あれから3年
イカサマな理由でごり押しされた不法な侵略と占領、戦争犯罪と拷問と体系的な略奪。米軍主導のイラク侵略から3年がたとうとしています。
3年前、3000万人の人がブッシュとブレアの戦争に反対し路上に出た
----人類の大多数は正しかった----
マイク・マルクーゼ
2006年2月9日
CounterPunch原文
3年前、世界はこれまでにない経験をした。同じ日に、世界東西南北40カ国の900都市で、3000万の人々が路上に姿を現し、差し迫ったイラク攻撃に反対する抗議行動を行ったのである。モスクワで、カラチで、ダッカで、マニラで、ヨハネスブルグで、カイロで、キンシャサで、テルアビブで、そして他の多くの場所でデモが行われた。参加者が最も多かったのは、攻撃に加わった国でだった。英国とスペイン、イタリア、オーストラリアでの行進は、おそらく、それぞれの国の歴史上、もっとも大きなものだっただろう。
2003年2月15日、幸運なことに私はニューヨークにいた。2001年9月11日の攻撃による苦痛が「対テロ戦争」をエスカレートさせる口実として使われたまさにその都市で、50万人の市民が、凍てつく天候と敵意をむき出しにした警察をものともせず、反対の声、怒りの声、希望の声をあげた。抗議に参加した人々は、人種も年齢も性別も職業も、ニューヨークという街そのものと同じくらい多様だった。演説から、そして群衆のコメントから、ニューヨーク市民は、この抗議行動が世界的に行われていることに勇気づけられていたようだった。自分たちも人類の大多数の一部に属していると気づいていたのである。
以前にも国際的な抗議行動はあったが、数都市で数千人が参加すれば成功と考えられていた。2月15日は、それらとはいささか違っていた。人数も、地理的な広がりも、人々の意識に訴えるインパクトも。
それにもかかわらず、3年後の今、イラクに対する戦争は続き、抗議に参加した人たちが恐れていたことは繰り返し現実のものとなってきた。米英の侵略は大量破壊兵器を一つも発見できなかったかわりに、数百万人ものイラク人をかつて経験したことがない悲惨な状態に追いやった。英国防衛省の世論調査でイラク人の82%が占領のすみやかな終結を求めている理由はここにある。イラクの人々は3年にわたる無法、電気と水供給の断絶、人権侵害(書類なしに数万人が拘留され多くが拷問を受けた)、経済の崩壊、病気の増加、致死的な暴力に苦しんでいる。
ブッシュ自身、紛争でこれまでに3万人のイラク人が殺されたと考えていることを認めた。2004年にジョンズホプキンス大学の研究員が集めたデータにもとづき米国のカウンターパンチ誌が最近公表した統計的分析によると、「侵略と占領の結果として引き起こされた死者数に関する最良の推定値は18万3000人である」。ペンタゴンが提供した事実だけを見ても、死者と負傷者の数が大規模なものであることが示唆される。議会への報告は、2005年下半期に、一日平均60人のイラク人が殺されたと述べており、これは、前年度比で50%の増加である。同じ半年のあいだに、米軍は400回以上の空襲を行い、爆撃機や戦闘機、無人機を出動させた。2003年3月以来、海兵隊第三航空団は、イラクに50万トン以上の爆弾を投下した。比較のためにあげると、ベトナム戦争全体で米軍の全部隊が投下した爆弾は200万トンである。
紛争にともない数え切れないほどの残虐行為が行われた。イラクの(人類の)古代遺産が略奪され破壊された。誘拐や暗殺が頻発し、イラクの主導的な教育者や知識人250人以上の命が奪われた。占領者やレジスタンスにより100人のジャーナリストが殺された。腐敗した政府関係者と多国籍企業によりイラク財政が略奪された。女性の権利は浸食された。
占領者たちは、次から次へと「転機」を喧伝した。けれども、住民投票と選挙、憲法と議会、反対勢力の拠点と侵略者たちが決めつけたファルージャやタルアファル、サマラ、アルカーイム、ハディタ、ラマディ、フサイバーなどへのハイテク攻撃にもかかわらず、戦闘は続き、イラクの人々の自決ははるか遠くにあるままである。中央政府の威信はほとんど無に近く、その権威は米軍主導の外国軍兵士18万人に依存している。一方で、占領者の分断統治戦略(イラクの人々の大多数が、サダム・フセインがいなくなってどれだけほっとしようと、侵略者の居座りを歓迎しないことがはっきりして以降に残された唯一の武器)により、分離主義が姿を現し、イラク社会は危機的なまでに内戦に近づいている。
2003年2月15日のデモの際の演説に共通したテーマの一つは、イラク攻撃は、攻撃者が戦うと称しているジハード型テロリズムを増加させる可能性が高いというものだった。まさにそのことは証明された----イラクで、ロンドンで、他の地域で。ギリシャ神話の中で、カサンドラの悲劇は、彼女が未来を見ていたにもかかわらず誰もその予言を信じなかったことにある。抗議に参加した人々の悲劇は、ほとんどすべての人々が予測を信じたにもかかわらず、支配者たちがそれを無視して破滅への道をごり押ししたことにある。
当初侵略を支持した者たちで今もその立場を保っている輩は、これらすべてを考えても、サダム・フセインの支配よりはましだと主張する。多くのイラク人は同意しないだろうが、いずれにせよ、そもそもいったい、この尺度は何というものだろう? 西側がイラクの人々に提供しようと準備していた代替策は、たったのこれだけだというのだろうか? 命を失った人々、負傷した人々、貧困に突き落とされた人々、拷問を受けた人々にとって、こんな計算が意味を持とうはずもない。
