.comment-link {margin-left:.6em;}

teanotwar - mirror/archive (Japanese fonts required)

Official mirror site of our blog, for those who can't access it, http://teanotwar.blogtribe.org, due to the technical problems, firewall setups, etc. http://teanotwar.blogtribe.org/のミラーリングを目的としています。記事部分に何も表示されていない場合は下までスクロールしてください。個別記事へのリンクは,記事の投稿時間のところをクリックすれば表示されます。

2005/01/23

考えられないようなことがノーマルなことになっている(ジョン・ピルジャー)

かなり前のものですが,2004年11月のジョン・ピルジャーの記事を。ファルージャ,「死者数10万」のランセット・レポートおよびそれに対するメディアの沈黙,さらに“イラク初の民主的選挙”について,また米大統領選や9.11調査報告書についての記述です。

なお,改段落が原文のままだとちょっと読みづらいので改変してあります。また,独自に小見出しをつけました。それから,元の文章の部分部分は既に他所様で日本語化されていたりするのですが,筆者(ピルジャー)が省略を行なっていたりしているため,既に日本語になっているものから引用すると読みづらくなってしまうので,この稿では独自に訳しています。

ファルージャ,そして米大統領選と9.11――考えられないことをノーマルなことにするという事態より
from Fallujah, The Us Elections And 9/11: A Matter Of Normalising The Unthinkable
John Pilger
November 12, 2004
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?ItemID=6632
またはhttp://pilger.carlton.com/print/133391

■「ノーマルなことにする」
エドワード・S・ハーマンの画期的な論文,「悪は特別なものではないこと(The Banality of Evil)*1」が,これほどまでに適切に思えたことは,今までにない。

ハーマンは「組織化され体系立てられた方法で恐ろしいことを行なうことは,『ノーマルなことにするということ(normalization)』の上に成り立っている」と書いている。「考えられないことを行い,それを合理化するには,分業が存在しているのが通例である。すなわち,一方において個人の集まりによって為される直接の残忍な行為と殺害があり……他方において,技術革新(より優れた燃焼性ガスや,燃焼時間がより長く粘着力がより高いナパーム,体内にどう入り込んでいるのかがわかりづらい爆弾片といったものの開発)に携わる人々がいる。世間一般の大衆に対し,考えられないことをノーマルなこととするのは,専門家と主流メディアの役割である。」

2004年11月6日の(英BBC)ラジオ4の番組「トゥデイ(Today)*2」において,これから始まるファルージャへの攻撃について,BBCのバグダード特派員は,米国人にとって「危険である(dangerous)」とか「極めて危険である(very dangerous)」と述べていた。だがファルージャの一般市民について尋ねられると,このBBC特派員は,米海兵隊は「スピーカーを持って巡回し」住民には脱出するよう告げている,と,だから安心ですとでも言う調子で述べていた。

この特派員は,爆弾を投下される場所の人々にとってそれが何を意味するのかについては一切示すことなく,ファルージャの「最も激しい爆撃」のことを,なおという接続詞を使い,つけたしとして述べたのである。

■主流メディアがファルージャを語る言葉
被告人席にいるのは,英雄的にもサダム・フセインにノーと言った都市で抵抗しているイラク人である。彼らは「ファルージャに立てこもっている反乱勢力」に過ぎない。それはあたかも,彼らが外部からの異物(an alien body),「一掃(flush out)」(ガーディアンがこの表現を用いている)されるべき下等生命体であるかのようだ。あるいは「ねずみ捕り」に適した獲物であると言わんばかりだ――「ねずみ捕り」というのは,上記特派員とは別のBBC記者が英軍ブラック・ウォッチ・レジメントの用語であると伝えていたものである。

英軍のある上級将校によると,米国人はイラク人のことを「人間以下のもの(untermenschen)」として見ている*3。「人間以下のもの」というのは,ヒトラーが『我が闘争』の中で,ユダヤ人やロマやスラヴ人を「人間以下(sub-humans)」であると述べるのに用いた用語である。このような合理化を行なって,ナチス・ドイツ軍はロシアの都市を包囲攻撃し,戦闘員も非戦闘員も同じように殺戮したのである。

