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2005/05/26

米国のイラク占領に対するレジスタンスの解剖

 
自爆攻撃(日本のニュースでは「自爆テロ」)だけが強調される中、レジスタンスを見つめ直す。

米国のイラク占領に対するレジスタンスの解剖
ライス・アル=サウード
Counter Punch 原文

米国にいる左派の多くが、イラク占領に対して一貫しているとは言えない態度をとっている。2003年3月の侵略前には、メトロポリタン・アメリカの路上には大規模な政治的反対派が姿を表し、現政権への憤りを表明していた。けれども、侵略後の世界において、米国の左派は驚くほど態度が曖昧で揺れている。誰かがこの一貫性のなさを指摘すると、レトリカルな反応はいつも同じである----「我々」は今イラクにいるのだから「仕事を完遂しなくてはならない」----。ところで、この「仕事」が正確に何なのかはいつも曖昧なままだが、結局はイラクの治安に関係している。ドナルド・ラムズフェルドは、最近のイラク訪問の際、政府の方針を繰り返している。すなわち、米国は、イラク人がいわゆる所の「ゲリラ」を鎮圧できるならば、イラクを立ち去るというものである。すなわち、米国がイラクを侵略した理由はWMDだったが、今イラクに居座っているのはレジスタンスのためであるという。そして、この度も、メディアは、米国のWMDに対する主張のときと同様、レジスタンスに対する米国の主張を検討することに対し、専門的な態度で軽蔑的な無視を決め込んでいる。

イラクにおけるレジスタンスをメディアが歪めて伝えていることは、ブッシュ政権の占領イデオロギーの中核を担っている。占領勢力として、米国は、表向き、皮肉にも米国がいることによって引き起こした治安崩壊からイラクの人々を守る義務があると主張している。この点について米国メディアに我々がどんなに多くの批判をしようと、それよりも苛立つことは、いわゆる「左派」の多く、自称戦争批判者たちが、占領イデオロギーに加担していることである。

私は、最近、ここ米国の著名な大学の一つで開催された公開イベントに参加していた。そこで、ゲストの一人----占領下イラクで長い時間を過ごした自称戦争批判者----が、イラクのレジスタンスは過激で酷く、「ワッハーブ主義者と元バース党員」のために働いていると言うのを聞いた。私が彼に、実際にイラク人レジスタンスのメンバーとどれだけの時を一緒に過ごしたか訊ねると、彼は、実質的に何一つ経験があることを私に示すことができなかった。すなわち、イラクにおける暴力についての彼の情報は、そもそも占領を開始したと同じ情報源、つまり米国政府により提供されたものなのである。この点について米国政府が押しつけようとしている主張の裏をとるためにほとんど何一つなされていないことは皮肉でありまたコミカルである。けれども、何よりも、米国の大多数が、次ぎに起きることを「恐れて」いる限り、アメリカ人たちがイラクを立ち去ることを真面目に期待はできない。そして、レジスタンスを目を見開いたファナティストや「何も失うもののない」絶望した者たちであるとする米国政府の主張は、極めて戦略的に、できるだけ多くの米国市民の支持を占領に惹き付けておくために持ち出されたものなのである。私はここで、レジスタンスを簡単に解剖してみることにする----レジスタンスが何から構成されており、何を達成しようと願っているかを述べてみる。

第一に、イラク人レジスタンスは、政治勢力と軍事勢力とからなっており、イラクの主要なレジスタンス・グループはすべて、国をどうしたいかの期待については明確で一貫したより大きな政治的枠組みに結びついている。しかしながら、さらに大切なことは、レジスタンスの方法と目的はこれまで常に明らかにされていたことである。主要なイラク人レジスタンス・グループの中で、イラクの罪のない人々を標的とすることを認めるものは、一つもない。米国は、都合良く、そうでないことを主張するコメントを、その著者のコメントや検証やチェックができないようなウェブサイトに掲載されたものに限って引き合いに出す。イラク人レジスタンスの政治部門を担うメンバーは、軍事活動部門の報道官としていつでもメディアのアクセスを受け付けているが、彼らの気持ちやイラクの出来事に関する分析を訊ねた西洋のメディアは一つもない。メディアが強硬に公式の米国版の出来事にしがみついているため、レジスタンス自身と結びついた情報源が入手できるにもかかわらず、それは除外される。これに関して、考えられるのは3つしかない。a)米国のメディアは占領と共犯関係にある、b)単に無能、c)人種差別主義者で、アラブ人は情報源としてよろしくないと見なしている(むろんこれら3つのすべてかも知れない)。言うまでもないが、こうした性格は、情報の信頼できる流れを伝えない。公開され検証されうる証拠に従えば、次のことを、強調して認めなくてはならない。つまり、イラク人レジスタンス・グループが公に民間人を標的とすることを認めたことは具体的には一度もないこと。

