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2005/10/18

イラク憲法国民投票について

8月終わりにできたイラクの憲法草案についてのレファレンダム(国民投票)が15日に行なわれました。結果は現時点(17日深夜)ではまだ確定していませんが,承認されるであろうとのこと。このレファレンダムについていくつかの事実をまとめておきます。


■このレファレンダム(国民投票)の有権者:
イラク国内に居住している18歳以上のイラク国籍保有者(=イラク国外に出ているイラク人には投票の権利がない)。

イラク,特にバグダードやアンバール州では米軍(およびイラク軍)による「武装勢力掃討作戦」や武装勢力の攻撃(「テロ」と言われるもの)が続き,また,誘拐・拉致や脅迫などが頻発しており,普通に暮らすことすら脅かされているために国外に出る人々は少なくありません。具体的な統計の数字はちょっとわからないのですが(どなたかご存知の方がいらしたらコメント欄でご教示ください),例えば「ヨルダンには非常に多くのイラク人が来ている」という報告は,先日の水支援プロジェクトの報告会でもありましたし,それ以前に,Faizaさんのウェブログでヨルダンの病院にバグダードなどで負傷した人たちが多く入院しているといった話もありましたし,英米の新聞記事などでも何度か,アンマンの非常に貧しい住宅街で何とか命をつないでいるイラクの人たち(難民申請中)についてのレポートがありました。

なお,今年1月末の「議会選挙」(移行国民議会の選挙)のときは,国外のイラク人にも選挙権があり,各国で投票所が設けられていました。

■「憲法」の成立の条件:
投票総数の過半数の賛成があること。ただし,イラクの全18の県のうち,3県以上で反対票が投票総数の3分の2を上回ると,憲法草案は否決となる。(読売新聞の記事

この成立条件は,基本法(2004年3月)に定められているものです。

なお,この条件については,10月はじめにいきなり,「否決は反対票が投票総数の3分の2を上回ったとき」という点について,「投票総数」ではなく「登録した有権者数」に変更されました。しかしそれはすぐに,元通りの「投票総数の3分の2」になりました。(JVCの原文次郎さんのウェブログ

この朝令暮改劇も謎めいています。BBC記事によると,「登録した有権者数」という案がイラクの議会で採択されたあと(同時に,「憲法承認」の方の条件としては,「登録有権者数」ではなく「投票総数」の2分の1という条件が定められたというんだからむちゃくちゃです),国連とワシントンが「それは国際的なルールに合うものではない。元に戻すべき」と述べ,それからイラクで再度議会が開かれて,元の「投票総数」に戻すことになったとのこと。(このときの議会には,総議員275人のうち,半分くらいしか出席していなかったそうです。)

■直前の修正:
投票を前に,国連が草案を印刷したパンフレット500万部を配ったそうですが,その後の12日(15日の投票日の直前)に,議会で草案が部分修正されました。産経新聞の記事によると,「承認された修正案は、▽十二月の総選挙後に憲法改正を協議する委員会を国民議会内に設置。改憲案は議会審議を経て再び国民投票に付す▽イラクの統一の保障▽旧バース党員に対する公職追放措置を緩和▽北部クルド人自治区でアラビア語とクルド語を公用語とする-など」。BBC記事によると,この修正により,少なくとも1つのスンニ派の党からの支持が得られた。

これもわかりやすい話ではないのですが,今のイラクの政権(ジャファリ首相とタラバニ大統領)は,いってみれば間つなぎ的な存在で,「本格的な政権」が成立するのは,今年の12月に選挙が行なわれることになっている議会を待たなければなりません。

