マイケル・ジャクソンの裁判のおかげで公共の電波に乗らなかった声。
シンディさんがやっているGold Star Families for PeaceのサイトのEssaysのところでも読めますが,Faizaさんのウェブログの2月2日のエントリにも紹介されています。
私は昨晩の「ラリー・キング・ショー」に出る予定でした。この選挙の前に息子がイラクで戦死している母親の視点から,イラクの選挙についての意見をお願いしますと言われていたのです。番組で私が受けることになっていた質問のひとつが,私が息子の死を「それだけの意味があった(worth it)」と考えているかというものでした。
ところが昨晩は結局「ラリー・キング・ショー」には出ませんでした。非常に重大なことが起きたという理由でキャンセルされたのです――マイケル・ジャクソンの公判があったので。
もし「ラリー・キング・ショー」に出演して,選挙と息子の犠牲についての意見を述べる機会があったならば,私は以下に書くようなことを,ラリー・キングと視聴者の方々に申し下げるつもりでした。
私の息子,ケイシー・オースティン・シーハン技術兵(2004年4月4日,サドルシティにて戦死)は,アメリカを守り,祖国に何かを返すために軍に入隊しました。息子は,私たちの国にとって差し迫った脅威などではない(あるいは何らの脅威にもならない)国を先制攻撃し占領するために兵士たちを送り出す無謀な総司令官によって利用され誤用されるために,軍隊に入ったのではありません。ケイシーは,私たちの生活を恐怖で満たすことを喜びとするネオコンの空想に基づいた戦争で死ぬために,送られたのです。
ケイシーは「任務(Mission)」には賛成してはいませんでしたが,勇敢で立派な人間でしたので,仲間たちをサポートするためにこの戦争という過ちに行かなければならないのだということをわかっていたのです。また,ケイシーは何度も,貴重な兵士たちと資源が本当の対テロ戦争からイラク戦争のために割かれているんだろうと,疑問を声に出してもいました。
イラクでは,装甲を外したハムヴィーの前で,チョコレートや薔薇の花びらを振りまかれ,解放者として歓迎されるだろう,とケイシーは言われていました。シーア派の反乱勢力の「歓迎ワゴン」が,息子の若く美しい命を奪った銃弾やRPGで息子をバグダードに歓迎したとき,息子はイラクに着いてわずか2週間でした。チョコレートや薔薇の花びらよりも,ヘルメットやヴェトナム戦争時代のフラックジャケットのほうが,息子を守るのに役立っただろうと思います。
ケイシーが殺されたのは,ジョージ・ブッシュが2003年5月1日に「任務完了」を宣言した後です……同年12月にサダムが身柄を捕らえられた後です。ケイシーが殺されたのは,2004年6月に主権が委譲される前のことで,今回の選挙の前のことです。
今回の選挙の後,昨日,海兵隊員が4人,無残に殺されています。私が数えたところ,およそ60人のイラク人と連合軍兵士が,選挙の日に殺されています……これが「大成功(Catastrophic Success)」の定義でしょうか。これはイラクではよい日だったのでしょうか。
もう2年近く前にジョージ・ブッシュが高らかに「大規模戦闘」の終結を宣言してから,何百人という(アメリカの)若者と数千単位のイラク人が,その必要もないのに意味なく殺害されて(murdered)います。
上に書いた出来事はすべて,この政権によって「対テロ戦争」の「転換点」であると……あるいは「デモクラシーの行進」におけるすばらしい出来事であると告げられてきたものです。本当に? つい最近の動きから判断して,選挙が流血と破壊を終わらせることになるとは,私には思えません。
ラリー・キングには,イラクでのいかさまの選挙のためにお子さんのお一人を犠牲にしたいですかと尋ねるつもりでした。キングやジョージ・ブッシュが,一連の嘘と誤りと誤算のために,自身の子どもたちを,殺されたり一生不自由な身体にされたりするために送り出すでしょうか。イラク侵略と占領のすべての嘘が白日の下にさらされています……どうして私たちの息子たち・娘たちは,まだイラクにいるのでしょうか。この嘘のかたまりのためにもう1滴でも血が流されることがあってはなりません。
