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2005/01/23

「選挙」について(Khalid Jarrarさん)

選挙について,イラク内部からの率直な声ということで,バグダードのKhalid Jarrarさんのウェブログの記述より。

http://secretsinbaghdad.blogspot.com/
Tuesday, December 28, 2004

選挙だ!
うーむ・・・
僕から何を言うことができるだろう?
確かに選挙は最大の出来事。今年に限った話じゃない。この戦後占領の期間に限った話じゃない。イラクの将来に,おそらく永久に,影響する話だ。
いかにして?
OK!
というわけでざっと見てみましょう!

選挙とは何か?
【シーア派のイラク人にとって】
スンニ派がサダムの犯罪の年月を贖うときが来たのだ。ついにわれわれが力を持つときが来たのだ。

【スンニ派のイラク人にとって】
裏切り者に賞品を与えるときが来たのだ。シーア派に力を与えるときが来たのだ。

弁護側の発言
【スンニ派のイラク人の発言】
サダム・フセインがスンニ派の家族の出身であるのは事実だ。しかしサダムは世俗主義だった。サダムがシーア派を弾圧したことは事実だ。しかしそれはスンニ派の咎ではない!

【シーア派のイラク人の発言】
あなたがたはサダムの部下だったではないか。われわれが多数派であるということのほかの点からも,われわれがこの国を治めて当然なのだ。われわれは選挙の実施を望んでいる。その後,われわれがアメリカ人に退去するようお願いする。彼らの任務は完了される。

【スンニ派イラク人の発言】
シーア派が多数派だというのは事実ではない! まず第一に,それを証明する調査はまったく行なわれていない。第二に,人口の25パーセントほどを占めるクルド人がいる。〔訳注:クルド人は,シーア派かスンニ派かで考えると,スンニ派です。〕だから多数派はスンニ派イスラム教徒なのである! なぜクルド人を参入しないのだ? またさらに,アメリカ人はきれいな選挙を実施させることはないだろう。宗教的な政府はアメリカが許さない。シーア派であってもだ。アメリカがイランのような政府を作るはずがない。この選挙でわれわれに何かの益があるとは,まったくあり得ない! シーア派はわれわれに反対している。アメリカ人もわれわれに反対している。われわれは確実に犠牲となる。そんな選挙に参加し,そんな選挙を正当なものとするなど理由がないではないか? アメリカ人は世俗主義の親米的な指導者を据えるに決まっている。その人物の出自がシーア派であろうがスンニ派であろうが。

【シーア派のイラク人の発言】
選挙は行なわれる。そしてわれわれはどのような対価を払ってもそれを守る。アヤトラ・シスタニは,お祈りや断食よりも選挙は重要であると神は見ておられるとおっしゃっている。

【スンニ派のイラク人の発言】
選挙など,占領がイラクで続く法的な権利を得るためのアメリカの茶番だ。選挙などあってはならない!

というわけで,現在に至るのです。現在,イラクの歴史始まって初めて,僕たちは本当の戦争に,こんなに ----> <--- 近づいているんです。〔訳注:原文で半角スペース1つ分。〕スンニ派とシーア派の間の戦争にね。
本当に近づいているんです。

スンニ派の過激な人々は,選挙に立つ人々すべてを殺害する,そしておそらく投票するすべての人も殺害する,と脅しています。

シーア派の過激な人々は,選挙に反対する人々すべてを殺害する,と脅しています。選挙は宗教上の義務だとシスタニ師がおっしゃったのだから,と。

どちらも武器を持っています。戦争は迫っている,それも間近に。

一緒に考えてください。スンニ派の過激な人々が,そしてスンニ派とシーア派の戦争を始めるためにこの状況を利用したがっている外部の勢力が,いくつの自動車爆弾を投票所で爆発させるか?

その数は絶対,数え切れないくらいになるでしょう。1つの投票所で最初の自動車爆弾が爆発したら,選挙のプロセスはすべて止まってしまう。だって命をかけてほかの投票所で投票しようなんて人はいないでしょう? じっと待っていれば,別の陣営からこんな声がしてくるでしょう。「投票にいくなら自己責任(blame no one but yourself)」ってね。

ファルージャ戦争(あれは実際「戦争」です。今もまだ終わっていない。世界大戦でドイツのベルリンが攻撃されたとき以来の数の戦車や兵士が,ひとつの都市を攻撃するために集結したんです)の間に生じたスンニ派とシーア派の間の亀裂は,イラク全土でシーア派が泣き,スンニ派が喜ぶ,というものでした。

歴史は繰り返す。これは典型的な「分断して統治する」の戦略です。

選挙がきれいで嘘のないものであるという保証など何もなく,すべての陣営に政治的ゲームでの公平な役割を持たせることなく,この選挙は地獄への扉にすぎません。


先日,古書店で,ある国の情報機関についての書籍を格安で見つけました。あまりに安かったのでほとんど何も考えずに買ってみたのですが,東西冷戦が激化していった時代のことが詳しく書かれていて,興味深く読みました。

その国に,反対陣営のスパイが潜入していました。そのスパイは,その国の首脳と個人的に仲がよく,さまざまな機密情報を探り出していました。その疑いを抱いた情報機関のトップは,「首脳の友人」への監視を強化するよう情報部員たちに命令する一方で,そのスパイ本人から「きみのことを党に警告しておく」とはったりをかまされ,「私は党員ではない。それにここは民主主義国だ。誰がどのような政治的な考えを持ち,どの政党に投票しようと,その自由は保証されている」と思ったそうです。泣く子も黙るなんてもんじゃない情報機関のトップが,そう思ったのだそうです。

「どのような政治的な考えを持ち,どの政党に投票しようと,その自由が保証されている」ことが「民主主義」という制度であるならば,イラクに持ち込まれようとしている,選挙というかたちの“民主主義”とは,何なのでしょうか。その選挙に反対する人々は「民主主義の敵」なのでしょうか。

先日もテレビのニュースで,「イラクの人々は投票の仕方もわからない状態だ」というレポートをしていました。それが事実であることは否定できないでしょう。けれども語られていないのは,彼らは“政治”というものを知らないわけではない,ということです。パワーゲームとしての“政治”を。

たとえば,イラクでは,昨日まで「隣国のスパイ」と名指されていた非合法の武装組織が,今日は組織ごと,国家警備隊の兵士となっているのです。大学教授や医師といった知識人が,多くのケースでは正体がつかめない何者かによって,殺害されています。

そういったことがもたらす絶望を,そういったことも含めて一切合財が「再建」と呼ばれていることがもたらす暴力的な絶望を,どうしたらいいのかまったく見当もつかないけれど,そういうことがどういうことなのかを考えてみることは,少なくともできるんじゃないかと思います。

なお,Khalid Jarrarさんのお兄さんのRaed Jarrarさんのウェブログで,12月10日にダール・ジャマイルさんが報告したのと同じ経緯で外に出されたのではないかと思われる,ファルージャ住民の遺体の写真が掲示されています(→原文日本語化したもの)。銃撃を受けた痕跡はなく,あるいはほかの外傷の痕跡(流血)もなく,ただ布団に横たわって毛布をかぶった状態で死亡している男性2人の写真です。特にその顔は,ひょっとしたらライティングのせいかもしれないし,あるいは遺体の腐敗が始まっているせいかもしれませんが,どす黒く変色しているように見えます。


投稿者:いけだ
2005-01-02 20:21:28