■ファルージャについて主流メディアが繰り返す言葉
ファルージャ攻撃のような植民地主義的犯罪をノーマルなこととするのは,このような人種差別がなければできないことだ。そしてそれは,私たちの想像力を「私たち以外」へとつなげていく。「反乱勢力」は人々を斬首するような残虐な外国人らに率いられている,という報道が続々と流された。一例として,アブ・ムサブ・アル=ザルカウィ,ヨルダン人で,アルカーイダのイラクにおける「実行部隊幹部(top operative)」と言われている人物。米国人はこう言うのだ――英国のブレア首相もつい最近国会で同じことを述べたばかりだ。ブレアの嘘の最新作。

ザルカウィに率いられた云々というフレーズが,カメラに向かって,すなわち私たちに向かって,オウムのように繰り返された回数を数えてみていただきたい。そして,イラクにいる外国人といえば圧倒的にアメリカ人なのに,そして彼らは忌み嫌われているのに,外国人が云々という言説に,一切のアイロニーはないのである。

【翻訳者補記:この位置に1文か2文くらい抜けているのかもしれません。指示語の指示対象が不明な部分がありますので,その不明な指示語は原文のままにしておきます。】

These indicationsは,一見したところ信用できる調査組織から出ているようだが,そのひとつによると,レジスタンスによる毎月2700件の攻撃のうち,あのザルカウィの犯行とはっきり断定できるのは6件だけだ。

■ファルージャについて主流メディアが言及しないこと
10月14日に国連のコフィ・アナン事務総長に送られた手紙*4で,ファルージャの行政を行なっているファルージャ・イスラム評議会は次のように書いている。

「ファルージャで,[アメリカ人は]新たにはっきりとしない標的を作り出しました。アル=ザルカウィです。彼らがこの新しい口実を考え出してからほぼ1年になります。彼らが家屋やモスク,レストランを破壊し,子どもや女性を殺すたびに,彼らは『アル=ザルカウィに対する作戦を成功裏に行なった』と言います。この人物は,たとえ実在しているとしても,ファルージャにはいません。ファルージャ住民はそれを絶対に事実であると言い切ることができます。……そして私たちは,あのような非人間的行為を支持する集団とは,一切の関係はありません。あなたがたにお願いします。アメリカと傀儡政権がまもなくファルージャで,そしてこの国の各地で開始しようとしている新たな虐殺を回避するよう,国連に訴えてください。」

英国でも米国でも,主流メディアではこの手紙の1語たりとも報じられなかった。

■不可解な“沈黙”
4月,劇作家のローナン・ベネットは,「彼らのあの不可解な沈黙を破らせるには,どのくらいのショックが必要なのか」と問うた。米海兵隊が4人の米国人傭兵殺害への集団報復としてファルージャで600人以上を殺した際のことだ。この数値は否定されることはなかった。そのときも,今と同じく,米軍はAC-130攻撃ヘリやF-16戦闘機や500ポンド爆弾といった猛烈な火器を,貧しい街に対して用いていた。彼らは子どもたちを灰になるまで焼いた。狙撃兵は,相手が誰であれ,殺したことで鼻高々となっていた。サラエヴォでも狙撃兵はそうだった。

ベネットは,一部の誇るべき例外を除いて沈黙している労働党の多くの国会議員たちや,ロボトマイズされた閣外大臣(junior ministers*5)のことを指してそう言っていたのだが(Chris Mullinのことをご記憶だろうか),ジャーナリストたちも同列に加えることができたかもしれない。「我々の」側を守ることだけに腐心し,明白なインモラルさと犯罪性について何のそぶりも見せることなく考えられないことをノーマルにしているジャーナリストたちも。

もちろん,「我々が」行なっていることによってショックを与えられるということは危険である。というのは,そもそも「我々は」なぜそこにいるのかについて,また,「我々が」イラクだけでなく世界の多くの場所にもたらしている悲嘆について,より広く知らせることにつながりうるからである。我々のテロリズムと比較すれば,アルカーイダのテロリズムは取るに足らないものなのだ,と。