第二に、イラク人レジスタンスは、イラク国内だけでなく国外でも、政治的な組織化を活発に進めてきたことである。これについては2つの出来事を述べよう。「占領を拒否する民族勢力高等評議会」の会議と、アルジェで開かれた第16回「アラブ民族会議」である。前者により、イラク人レジスタンス・グループはいっそう結束した。これが意味するのは、マンデイトと主張を備えた民族解放戦線が姿を現しつつあるということである。こうした連合のアイディアや政治的目標に注意を払ったジャーナリストはほとんどいない。

高等評議会が献身している主なことがいくつかある。

a)外国の攻撃と帝国主義に対して自らを守るイラク人の権利

b)占領に邪魔されない、制限のないイラク人の意思を反映した政治プロセスを求めるイラク人の権利

c)多元的で民主的なイラク

高等評議会のメンバーは様々で多様性をもっており、イラクの多様性を尊重している----アメリカ人が来るまでそれは問題ではなかった。評議会が強硬に反対していることもいくつかある。

a)イラク占領の継続とイラクに常駐基地を作ること

b)イラク経済の私有化とイラク資源・ビジネス世界への外国企業の無制限アクセス

c)イラク連邦

最後の点は論争の余地があると思われるかも知れない。けれども、米国の中東における寝食ミンチ主義的野望と思われるものにとって連邦は決定的に重要である。イラクの連邦制は、地域がいっそう絶望に近いグループに分断され、お互いに向けて「武装する」ことを奨励されることになる。それにより、「安定を保つために必要」という名目で、米国のイラク駐留は永続化される。

主要な要素のいくつかを示した理由は、ほかの人もそれを採用すべきだと説得するためではなく、レジスタンスが考えを進めている政治的文脈を示し、世界中からの精神的支援をもっと強めるべきだと示唆するためである。さらに、幻影と幻影が書き込むウェブサイト、イラクでは誰も会うことも見ることもできない個人を参照するだけの米国の「証拠」とは異なり、たとえばイスラム法学者協会や人民闘争運動のメンバーは、コメントを求めたり詳しい話を聞いたりするために接触することができるし、イラク人レジスタンスとその性格や億滴について具体的な説明をすることができる。それに加えて、こうしたグループは、すべて、イラク人民間人を標的とすることを強固に非難している。結局、どうして非難しないわけがあろう? 同じイラク人なのだから。最も不快なのは、西洋の者たちが、最も過酷で残酷な性格をイラク人レジスタンスに認めながら、占領における米国のいかさまはやすやすと大目に見ることである。イラク人(あるいは他の外国から来た「アラブ」)は自国で内戦を始めようとしている米国政府の主張は、論理的な分析による支えがまったくない。一方で、イラクに混沌があるかぎり、アメリカ人は「治安」を確保するためにイラクに残らなくてはならないというのが真実とされている。

世界の多くがブッシュ政権によるWMDの主張を重視しすぎて後悔しているように、占領が続く限り、米国がイラクに留まる理由についてはもっと調べなくてはならない。いくつかの点ははっきりしている。米国によるイラク侵略は不法で不道徳で、正当化できず、破壊的だということ。それを考えると、西側の人々がイラク人の自衛権を否定するならば、将来のイラクおよびアラブ=ムスリムとの関係はじわじわと危険になるだろう。第二に、「ゲリラ」に関わるとされる破壊行為の多くは、イラク人レジスタンスの主要グループには関係なかったこと。さらに、広い基盤を持つ政治的プラットフォームがあって広く世界に自らを開いており、接触することができること。組織化されたイラク人レジスタンスは原則と方法を確固として保っているが、今のところ、イラク占領に対する正義をもとめ占領を終わらせようと献身している西洋の人々から必要な注目を得ていない。

残念ながら、米国のメディアはイラクの組織化された反対勢力を無視することを選び、そのかわりにバグダードで急増している顔のないウェブサイトや小犯罪の多発に商店をあてている。様々な理由で、左派のほとんども、レジスタンスは非理性的な脅威で、「元バース党員とワッハーブ派」により構成されていると強く考えている。政治オブザーバとして、こうした特徴付けから導かれるのは奇妙な結論である。米国の占領に対するレジスタンスなど存在せず、あるのは、自由で民主的に選ばれたとされる政府に対する「ゲリラ」だという奇妙な結論。占領の重大さは、知識人サークルにおいて耐えがたいまでに厚顔に無視されており、そのかわりに、「スンニ派とシーア派」の関係とか「アラブ人とクルド人」の関係とかいったレトリックに膨大な資本が投下されている。

我々は、次の点を、自問しなくてはならない。占領の不法性はどうなったのか? そしてそれに反対する正当な権利はどうなったのか?

ライス・アル=サウードは社会科学を教える大学講師で、イラク占領に政治的に反対する人民闘争運動のメンバー。

論理性のカケラもないレトリックで報道があふれる中、当たり前の事実を確認し続けることは大切ですね:

米国によるイラク侵略は不法で不道徳で、正当化できず、破壊的だということ。

米国の占領に対するレジスタンスなど存在せず、あるのは、自由で民主的に選ばれたとされる政府(!)に対する「ゲリラ」だという奇妙な結論が至る所で当たり前のように流されていること。


投稿者:益岡