私がイラクについて耳にしたこと (1)
私がイラクについて耳にしたこと (1)
エリオット・ワインバーガー
ロンドン・レビュー・オブ・ブックス原文
2005年2月3日
1992年、第一次湾岸戦争の一年後、私は、当時国防長官だったディック・チェイニーが米軍がバグダードを侵略して「イラクを奪取し支配しようとして問題に引きずり込まれなかった」ことは賢明だったと語るのを聞いた。私は彼が次のように語るのを聞いた:「私が自問するのは、サダムはこれ以上どれだけの米国人犠牲者を出す価値があるのかという点だ。答えは、まるでないというものだ」。
2001年2月、私は、コリン・パウエルが、サダム・フセインは「大量破壊兵器に関して何ら重要なものを開発していない。彼は隣国に対し通常兵器を使うこともできない」と述べるのを耳にした。
同じ月、私はCIA報告が「イラクが『砂漠のキツネ』作戦以来の機関を大量破壊兵器計画再建に使ったという直接的証拠を我々は有していない」と述べるのを耳にした。
2001年7月、私は、コンドリーザ・ライスが「我々は彼の兵器を彼から奪っておくことに成功している。彼の軍は再建されていない」と述べるのを耳にした。
2001年9月11日、米国に航空機が攻撃を加えた6時間後、私は、ドナルド・ラムズフェルドが、これはイラクを「叩く」チャンスかも知れないと言うのを耳にした。私は彼が:「大規模に、一気に全部やれ。関係があってもなくても」と語るのを耳にした。
私は、コンドリーザ・ライスが「これらのチャンスをどうやって利用するのか?」と訊ねるのを聞いた。
2001年9月11日、私は、ペンタゴンにイラク侵略計画を開始するよう命ずるトップシークレットの文書に米国大統領が署名したことを聞いた。また、その数カ月後、大統領が秘密裡にかつ違法に、議会がアフガニスタンの作戦に承認した7億ドルを新たな前線の準備に振り向けたことを聞いた。
2002年2月、私はある匿名の「上級軍司令官」が次のように言うのを耳にした:「我々は軍と諜報の要員と資源をアフガニスタンからイラクでの将来の戦争準備のために振り向けている」。
私は、米国大統領が、イラクは「比べようもないほど差し迫った脅威」であり、「イラク政権がかつて開発された中で最も殺人的な兵器の一部を今も所有し隠しているのは疑いない」と述べるのを耳にした。
私は、副大統領[ディック・チェイニー]が「簡単に言うと、サダム・フセインが今や大量破壊兵器を有していることは疑いない」と述べるのを耳にした。
私は、米国大統領が米国議会に次のように述べるのを聞いた:「我が国への危険は重大である。我が国への危険は増大している。サダム政権は核兵器を求めており、核分裂物質により1年以内に核兵器を建造できる」。
私は彼が「我々が直面している危機は月々、年々悪化するだろう。これらの脅威を無視することはそれを助長することだ。イラク政権がいつ何時、炭疽菌やVX神経ガスを仲間のテロリストに与えるかわからない。そしてそのうちには核兵器をも」と言うのを耳にした。
私は、米国大統領が一般教書演説の中で、イラクが2万5000リットルの炭疽菌、3万8000リットルのボツリヌス菌、500トンのサリンガス、マスタードガス、神経ガスを製造するに十分な物質を隠していると語るのを耳にした。
私は、大統領がイラクはウラニウム----のちにニジェールからの「イエローケーキ」酸化ウラニウムと特定化された----および「核兵器製造に適した」何千本ものアルミ管を購入しようとしていると言うのを耳にした。
私は副大統領が次のように言うのを聞いた:「彼が核兵器を入手する断固たる決意であること我々は知っており、また彼が実際核兵器を再建したと考えている」。
私は、大統領が次のように言うのを耳にした:「これら19人のハイジャッカーたちが、サダムに武器を与えられて、別の武器と別の計画を持っていたと想像してみよう。我々が経験しなかった恐怖をもたらすには、たった一瓶、一缶、一箱をこの国に持ち込むだけでよい」。
私は、ドナルド・ラムズフェルドが「イラクによる核の脅威は差し迫ったものではないと言う者たちがいる。私はそれほど確かではない」というのを聞いた。
私は、大統領が「アメリカは我々に対する脅威が集結しているのを放置しない。災厄がもたらされる明らかな証拠を前に、我々は最終的な証拠----決定的な証拠----を待つことはできない。それはキノコ雲のかたちで訪れるかも知れないのだ」と言うのを耳にした。
私はコンドリーザ・ライスが「我々はキノコ雲のかたちをした『決定的証拠』を望まない」というのを耳にした。