このような隠蔽には何らこそこそしたところはない。白昼堂々と行なわれるのだ。

■『ランセット』のレポートをめぐる“沈黙”
隠蔽の最も衝撃的な最近の例は,10月29日の信頼性の高い医学誌『ランセット』によるアナウンスメントの後を受けてのものだった。同誌は英米の侵略の結果として,10万人のイラク人が死亡したという推定をしている*6。死亡のうち84パーセントが英米の軍事行動が原因となっており,さらにそのうちの95パーセントが,空からの攻撃や大砲による攻撃によるもので,死者のほとんどが女性や子どもだった,という内容であった。

優れた仕事をしているMediaLensの編集者たちが,このrushを――いや,stampedeをウォッチしている。メディアはこのショッキングなニュースに対し「懐疑的な見方」をし,沈黙することでショックを和らげたのである(MediaLensより引用)。

MediaLensでは11月2日時点で,ランセット・レポートはオブザーヴァー,テレグラフ,サンデー・テレグラフ,フィナンシャル・タイムズ,スター,サン*7など数多くの新聞には無視されている,と報じている。BBCはこのレポートについては政府の「疑問」に沿うかたちで報じ,民放のチャンネル4はダウニング・ストリートのブリーフィングに依拠して酷評した。

ランセット・レポートは厳密な査読を経てまとめられているが,このレポートをまとめた科学者たちは,1人の例外を除いて誰も,10日も経つまでこの内容を立証するよう求められなかった。

発表の10日後,戦争賛成派のオブザーヴァー紙がランセットの編集長のインタビューを掲載したが,これは偏った記事で,編集長は「批判の声にこたえる」かのようだった。MediaLensの編集者のひとりであるデイヴィッド・エドワーズは,メディアの批判に応えるよう研究者たちに訴えた。彼らの微細なdemolitionは,medialensの11月2日に記載されている。

このようにして,「我々が」このような殺戮を行なったという考えられないことは,隠蔽された――ノーマルな状態にされたのである。米英の主導した経済制裁の結果として,5歳未満の幼児50万人を含む100万人以上のイラク人が死亡したことが隠蔽されたことを彷彿とさせる。

【翻訳者補記】
ピルジャーのこの記事には書かれていないのですが(おそらくは下書きとかの段階では書かれていたんじゃないかと推測はするのですが),ランセット・レポートは「調査手法に問題があるのではないか」として,メディアでは黙殺されました。この「調査手法に問題が」というのは,首相のスポークスマンの発言とそっくり重なっています。これらの経緯はmedialensの11月2日に書かれています。あと,当ウェブログで日本語にしてある10月28日のガーディアン記事で私が感じたのは,a culture of news managementの存在です。
【補記ここまで】

(イラク戦争の犠牲者が10万人であるというレポートを「調査手法が疑問である」として無視したのとは)対照的に,サダム・フセインの犠牲者が30万人集団墓地に埋められていると宣言したイラク特別法廷の調査手法については,メディアは一切疑問を投げかけていない。特別法廷はバグダードの売国政権が作ったもので,アメリカ人によって運営される。尊敬を集める科学者たちは,特別法廷とは関わりたくないと考えている。

BBCが「イラクの初めての民主的選挙」と呼んでいるものについては何も疑問が投げかけられていない。6月に通った2件の法令で米国が選挙プロセスをコントロールできるという事実については,一切報じられていない。その法令では,ワシントンが好まない政党は「選挙委員会」が消滅させることができるようになっているのだ。米国の『タイム』誌は,CIAが好ましい候補者を買収していると報じている。CIAが世界各地で選挙に不正工作を行なって(fix)きたやり口だ。選挙が行なわれた場合には,アメリカの操り人形が「民主的に」選出されているというのに,またぞろ一票の尊さなどというクリシェに私たちは押し流されてしまうであろう。

■米大統領選挙における“沈黙”
これのモデルとなったのは,米大統領選挙の「カバー(coverage)」であった。11月2日に起きたことはまともに動いているデモクラシーではなかった。しかし報道は,そのような考えられないことに際しても,常套句を並べ立て,それを何でもない(ノーマルな)ものとしていた。ロンドンから飛んだ連中のうち,1人の例外を除いては,誰一人としてブッシュとケリーのサーカスのことを,人口の1パーセントにも満たない超富裕層,権力を握り戦争経済を思いのままに動かしている層による計略であるとは述べていない。敗北したのは民主党だけではなく,誰に投票したかに関わらず米国の大多数の人々なのであるということは,口にできないことだったのである。

