バグダードに落とされる爆弾
バグダードに落とされる爆弾
イラクでペンタゴンが進めている秘密戦争
ニック・タース
2007年2月7日
トムズ・ディスパッチより
ZNet 原文
イラクで----それもしばしば人口が集中している地域やその周辺で----、秘密戦争が続けられている。けれども、私たちはほとんどそれについて知ることがない。米軍は、空襲に用いている弾薬の情報を秘密にしており、規模の詳細について報告を拒否することで、イラクにおける空軍力の重要性を最低限に見せようとしている。けれども、専門家の意見によると、私たちのメディアではほとんど報じられないにもかかわらず、イラクに加えられている空襲こそが、2003年のイラク侵略以来、米軍と連合軍がイラクの民間人にもたらしてきた死のほとんどを占めているという。
空からの攻撃の一部は完全に謎のままであるが、米国空軍関係者は、米軍と連合軍の戦闘機が2006年にイラクの標的に少なくとも11万1000ポンドの爆弾を投下したことを認めている。この数値----合計177発の爆弾からなる----には、誘導ミサイルやロケットは含まれていないし、機関砲の発射数も含まれていない。また、米国中央軍司令部空軍(CENTAF)報道官によると、この数値には、海兵隊その他の連合軍部隊の航空機が発射した砲弾も、陸軍の戦闘ヘリが発射した砲弾も含まれていない。さらに、多くの私営治安契約要員が使っている武装ヘリが自分たちの作戦飛行で用いた砲弾も含まれていない。
空襲、2006年イラク
Tomdispatchが入手した統計によると、CENTAFは2006年、イラクで「上空掩護作戦」を合計1万519回行ったと報じており、それを通して177発の爆弾を投下し、52発の「ヘルファイヤー/マベリック・ミサイル」を発射した。これらの空襲には、おそらく、広く宣伝された作戦も多数含まれているだろう。たとえば、1月にバイジ郊外に加えられ、「12人からなる家族を殺した」と報じられた空襲----このときには女性3人と幼い子ども3人も殺された----から、ファルージャ近くのガルマ地区にあるゲリラの隠れ家に対して12月に加えられた攻撃----このときには5人のゲリラに加えて「女性2人と子ども1人」を殺した----までが含まれているだろう。そのほかに、もっと知られていない事件も含まれる。7月28日---公式報告に基づいて述べよう----米国空軍のプレデター無人航空機がヘルファイヤー・ミサイルにより「反イラク部隊」の車両を破壊し、一方米国空軍F16戦闘ファルコンが「GBU-12を使って反イラク部隊の拠点を破壊し」た事件などである。これらの事件はいずれもラマディ市近郊で起きた。
GBU-12(誘導爆弾装置12)は、500ポンドの多目的弾頭を備えたレーザー誘導爆弾で、Tomdispatchが入手したCENTAFの統計によると、2006年にイラクで最も多く使われた爆弾である。GBU-12が95発「費やされた」のに加え、2006年には、衛星誘導500ポンドGBU38が67発、2000ポンドGBU-31/32が15発、イラクの標的に向けて投下されたと空軍の公式数値は語っている。
これらの数値から、はっきり除外されているのは、色々な弾頭に装備することができ、固定翼航空機やほとんどのヘリコプターから発射することができる2・75インチのヒドラ-70ロケットといったロケットである。発射されたロケットの数は報道陣には公表されていない。CENTAFの報道官によると、「数値をゆがめ、空軍作戦について不正確なイメージを与えない」ようにするためであるという。イラクで発射されたロケットの数は相当多いかも知れない。2005年にパトリック・リーヒー米上院議員(民主党・バーモント州)----彼はジェネラル・ダイナミクス社に対するヒドラをめぐる軍の契約を監視するよう求めた一人である----が行った報道機関向け発表では、「広く使われているヒドラ-70・ロケットは・・・・・・アフガニスタンとイラクで大規模に用いられており、ヘリコプターから発射される兵器の中では世界で最も広く使われるものとなった」と述べている。昨年の早い時期に、米国防衛マガジン誌のサンドラ・I・アーウィンは、米軍が、ヒドラをイラク都市部で使える低価格兵器として頼りにしている、と指摘している。「米軍はすでに2・75インチ・ヒドラ・ロケットを大量に購入して蓄えており、先端精密殺人兵器システム、APKWSと呼ばれるプログラムのもとで、7万3000発にレーザー装置を装備しようとしている。海軍は海兵隊のヘリ向けに8000発を購入する予定である」と彼女は書いている。