私は対EU米国大使がヨーロッパの人々に次のように言うのを耳にした:「ヨーロッパにはヒトラーがいたが、誰一人彼に対処しなかった。バグダードには同じタイプの人物がいる」。
私は、コリン・パウエルが国連で次のように言うのを耳にした:「奴らはたった一月で、何千何万という人々を殺すに十分なだけの乾燥生物物質を製造することができる。サダム・フセインは大量の科学兵器を一度も明らかにしていない:マスタード・ガスを搭載した550の砲弾、3万発の空の弾薬、そして現在保有する科学兵器に加えて500トンの化学物質を作るに十分な先駆物質。我々の控えめな見積もりでは、イラクは今日100トンから500トンの科学兵器物質を保有している。最低値100トンの物質でも、サダム・フセインが、100平方マイルの地域に大量犠牲者を生み出すことを可能にする。マンハッタンの5倍の大きさである」。
私は彼が「今日私が述べるすべての言葉は、情報源、確実な情報源が保証しているものである。これらは主張ではない。皆さんに呈示しているのは事実であり、確実な情報に基づく結論なのだ」というのを聞いた。
私は、大統領が次のように言うのを聞いた:「イラクは広い範囲に生物兵器あるいは化学兵器をばらまくために使うことができる有人無人の航空機部隊を拡大している」。イラクは「命令が下されてから45分のうちに生物兵器や化学兵器による攻撃を開始できる」。
私は、トニー・ブレアが「私はサダムがそれらの兵器を破壊する決断をしたことを信じろと求められている。そんな主張は全く馬鹿げていると言おう」というのを耳にした。
私は米国大統領が次のように言うのを聞いた:「我々は、10年来イラクとアルカーイダの上層部が接触してきたことを知っている。我々はイラクがアルカーイダのメンバーに爆弾製造と毒と致命的有毒ガスを訓練したと知らされた。テロリストと同盟することでイラクは痕跡を残さずにアメリカを攻撃することができるようになる」。
私は、副大統領が「アルカーイダとイラク政府の間に関係があるという圧倒的な証拠がある。両者に確固たる関係があることを確信している」と語るのを耳にした。
私は、コリン・パウエルが「イラク政府関係者はアルカーイダとの関係を否認している。こうした否認は単にまるで信頼できない」というのを耳にした。
私は、コンドリーザ・ライスが「記録に残すことができるアルカーイダとサダム・フセインの間の接触があるのはあきらかだ」と言うのを聞いた。
私は、大統領が「アルカーイダとサダムを区別することなどできない」というのを耳にした。
私は、ドナルド・ラムズフェルドが「9月11日の攻撃が大量破壊兵器によって為されていたと想像してみるがよい。3000人ではなく、何万人もの罪のない男女と子どもが犠牲になっていただろう」と言うのを聞いた。
私は、コリン・パウエルが上院に、「真実の瞬間が近づいている」というのを耳にした。「これは理論的問題でも、米国が立腹しているというだけでもない。我々は実際の兵器について話をしている。我哀れは炭疽菌について、ボツリヌス毒について話をしている。我々は核兵器開発計画について話をしている」と語るのを耳にした。
私は、ドナルド・ラムズフェルドが「我が人民の治安にイラク以上に大きな危急の脅威を呈しているテロ国家はない」と言うのを耳にした。
私は、大統領が「苛立ちに毛を逆立てて」次のように言うのを聞いた:「もっと時間がというこれ、彼が武装解除していないことをはっきり知るためにどれだけの時間が必要なのか? 彼は時間稼ぎをしている。欺いている。時間を引き延ばそうとしている。査察団とかくれんぼをしている。はっきりしていることが一つある。彼は武装解除していない。友人の皆さんは過去から教訓を学んだはずだ。まるで出来の悪い映画の再上映のようだ。私は見る気がしない」。
私は、イラク侵略を承認する数日前、ペンタゴンが、機密ブリーフィングで米国上院に、イラクは米国東岸に無名の「無人航空機」で炭疽菌などの生物兵器や化学兵器攻撃を行うことができると説明したことを聞いた。
私は、ドナルド・ラムズフェルドが、米国が知っていることをバグダードに明かすと軍事作戦を危険にさらすかも知れないので、イラクの大量破壊兵器については具体的証拠を提示する気はないと語るのを耳にした。
米国がつきつづけてきた嘘をめぐっては、「戦争とテロを巡る40の嘘」(1)・(2)・(3)・(4)もご覧下さい。
投稿者:益岡
2005-03-13 01:31:05
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