ジョン・ケリーが,ブッシュの行なった悲惨なイラク攻撃と「対テロ戦争」を対置することによって,イラク侵略に対する一般大衆の不信を,世界に冠たるアメリカへの支持を高めることに利用しただけだった,ということを伝えた者は誰もいなかった。

「イラクからの撤退のことを言っているのではありません。私が言っているのは勝つことです!」とケリーは言ったのだ。このようにして,ケリーもブッシュもさらに右傾化を押し進めた。何百万人という反戦を唱える民主党支持者が,米国は「カオス」が生じないよう「仕事を最後までやり遂げる責任」があるのだと説得されるように,だ。

大統領選挙で争われたのは,ブッシュかケリーかではなく,外国の占領地の戦争経済と,国内での経済格差だった。だがこれについては沈黙が続き,その沈黙は米国でもここ英国でも包括的なものだった。

定義がお粗末な脅威の与える恐怖を,ブッシュはケリーよりも巧みに掻き立て,それによって勝利した。ブッシュはいかにしてこのようなパラノイアをノーマルなものとすることができたのだろうか? 少し前のことを見てみよう。

■「脅威」の利用
冷戦が終結すると,米国のエリート層は――共和党であれ民主党であれ――一般大衆に対し,戦争経済に費やされていた巨額の費用は「平和の配当金」に当てられるわけではないということを受け入れさせるために,苦心惨憺することとなった。過半数の米国人は,冷戦終結後もまだ,共産主義の脅威と同じくらいに甚大な「脅威」が存在しているとは信じようとしなかったのである。しかしだからといって,ビル・クリントンがペンタゴンの「あらゆる方面の優位(full spectrum dominance)」という戦略を支持した史上最大の「防衛」法案が議会に送られることが難しくなったわけではなかった。

2001年9月11日,脅威に名前が与えられた――イスラム。

■9.11についての議会報告書
最近フィラデルフィアを訪れた際,私は書店の棚に9.11についての議会報告書(the Kean Congressional report on 11 September)が置かれているのを見つけた。「どのくらい売れてますか」と私は尋ねた。「1,2冊ですね」という返事だった。「もうすぐ棚から消えますよ。」

しかし,この地味な青い表紙の書籍はさまざまなことを明らかにしている。イラク侵略の前にブレアが情報を操作したという動かぬ証拠を事細かに明らかにし,それから急に控えめな調子になって誰の責任でもないと結論付けたバトラー・レポート*8と同じく,9.11議会報告書も実際に何が起きたのかを耐え難いほどにはっきりさせてから,それを正面から見据える結論を導くことをしていないのだ。考えられないことをノーマルにしている実例としては最上級である。結論は強烈なのだから,このことは驚くべきことではない。

最も重要な証拠は,北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)司令官のRalph Eberhart将軍の出したものだ。「航空管制があと13分早く対処を要請してきていたならば,空軍のジェット戦闘機は,ハイジャックされた旅客機が世界貿易センターとペンタゴンに突入するのを妨害できたはずだ」と彼は言っている。「……3機とも……4機とも,我々が撃墜できただろう。」

どうしてこうならなかったのか?

9.11議会報告書は,「9月11日の米国の空の防衛は,既に存在した訓練やプロトコルに沿っていなかった」ということを明らかにしている。

「ハイジャックが確定した場合,当番のハイジャック・コーディネイターはペンタゴンの国家軍事指揮センター(NMCC)に連絡を取らなければならないことになっている。……NMCCは,連絡を受け次第,国防長官の承認を得て,軍事支援を提供しなければならない……」。

特異なことに,このような手筈が取られなかったのだ。

9.11調査委員会は連邦航空当局の副局長から,9月11日の朝に通常どおりの手順が取られていない理由は何もないとの証言を得た。Monte Belger副局長は「私は30年の経験がありますが,その間ずっと,NMCCは常に通信網に乗っていて,常時すべての通信を聞いていました。……私はこれまでにハイジャックは何十回と経験していますが……MNCCはほかの当事者すべてと一緒に,常に通信を聞いていたのです」と述べている。

