反帝国レポート:アル=デュビア訓練マニュアル(2)
『アメリカの国家犯罪全書』著者ウィリアム・ブルムによるイラクをめぐる米国の情勢分析。長いため、二部にわけてアップします。その第2部。
反帝国レポート
アル=デュビア訓練マニュアル(2)
ウィリアム・ブルム
CounterPunch原文
「対テロ戦争」の素敵な最新章
27歳のブラジル人ジェアン・シャルレス・デ・メネゼスをロンドン警察が冷酷に殺害したことは、アブグレイブでフードを被されワイヤーを付けられた人々とともに、「対テロ戦争」のシンボルとなるかも知れない。警察は、メネデスが分厚いジャケットを着て警察から逃げ、地下鉄の改札口を飛び越え、爆弾の調査と「直接関係していた」と嘘をついたことがわかってきたようである。仮にそれらすべてが本当だったとしよう。だからといって、彼の処刑を正当化できるだろうか? 混雑した地下鉄駅でまさに自爆しようとしていた地場億者だったかも知れないから? けれども、それが本当だったとするならば、どうして----警察が彼に近づいていったとき、さらに近づき、彼に襲いかかったとき----どうして彼は爆弾を爆発させなかったのだろうか? 爆弾がなかったことで、全く完全に自分たちが間違っていたことをただちに警察は理解すべきではなかっただろうか?
付随的被害
7月13日、子どもたちにお菓子を配っている一人の米兵を狙った自爆自動車爆弾により40人以上のイラク人の子どもたちが殺されたり負傷したりした。この恐ろしい出来事は、当然、ゲリラに対する多くの批判を引き起こした。全く状況を酌量することなしに。けれども、ここ何年も、イラクで、アフガニスタンで、ユーゴスラヴィアで、頻繁に、米国の政府関係者は、米国による攻撃の標的となることを知っていただろうに民間人のそばにいた「悪党たち」が民間人被害の責任を少なくとも一部負っていると言い続けてきた。7月13日の出来事にも同じ理屈は成り立たないのだろうか? イラクの路上に立つことで、ゲリラの標的となりうることを米軍兵士が知らなかったというのだろうか? なぜ、そんなにたくさんの子どもたちのすぐ近くに立つなどということをしたのだろうか?
神聖なる選挙
7月、爆撃訓練場として米国海軍がヴィエケス島を使い続けるかどうかをめぐり2001年に行われた住民投票を操作するために米国海軍が140万ドルを密かに用いたことが報じられた。反対派は、爆撃演習はヴィエケス島の環境と9100人の住人の健康を害していると主張してきた[6]。
同じ7月、1月に行われた大いに米国ご自慢のイラク選挙にも、米国政府が金をつぎ込んだことが報じられた。強固な米国のお仲間である首相代理イヤド・アラウィが支配する候補に資金援助を与えたのである。
かくして、米国が大きく介入した世界中の選挙のリストに、さらに二つが加えられたことになる。私の控えめな計算では、1950年以来、米国が介入したのは30カ国の35選挙に及ぶ。ここには、米国の大統領選は含めていない[8]。
「カストロ氏よ、一度でいいから、真の選挙を恐れていないところを見せてくれ」----ジョージ・W・ブッシュ、2002年[9]。
チェ・クリントン?
ヒラリー・クリントンが本当に大統領の座を狙っているとすると、エドワード・クラインの新著『ヒラリーの真実』にあるような馬鹿げた知性がさらにたくさん現れることだろう。本を批判する者たちは、それが低俗だとこき下ろす。私にとって、この本は、異なる政治的立場を区別することができない驚くべき無能さにより批判されるべきものである。クラインの世界では、クリントンは、彼女と夫が自らはっきりと明かしたような中道ではなく、「左翼」だという。クラインは彼女を単なるリベラルではなく、「左翼」だと見なす。実際、単なる左翼ではなく「急進的」左翼だと見なす。彼はまさにこの言葉を使ったのである。クラインは、1980年代、夫がアーカンサスの州知事だったとき、ニカラグアでコントラを支持した女性について語っているのである。忘れてしまった人々のために説明しておくと、コントラは、ニカラグア政府の進歩的な社会・経済プログラムを破壊するためにロナルド・レーガンが始めた全面戦争で雇い入れた軍である。コントラはニカラグア各地で学校や診療所を焼き払い、人々に強姦と拷問を加え、港に機雷をしかけ、爆破し、機銃掃射した。魅力的な紳士レーガンが好んで「自由の戦士」と呼んでいたのがこのコントラである。
ロジャー・モリスは、クリントン一家を綿密に調べた本『権力のパートナー』の中で、ヒラリー・クリントンがコントラのための資金集めを支援し、コントラやレーガン=CIAの政策一般に反対する人々やプログラムを邪魔するロビー活動を行なったと書いている。「イラン=コントラの最悪の面が暴露されたさなかの1987年から88年の時点でもまだ、人々は、ヒラリーが依然として、ニカラグアとエルサルバドルで社会改革に献身する教会をはじめとするグループに反対しているのを耳にしている」[10]。
イラクや、米国の帝国主義に対するクリントンの見解は、一般に、これよりも進歩的なのだろうか? 彼女が急進的左翼だとするならば、エドワード・クライン----コントラについては一言も述べていない----はノーム・チョムスキーのことを何と呼ぶのだろう? フィデル・カストロのことは何と呼ぶだろう? ウラジミール・レーニンは? こうしたたぐいのイデオロギー的イカサマがアメリカのメディアに浸透し、有権者を途方に暮れさせるのに少なからぬ役割を担っているのである。
ウィリアム・ブルムは『Killing Hope: U.S. Military and CIA Interventions since World War II』(作品社より2005年末に刊行予定)、『Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower』(『アメリカの国家犯罪全書』作品社、2003年)、『West-Bloc Dissident: A Cold War Political Memoir』の著者。メールはBBlum6(atmark)aol.com。
注
[6] Associated Press, July 22, 2005
[7] Seymour Hersh, New Yorker, July 25, 2005
[8] 選挙操作の最新リストは、10月に刊行予定の『Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower』の増補版第18章に掲載される予定である。
[9] Los Angeles Times, May 21, 2002
[10] Roger Morris, "Partners in Power" (1996), p. 415
ウィリアム・ブルムの著書として:
Killing Hope: US Military and CIA Interventions Since World War 2(日本語訳作品社より近刊予定)
Rogue State: A Guide to the World's Only Superpower(『アメリカの国家犯罪全書』作品社)
West-Bloc Dissident: A Cold War Memoir
Freeing the World to Death: Essays on the American Empire
がある。ホームページは
http://www.killinghope.org
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投稿者:益岡
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