米国と英国では、これまで以上に多くの人々が、3年前に抗議行動に参加した人々の言葉に同意しているにもかかわらず、抗議行動を行う人の数は減っている。皮肉なことに、路上に出る人々の数が減った理由の一つは、2月15日の大きな成功と、それに伴うその後の失敗感にある。記録的なデモさえ、米英による戦争を止めることはできなかった。「我々は大規模な抗議を行った。かつて見たことがないほど大規模なものだった。それでも、結果は同じだった」とロンドンの人々は言う。「奴らは耳を貸さない。決して耳をかさない。だとすると、また抗議することに何の意味があるだろう?」
実際には、2003年2月15日の出来事が持つ長期的な意義を判断するにはまだ早すぎる。1920年代と30年代に非協力不服従キャンペーンに参加したインドの人々は、独立を目にするまで、長いこと待たなくてはならなかった。ベトナム戦争が終わるまでに、8年にわたる抗議行動があり200万人の死者が出た。
イラク侵略を阻止しようと期待してデモに参加した多くの人々は、もしかすると相手を過小評価していたのかも知れない。相手にしているのは、米国の無法大統領一人ではなく、極端な不公平を自分たちの利益に使うために世界秩序を決めることに慣れた唯一の超大国なのである。それを封じ込めるためには、どんなに巨大であろうとたった1日のデモでは十分でない。2月15日は、エリートたちが進めるグローバリゼーションの影に、人々のインターナショナリズムが確固として存在することを大規模に示した。2003年2月15日が将来どのように記憶されるかは、この両者の抗争がどう展開するかにかかっている。
マイク・マルクーゼは Wicked Messenger: Dylan in the 1960s、 Redemption Song: Muhammed Ali and the Sixties の著者。www.mikemarqusee.com からコンタクトできる。
2003年3月、イラク戦争反対の流れに少しでも貢献できればと緊急出版した拙訳『アメリカの国家犯罪全書』(ウィリアム・ブルム著)のあとがきに、サム・スミスというジャーナリストの次のような言葉に言及するブルムの演説を引用しました。
歴史のなかで、われわれは無力であると考える人々は、1830年代の奴隷廃止論者、1870年代のフェミニスト、1890年代の労働組合活動家、1910年代のゲイ・レズビアン作家のことを思い起こすとよい。我々同様、こうした人々も、自分が生まれる時を選ぶことはできなかった。けれども、なすべきことを選び取ったのだ。
ブルムは、この言葉を引用したあと、次のように続けます。
歴史が私たち一人一人の背中を少しだけ押すように、私たちが少しだけ歴史の背中を押してやれば、未来にどんな驚くべきことが起きるか、それについて、今はわからないのです。
地球温暖化やピークオイル、戦争と格差社会、むき出しの反知性的・反理性的な発言が跋扈する中、だからこそ、少しだけ歴史の背中を押すことができれば、と思います。
米国の言語学者で反戦活動家のノーム・チョムスキーは、次のように語っています。
もしあなたが、希望はないと考えてしまうならば、確実に希望はなくなる。もしあなたが、人間には自由を求める本来的な力があり、ものごとを変える機会があると考えるならば、よりよい世界を作り出すために、あなた自身が貢献する機会があるかもしれない。その選択は、自らがすることです。
あれから3年。2006年3月18日には、再び世界中で大規模な抗議行動が予定されています。日本の東京では、次のような行動があります。
WORLD PEACE NOW 3.18
日時:2006年3月18日(土)13:00開場 13:30開会
パレード出発15:30(予定) パレードコース:銀座コース
場所:日比谷野外音楽堂(地下鉄霞ヶ関駅・日比谷駅下車徒歩3分、内幸町駅下車徒歩2分)
発言:石坂 啓(漫画家)、中島通子(弁護士)、ほか ※手話通訳あります。
ピースコンサート:ソウル・フラワー・モノノケ・サミット
《賛同者・賛同団体募集》
「3・18」の賛同者・賛同団体を募集します。賛同される場合は、賛同費(個人・団体とも1口1,000円)を下記口座にお振り込みください。
郵便振替口座 00110-6-610773
口座名「1.18集会」※通信欄に「3.18賛同」とお書きください。
FAX、メールであらかじめ賛同の意思表示をされる場合は、下記フォームに必要事項を記入の上、お送りください。
名前(団体名):
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住所:
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電話: FAX:
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メール:
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【WORLD PEACE NOW】
http://www.worldpeacenow.jp/
電話連絡先:
許すな!憲法改悪・市民連絡会03(3221)4668
アジア太平洋平和フォーラム(APPF)03(3252)7651
日本消費者連盟03(5155)4765
ピースボート03(3363)8047
平和をつくり出す宗教者ネット03(3461)9363
住所連絡先:東京都千代田区三崎町2-21-6-302市民連絡会気付
FAX:03(3221)2558
メール:worldpeace@give-peace-a-chance.jp
3月18日のピースパレードは、ワールドピースナウさんの主催です。本ブログページ運営者たちの主催ではありませんので、どうかお間違えのないようにお願いいたします。
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投稿者:益岡
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