな虐待と拷問のケースが次々ともたらされていると語っている。
ミシガン州在住の弁護士シェリーフ・アキールがニュースタンダード紙に語ったところでは、12月にヨルダンのアンマンに赴いて釈放された被拘留者と面会して以来、虐待がなされたという主張一つ一つを数え確認する時間はとれていないが、少なくとも100ケースは「絶対に間違いなく」あると述べている。拷問を生き延びた人々の証言を整理し、それを目撃証言と関連づければ、300ケースにのぼることになるだろうと彼は言う。
この法律家チームは、既に50人以上の元被拘留者からの証言を記録している。これらの証言は、イラクで米国が運営している収容所や刑務所のネットワーク全般で行われたとされる重大な虐待、強姦、拷問、侮辱、宗教的に品位を傷つける行為を詳しく述べている。8月の調査で、アキールと調査に参加したモハメド・アロマリはまた、宗教的被拘留者を体系的に標的としたことが伺えることを明らかにしている。また、2004年7月に至っても、看守たちが15歳の少年を強姦していたことも明らかにされた。
2004年の10月および12月上旬にさらに2度元被拘留者への聞き取りを行なったあと、同チームが公式に取り扱う虐待ケースの数は、少なくとも2倍に増加した。イラクで混乱が増大しているため、アキールのチームはイラクを訪れることができない。そのため、イラク人にバスでヨルダンに来てホテルに滞在して貰い、戦争から少しだけ離れて一息つけるところで、釈放文書を含む収容所が発行した文書を見せてもらい、恐ろしい経験を語ってもらうというかたちの聞き取りを行なっている。
「私たちが聞き取りを行なっている人々は釈放された人々です。これらの人々は何ら告発されることなしに釈放されました。実際これらの人々は何ら告発されることなしに拘束されたのです」とアキールは言う。「そしてある日書類を受け取ります。時間は終わり、何が何だかわからないけれど釈放だ」。
新たにわかったケースは、これまでの証拠が示していた事態をさらに確実なものとしている。すなわち、何の犯罪を犯したと告発されたわけでもないのに収監されたイラク人に対して侮辱と虐待を行うという広範にわたって採用された方針、さらに、とりわけ信心深い被拘留者を体系的に標的とすること、である。
法律家チームが記録したケースの中で多くを占めるのは、聖職者をはじめとするコミュニティの指導者たちのケースである。アキールは、ケースを記録するためにインタビューした元被拘留者の中に、専門的職業に就く人々や聖職者が多いことに驚いたと語っている。
「こうした人々----弁護士や医師、薬剤師など----は、ただイラクの人々を助けようとしていただけなのです」とアキールは言う。彼は、とりわけ、イマームや部族の指導者たちが語った虐待の数とその性質について憂慮しているという。「イマームを拷問し、裸の女性にむりやりイマームの食事を持っていかせたりするとき・・・・・・イマームたちは信者にアメリカ人について何を語ることになるでしょうか?」とアキールは言う。
アキールが語ったケースの中には、ある男性が宗教的に日中断食している際、夜どおり食事は提供されず、断食を始めなくてはならない時間の直前にだけ食事が与えられたと語っている。この扱いは「何日も」続いたと。
釈放文書の検討を通して早々とわかった予想もしなかったことの一つは、元被拘留者たちは米軍がイラクで運営する収容所の25箇所もで不法な取り扱いを受けたと述べていることであった。このことは、アブグレイブの拷問スキャンダルは一施設のみに限られたものだという米国政府の公式の立場を覆すものである。アキールによると法律家チームは現在、「25以上の収容所」におけるケースを記録している。
「聞き取りを行えば行うほど、ますます多くの収容所の実態が明らかになる」とアキールのパートナーであるアロマンは言う。
拷問を受けたと申し立てる人々の大多数は男性である。妊娠していることがわかって自殺した一人の女性を除いて、申し立てをした女性はわずか10人程であるとアキールは言う。けれども実際には、米国人看守によるイラク人女性に対しての性的虐待や拷問は蔓延しているとの疑いがある、と。
「女性たちにとって、とてもとても困難な状況です」とアキールは述べた。性的虐待を受けた男性は村八分にされるかもしれないが、女性は家族の手で殺されさえする可能性が高く、少なくとも完全に遠ざけられて結婚は決して許されなくなると彼は説明する。
アキールは、尋問者たちが女性たちはまず語らないだろうことを知っており、「文化を利用している」と避難する。彼は、あるケースでは、男性被拘留者の真向かいの監房で看守たちが女性被拘留者を後ろから強姦したケースについて語った。調査団がこの犯罪の証人[真向かいにいた男性]から話を聞いたとき、証人は、この女性はその苦しみを被っているとき彼を「死んだ目」で見つめていたと証言したとアキールは語る。この証人は、事件について証言するとき「鉛色」の顔をして涙を流していた、と。