で,レファレンダム直前の部分修正というのは,12月の選挙後に成立する政権で憲法改正を協議することにしようという話になったのを受けての修正だとのこと。

また,14日の英タイムズの記事によると,こうして草案を支持することになったスンニ派の政党,イラク・イスラム党(Iraqi Islamic Party)に対しては,その後「スンニ派の反乱勢力が次々と爆弾攻撃をしかけた」。タイムズ記事には,サマラ,ティクリートなどでの攻撃について簡単な記述があった後で,「バグダードのアザミヤ地区にあるアブ=ハニファ・モスク(イラク・イスラム党の拠点)では数百人のデモがあり,また早朝にはシャイフの住居にグレナードが投げ込まれた(けが人などはなし)」ということが書かれ,その後はバグダード中心部やファルージャの同党事務所への襲撃・攻撃があったことが述べられています。

アブ=ハニファ・モスクは,昨年11月,金曜の礼拝のときに米軍とイラク国家警備隊が突入したモスクです(このとき現場には,イサム・ラシードさんもいて,様子を撮影したが,テープは米軍に没収されたとのこと)。2004年のファルージャ攻撃のときに,両宗派の一般市民からの支援活動の拠点となっていたモスクでもあります。いろいろと考えてしまいます。

■投票率はどうだったのか:
15日のAP記事(ガーディアン掲載:別記事に概要)によると,イラク全土の投票率は61パーセント。全部で18の県のうち,スンニ派アラブ人が多数を占める県を含む7つの県では,投票率は66パーセントを超えた,とのこと。スンニ派アラブ人の投票数が高くなったのは「投票に行って,反対票を投じよう」というキャンペーンに応じたもので,シーア派が圧倒的多数の県では投票率が33パーセントに満たないところもあったそうです。

米軍とイラク軍によって特に投票所周辺では厳戒態勢がしかれてきたが,投票日の攻撃は数としては少なく,バグダードの1200箇所の投票所で銃や爆弾による攻撃を受けたのは5箇所(投票に来た人7人が負傷)。当日イラク兵4人が死亡しているが,投票所から離れた場所での路肩爆弾によるものとのこと。

■レファレンダムの結果を受けてどうなるのか:
BBC記事によると,草案が承認された場合には,12月15日までに議会選挙が行なわれ,12月31日までに「本格的な政権」(BBCではa new governmentと書かれている)が発足。承認されなかった場合には,今の国民議会は解散となり,新たな暫定議会の選挙が行なわれ,新たに憲法草案を作って来年の10月までにレファレンダム,ということになっています。

■レファレンダムはイラク全土で行なわれたのか:
14日のロイター記事によると,投票所が設けられていない都市がいくつもあります。
Hours before a crucial referendum on a new constitution, voters in western Iraq, where many are expected to say "No," were asking themselves a troubling question: where are the polling stations?

"There are no voting centers in cities like Haditha, Hit, Rawa, Qaim, Ana, Baghdadi and the villages around them," Mahmoud Salman al-Ani, a human rights activist in Ramadi, said on Friday, listing locations across western Anbar province.

"There aren't actually any voting centers or even voting sheets in these cities ... Nobody knows how and where to vote if they decide to," he said of the predominantly Sunni Arab region.

憲法についてのレファレンダムを数時間後に控えているのに,イラク西部の有権者たちは「投票所なんてどこに?」という厄介な問いを抱えている。西部では多くが反対票を投じると予想されている。

ラマディの人権活動者であるマフムード・サルマン・アル=アニが金曜日に語ったところによると,「ハディーサ,ヒット,ラワ,カーイム,アナ,バグダディといった各市やその周辺の村落には,投票所はない」。アンバール州西部の各都市だ。

「これらの都市には投票所もなければ,投票用紙すらない。……投票しようと思ったところで,どうやってどこで投票すればいいのか誰も知らない。」


■結果が出るのはいつか:
レファレンダムの最終的な結果が出るのは,早くても今週末くらいになるのではないかと思います(「開票には5日から10日かかる」という記述がどこかにありました)。

■その他:
アラビア語の各メディアの論調が,BBC Monitoringによってまとめられています。

……より具体的なことについては別記事に……。

投稿者:いけだ