宗派セクト的暴力が、異宗派間の夫婦を離婚に追い込んでいる
宗派セクト的暴力が、異宗派間の夫婦を離婚に追い込んでいる
2006年11月9日
IRIN
Electronic Iraq 原文
宗派間での暴力がエスカレートしているため、イラクでは、イスラム教スンニ派とシーア派の結婚が脅かされている(IRIN)。
バグダード発。38歳のヒバ・サミが、18年前、自らの意志で夫と結婚したとき、自らの意志に反して夫と別れさせられることになるとは考えだにしなかった。
「夫を愛しています。けれども、家族が夫と無理矢理別れさせたのです。私たちはシーア派で、夫がスンニ派だから。私の家族は、彼ら[夫の家族]のことをゲリラだというのです。夫と暮らすのは、神への冒涜だと」とサミは言う。
「私たちには子どもが4人います。毎日、子どもたちは父親がいないため寂しがって泣くのです。子どもたちが理由を尋ねると、家族は、お前達の父親は裏切り者だから、近づかないようにしなくてはならないと言います」と彼女は続ける。
この問題を扱っている地元NGOイラク平和協会(PIA)によると、ゲリラや民兵、あるいは標的にされることを恐れる家族から、無理矢理離婚を余儀なくされる宗派間カップルが何百もいるという。
「幸せに暮らしていた家族が、今や、宗派間暴力の犠牲者となっています」とPIAの心理学者で報道担当でもあるアフメド・ファリッドは言う。「子どもたちは、両親が離婚するのを無理矢理目にさせられるのです。しかも、個人的な問題があるからではなく、イラクの現状で宗派間の結婚は受け入れられないと誰かが考えるためです」。
強制的な離婚は、子どもたちに重大な心理的問題を引き起こす可能性があり、さらに、洗脳されて宗派間の暴力を受け入れるようにしてしまう可能性がある、とファリッドは語る。
「両親が離婚したために自殺しようとした子どももいます。彼は、両親の離婚をくい止めようとしたのです」とファリッドはIRINに話した。
PIAは宗派間カップルの離婚を親戚たちを説得することでくい止めようとしているため、ゲリラや民兵から多くの脅迫を受けているという。
2003年以前、宗派の違いはイラクではまったく問題にならなかった。スンニ派とシーア派、スンニ派クルド人とスンニ派・シーア派アラブ人の結婚は、サダム・フセイン元大統領時代にはよくあることだった。
2003年に米軍が中心となってイラクを侵略したのち、フセイン政権下で強い差別を受けてきた多数派のシーア派住民が、支配的な政治勢力として自己主張を始め、宗派間の分断が出現し始めた。
今年2月、イラク北部の都市サマラでスンニ派がシーア派の神聖な廟を爆破したのち、宗派間の暴力は大きくエスカレートした。
離婚を担当するイラクの法廷は、この4カ月間で、離婚の数は急増していると述べている。そのほとんどは宗派を超えて結婚したカップルだが、法廷は、その離婚が周囲から強制されたものかどうかについては知り得ないという。
この問題について、宗教指導者達の間で意見が分かれている。安全のために、宗派間カップルに離婚を促す指導者たちもいる。「[シーア派]女性は、ゲリラ活動に関わっているかも知れないスンニ派男性と暮らしていると身の危険にさらされる。彼女たちの身を守るためには離婚するのが最もよい」とサドル・シティの宗教指導者シャイフ・アリ・ムバラクは言う。
アーダミーヤ地区の宗教指導者シャイフ・ムハマド・ラビアは、仲良く暮らしているのであれば、宗派間カップルは離婚すべきではないと言う。
政府は、結婚している650万組のうち、200万組は、アラブ人スンニ派とアラブ人シーア派のカップルであると推定している。
2006年4月、IRINは、宗派間カップルが、イラク平和同盟(UPI)という名の協会を結成したことを報じた。けれども、UPIの創設メンバーを含む3組の宗派間カップルが殺されたのち、会員達は協会の解散を余儀なくされた。
「私たちは、イラクでこの問題を扱う唯一の協会でした。[今となっては]選択肢はたった二つしか残されていません。イラクに止まって離婚するか、隣国に逃げ出すかです」。UPIの会員だったアブ・ラサーはこう語った。
このニュースは国連人道ニュース・情報サービスIRINから届けられるが、必ずしも国連やその機関の見解を反映するものではない。IRINの文書はすべて無料で再ポスト・再プリントできる。使用条件については、IRINのコピーライト・ページを参照のこと。IRINは、国連人道問題調整局のプロジェクトである。
旧ユーゴスラビアには、様々な「民族」に属する人々が結婚してできた子どもを「ユーゴ人」としていました。セルビア、クロアチア、スロベニア、アルバニア系などなど、「民族」を遡及的に創り出して「民族国家」を樹立したあと、ユーゴ人たちは、どうなったのでしょうか。
投稿者:益岡
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