契約企業の職員は批判を逃れている
現在、人数を増しつつあるイラク人原告の代理をしているアキールと同僚の弁護士たちは、イラク収容所での侵害に関して明らかにされた数百のケースをめぐり集団訴訟に持ち込む手続きを進めている。「憲法権利センター」(CCR)によるコーディネートのもとで、訴訟は、CACIインターナショナルとタイタンという政府と契約した企業が、私企業の尋問者と通訳を使うという疑問の多い新たなやり方の中で自分たちの効率性を示すためにより多くの自白を手にしようと残忍な技術を用いたことを訴えている。
4年前、軍のパトリック・ヘンリー副長官は軍の諜報収集を営利企業にまかせることが本質的に伴う危険を指摘していた。2000年12月26日のメモで、ヘニーは軍諜報に、就任予定のブッシュ政権が推進することが予期される私営化方針から軍の諜報を例外とするよう求めていた。ヘンリーは、諜報収集機能を私企業にまかせることは「米国の国家安全保障にとって」危険であると述べていた。
アブグレイブに関する米軍レビューの中でCACI社とタイタン社に対する批判が最初に現れたとき、米国下院議員ジャン・シャコースキー(イリノイ州選出民主党)はただちにイラク収容所に関与している私企業とのすべての契約を停止するよう大統領に呼びかけた。
CACI社とタイタン社は、拷問と虐待への関与をすべて否定し、自分たちに対する訴訟をでっち上げと決めつけた。訴訟に関わっているアキールと弁護団は、軍や政府関係者だけでなく契約私企業も拷問に関係していることを示すホカホカの証拠はまだ見つかっていないことを認めているが、事実発見のプロセスで明らかになった情報を目撃証言と結びつけるならば、契約私企業と拷問との関係もはっきりしてくると考えている。
シャコースキーは2001年以来、軍務に契約私企業を用いることに反対していた。その年の4月、CIAと契約した傭兵企業の職員が、米国人宣教師の乗った飛行機をペルーで撃ち落としていたのである。彼女はアンデス地域で傭兵を使うことを禁止する法案を提出したが採択されなかった。けれども彼女はさらにそれを強く働きかけている。
イラクでの虐待を「サディスティック」なものと呼び、「米国が雇い入れた軍事契約者たちの責任追及をめぐって大きな疑問がある」とするシャコースキーは、2004年5月にブッシュ大統領に送った手紙の中で、契約私企業を使うことにより「米国の人々は金銭に換算して計算しきれない額の損害を受けており、米国人の命も失われ、国際社会での評判も損なわれる」と述べている。
シャコースキーの主任秘書ナディーム・エルシャミはニュースタンダード紙に対し、シャコースキー議員は徹底的な調査を呼びかけており、1月に第109回議会が始まったときには問題をさらに詳しく追求する計画であると述べている。
ヘンリーとシャコースキーは概ね無視されてきた。傭兵企業に対する非難にもかかわらず、米国政府はそれ以降も、CACI社とタイタン社に、納税者の金を使って数億ドル相当の追加契約を与えているのである。
8月の調査段階での記事は、やはりニュースタンダード紙に掲載されています。その日本語版「イラクの刑務所では拷問と強姦が蔓延」もご覧下さい。
米軍や米国傭兵がイラクで行なっている拷問は、単に肉体的なものにとどまらず、精神的・文化的な拷問も同時に含む、心臓が固まり付くような、醜くグロテスクなものです。女性たちが強姦されてもそれを語れないという事情を知りつつ行う拷問。この、言いようもない卑劣さ。
国家安全保障(ナショナル・セキュリティー)という欺瞞のもとで利益保証の暴力行使と汚い行為に狂奔し、さらに責任逃れそして結託企業を設けさせる手段としてそれを「私営化」「外注」するという人間不在の戦争経済体制----今日本が躍起になって後追いし採用しようとしている体制----の帰結がここに現れています。
イラク侵略を支持した小泉首相の言葉:
日本としては、今まで国際協調の下に平和的解決を目指し、独自の外交努力を続けてまいりました。私は先程のブッシュ大統領の演説を聞きまして、大変苦渋に満ちた決断だったのではないかと。今までブッシュ大統領も国際協調を得ることができるように様々な努力を行ってきたと思います。そういう中でのやむを得ない決断だったと思い、私(総理)は、米国の方針を支持します。
2000人もの人々を殺し、人口30万人の伝統ある都市を廃墟にした11月のファルージャ攻撃という戦争犯罪を、「成功させなければならない」とのたまった小泉氏は、ここに述べたような拷問や強姦・虐待をもまた、支持してきたわけです。
投稿者:益岡
2005-01-03 14:00:32
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