しかし9月11日に限っては,NMCCは通信を聞いていなかった。議会報告書ではNMCCには知らされていなかったとしている。何故か? ここでもまた,特異なことに,軍部の最上層部への回線がすべて落ちてしまったのだと委員会は証言を得ている。ドナルド・ラムズフェルド国防長官は所在がわからなかった。そして,1時間半後にようやく長官がブッシュ大統領に話をしたときには,「短い会話で終わった電話で,撃墜権限についての話はでなかった」と報告書にはあるのだ。

その結果として,NORADの司令部は「自分たちの任務が何であるか皆目わからない状態のまま」に置かれていた。

報告書は,それまでエラーなく動いていた指令システムのうち,9月11日にちゃんと動作したのはほんの一部であり,それはチェイニー副大統領が執務を担当し,NMCCと密に連絡を取っていた日に,副大統領のいたホワイトハウスの中の通信網であったことを明らかにしている。ハイジャックされた旅客機のうちの最初の2機について,副大統領が何もしなかったのは何故なのか? 決定的なリンクであるNMCCが当初まったく沈黙していたのは何故なのか?

キーン調査委員長はこれを発表することを,傍目にもわかるくらいにはっきりと拒んでいる。

むろんこれは,通常あり得ないくらいの偶然が重なった結果でもありうるが,そうでないかもしれないのだ。

2001年7月,ブッシュ大統領のために用意された最高機密のブリーフィング書類には次のように書かれている。「我々(=CIAとFBI)は,OBL(=オサマ・ビンラディン)が数週間のうちに米国および/またはイスラエルに対し非常に大きなテロ攻撃を仕掛けてくることを確信している。その攻撃は非常に派手なものとなり,また,米国の機能あるいは利害に対し甚大な損害を与えることを企図したものとなるであろう。攻撃の準備はなされている。攻撃は警告などほとんどなく,あるいはまったくないままに,行なわれるであろう。」

9月11日午後,米国を攻撃した者たちに対処できなかったラムズフェルド国務長官は側近に対し,イラク攻撃を進めよと告げた――攻撃の根拠など存在してもいなかった段階で。

■「考えられないこと」としてのイラク侵略
その18ヵ月後,イラク侵略が行なわれた。イラクからの攻撃に対応したものではなく,現在でははっきり虚偽と判明している嘘に基づいての侵略だった。この前代未聞の犯罪は私たちの時代の最大の政治的スキャンダルである。西洋が他国を征服しその資源を収奪してきた20世紀の長い歴史の,現在の時点での最終章である。

このようなことがノーマルにされることを私たちが許せば,「民主的な」政府の中心にある隠された目的と秘密の権力構造を問い,それを解明することを私たちが拒めば,そしてファルージャの人々が私たちの名のもとで叩き潰されることを私たちが許せば,私たちはデモクラシーもヒューマニティも明け渡してしまうことになるのだ。

----------
ジョン・ピルジャーはニューヨーク州コーネル大学の客員教授。最新刊のTell Me No Lies: investigative journalism and its triumphsは英国ではランダムハウス社から出版されている。

First published in the New Statesman - www.newstatesman.co.uk
----------
【訳注】
*1:
ハーマンのこの論文を探して検索してみた結果見つかったページによると,The Banality of Evilというタイトルは,ハンナ・アーレントにちなんでいるようです。イスラエルの諜報機関によって1960年にアルゼンチンで身柄を拘束された,元ナチス・ドイツ政権幹部のアイヒマンについて,アーレントは「彼の行なった残虐行為はまさに恐ろしいものだったが,しかし彼自身は何の変哲もないような人物(banal person)だった。凶悪な性格だったわけではない」というようなことを書いています。