この戦争は,1世紀前であればいんちきなセールスマン(snake oil salesmen)の印象に残ったであろうような,狂人めいた熱意とうさんくさい誠意をもった下劣な指導部によって,アメリカ人に売り込まれました。平均的アメリカ人は,私たちの「死亡」の手紙に署名するだけの気配りも同情心も持ち合わせていない政府の傲慢と無知によって辛酸をなめさせられている人々から,物事を聞かされる必要があります。【訳注:兵士の戦死通知書には通常国防長官が肉筆で署名をすることになっているが,現在それが為されていないという。】
「公平で偏りのない」ようにするために(あら,このネットワークじゃだめよね【訳注:「ラリー・キング・ショー」はCNN】),私が出演していたら,今でもまだ「任務」と大統領に賛成している(戦死者の)親御さんと議論させられたかもしれません。私にはその親御さんのお子さんの死を悼む気持ちがあるし,その親御さんのご意見は尊重しますが,キング氏やその親御さんが「任務」について私に講釈することは許さなかったでしょう。平気な顔をしてそのようなことができる人など,誰もいないと思います。
大統領は,この玉虫色のころころ変わる「任務」を完成させることによって私たちの犠牲をたたえるために,兵士たちをイラクに駐留させ続けなければならないのだとも言いました。それに対する私のお返事は,「ケイシーとシーハン家にはもう遅すぎるのです。このカメレオンのような『任務』の名において,さらにまだ罪のない命が奪われることを,どうして望みましょうか」です。
いずれにせよ,私は番組への出演をドタキャンされたのです。(妊娠した妻を殺害した)スコット・ピーターソンはその犯罪について判決を受け,(スコットの妻の)レイシーと(レイシーのおなかの中にいた)コナーの家族は,彼らに与えられて当然の正義を得ました。【訳注:ピーターソンの事件は,おなかの中の子どもの「人格」の問題もあり,イラク戦争の間中,全米のマスコミで大きく報道されたとのこと。】
それが一件落着となって,私たちには新たな「世紀的な裁判」ができて,私たちがイラクでモラルに反する戦争を行なっているという,不愉快で面倒くさい事実から関心をそらされるのです。マイケル・ジャクソンの性的虐待の裁判の派手な写真や映像で,テレビの画面も家も埋め尽くすこともできるでしょう。マイケル・ジャクソンの犠牲者たちを思っての怒りと,彼らに正義がもたらされるようにと望むことで,自分の生活をいっぱいにすることもできるでしょう。ジョージ・ブッシュと不誠実な閣僚と彼らの誤った政策が,世論という舞台に引き出されることすらないという事実を問うこともせずに。
私たちの国の指導者たちと彼らの嘘のせいで,1438人の勇敢なアメリカ人が……そして数万の罪のないイラク人が……死んだのだという事実に,そして私たちの国の信用が世界中で失墜してしまったのだという事実に向き合う必要は,私たちにはないのです。ということは,テレビのスイッチを切って,それについて何か行動をしなければならないということを意味するのかもしれません。
ああそうそう,最初のラリーへの質問に答えていませんでしたね。答えは「いいえ,それだけの意味はありませんでした」です。
Cindy Sheehan
Mother of Hero: Spc Casey Austin Sheehan KIA 04/04/04
Casey's Peace Page
Co-founder of Gold Star Families for Peace: www.GSFP.org
文中のスコット・ピーターソン事件については,CBSのまとめなどを。興味がおありの方は,検索するといやというほどたくさん出てきます。裁判が始まる前に(!)テレビドラマも製作されています。
関係ないんですが,「スコット・ピーターソン」っていう名前のクリスチャン・サイエンス・モニター紙の記者さんがいます。11月のファルージャに入ってたようです。
投稿者:いけだ
2005-02-03 13:46:18
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