機関砲がどれだけ発射されたかも----たとえばAC-130の中にはガトリング砲を備え、一分間に1800発を発射することのできるモデルがある----秘密とされている。ある士官によると、秘密にしている公式の理由は「特殊部隊がしばしばAC-130といった航空機を用い」ており、「特殊部隊の任務と作戦は機密事項なので、数値も発表されない」というものである。
CENTAFの航空機が発射した機関砲の数値をめぐって別の記者が繰り返し調査したのに対し、この士官は、電子メールで「我々は機関砲の数を公開しない」と強調して答えた。彼の上官にあたるCENTAFの広報担当副長官ジョン・ケネディ中佐は、それをフォローして、次のように述べた。「[私の部下]がこれまであなたに費やしてきた多大な努力にあなたが感謝していることは喜びです。それはおそらく、機関砲の発射数を執拗に追求するよりも、はるかに重要なことです。信じて下さい。
けれども、レス・ロバーツ----ルワンダで内戦が起きていた時期にWHOのルワンダ担当疫学者として働き、また、イラクにおける人的被害の専門家でもある----によると、米軍機が発射した機関砲とロケットの数は取るに足らない問題ではない。2004年にイラクにいたロバーツ(彼は、バグダードのサドル・シティで航空機から発射された機関砲により「ブロック全体がずたずたにされる」のを目撃したと述べている)によると、「ロケットと機関砲が、連合軍がもたらした民間人犠牲者の大多数を占めている」。彼はさらに、「軍がそれ[その数値]を公開しないのはひどいことだし、さらにひどいのは、そうした情報を求めた議員にもそれを提供していないことだ」と言う。
CENTAF以外の軍士官たちも、少なくとも私に対しては、砲弾の数について口を硬く閉ざしている。米国中央軍司令部の広報担当士官は私に、司令部はそうした情報を把握してこなかったと述べた。バグダードで連合軍の報道官に私が2006年にイラクで陸軍と海兵隊のヘリから発射されたロケットと機関砲の数を訪ねたとき、答えは「作戦上の治安の問題に関わっているので、あなたの質問には答えられない」というものだった。
そこで私は、次の点を指摘した。すなわち、わずか1カ月前に、米国国防マガジン誌上で、海兵隊の航空計画政策担当主任ロバート・A・フィッツジェラルド大佐の言葉が引用されており、そこでは、2006年に「海兵隊の回転翼航空機は6万時間を超える戦闘飛行を行い、固定翼機は3万1000時間の飛行を遂行した。これらの航空機は合計で80トンの爆弾を投下し、80発のミサイルと3532発のロケット、そしてより小さな兵器を200万発以上発射した」と述べられている、と。
この情報は作戦上の治安を危機にさらさないのかと訪ねたのに対して、報道官は、次のように答えた。「私は海兵隊大佐のポリシーや情報公開権限についてはコメントできない」。
海兵隊の数値には、おそらく、アフガニスタンで使われた砲弾の数も含まれているかも知れないが----そしてアフガニスタンでは米軍の空軍力が大きな役割を果たしている----、それでも、CENTAFが提供している最低数値はイラクにおける空からの攻撃について正確な状況を示していないのではないかと考えさせるものである。CENTAFによると、これらの合計数は、2006年にイラクで費やされた爆弾とミサイルについてTomdispatchに「提供されたデータとは別のもの」であるという。
投稿者:益岡
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