*2:
BBC Radio 4のToday(公式ウェブサイト)は,平日の朝6時から9時と土曜日の朝7時から9時に放送されている言論・報道番組。ちなみに,2003年7月の英国国防省顧問のドクター・デイヴィッド・ケリーの死(自殺と断定)をめぐって行なわれたハットン調査委員会およびその報告書(「ハットン・レポート」,2004年1月)で改めて注目された「英国政府の出した『サダム・フセインの大量破壊兵器は45分で使用も可能』との証拠書類は,事実を歪曲していた」との報があったのは,この番組です。(レポーターのアンドリュー・ギリガンはこの件でBBCの職を失いました。)「45分」については2004年の10月になって,英国政府は正式に撤回しています。

*3:
untermenschenは,本文中にあるように,ナチス・ドイツの用語。米軍がイラク人のことをuntermenschenとみなしているというのは,2004年4月に英デイリー・テレグラフなどが報じた内容です(インタビューに応じた英軍司令官がそう述べた)。ウェブ上で日本語で読める関連情報としては,たとえば反戦翻訳団さんの記事(2004年4月22日)があります。

*4:
この手紙はどなたかが日本語にしてくださっていて,多くのウェブログやウェブサイトに転載されています。当ウェブログでは11月3日記事,「ファルージャ市民からの手紙」をご参照のほど。原文はこちらなど。

*5:
junior ministerは,英国の政府において,国会議員から選ばれるministerで,閣僚ではないministerのこと。日本の「副大臣」と同じような役割ではないかと思います。Chris Mullin(←「マリン」か「ミュリン」かわかりません)は労働党の国会議員で,2003年からParliamentary under secretary, Foreign and Commonwealth Office(=外務省のjunior ministerということ),議員になる前はBBCとトリビューンでジャーナリストをしていたという経歴。英外務省にはこの人のフォトライブラリーがあります(雰囲気がちょっとジョン・メイジャーっぽい?)。しかし,最も肝心なこと,すなわちピルジャーがここでremember?といっているのが何のことなのかは,私にはわかりません@役立たず。お分かりの方がいらしたら,どうかコメント欄でご教示ください。

*6:
ランセット・レポートについては,当ウェブログでは当該記事の抜粋10月28日のガーディアン記事があります。

*7:
箇条書きにします。
・the Observerはthe Guardianの日曜日版。(ガーディアンは報道はしています。)
・the Telegraph (=the Daily Telegraph) and the Sunday Telegraphは保守系の新聞。(ということは,テレグラフは平日版も日曜版も言及なしってこと。)
・the Financial Timesは経済紙。(いわゆる「リアリスト」の視点での論説が掲載されていたりする。)
・the Starはエロとスポーツ満載のタブロイド。(ウェブサイトがないのでよく知りませんが。)
・the Sunはエロとスポーツとアジ演説満載のタブロイド@右翼(反EU,移民反対などの傾向)。
……ここに名前のない主な全国版の新聞&タブロイドは,インディペンデント,タイムズ,デイリー・ミラー,デイリー・メール,デイリー・エクスプレス。英国はこれらのほかに地域新聞がたくさんあります。

*8
英国における「情報の誤り」についての調査委員会が「バトラー・インクワイアリ(バトラー調査委員会)」で,その報告書が「バトラー・レポート(バトラー報告書)」。バトラーは委員会の責任者の名前。詳細は当ウェブログの2004年7月15日記事などを参照。


ジョン・ピルジャーはこの記事の前にも「考えられないこと(unthinkable)をノーマルなものとする(normalise)」ことについて,エドワード・ハーマンを引用して,文章を書いています。→2003年4月21日に英インディペンデントに掲載された"The Unthinkable Is Becoming Normal":日本語化されたものが,ヤパーナ社会フォーラムさんのサイトにあります(翻訳は荒井雅子さん/編集は安濃一樹さん)。

ピルジャーの記事は,これまでに私(=いけだ)もいくつか日本語にしていますが,益岡さんのサイトにもいくつかアップされています。また,ピルジャーの著書"New Rulers Of The World"の日本語訳『世界の新しい支配者たち』が岩波書店から出ています(ISBNは4000236415)。

米国の9.11報告書はamazon.co.jpなどでも買えます。価格は1000円足らず,ISBN 0393326713です。


投稿者:いけだ
2005-01-07 08:58:10