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2005/11/17

米国が白燐の対人使用を認める(16日BBC)

米国が、ファルージャで白燐を人に対して使用したことを認めました。本質的には新しい情報ではありません。が、問題点がより明瞭になりました。

以下、精査が必要と思われる部分などは原文を残してあります。

米国がWPを使用
US used white phosphorus in Iraq
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/4440664.stm
Last Updated: Wednesday, 16 November 2005, 11:25 GMT
※この記事も私が確認しただけで1度、アップデートがありました。以下はアップデート後のもの。

【概略】
昨年のファルージャ攻撃において、米軍が白燐を使ったことを、米国が認めた。「白燐は、敵の戦闘員に対し、焼夷兵器として使用された」と、Lt Col Barry VenableがBBCに語った。しかし民間人に対しては使用していない、とのことである。

Col Venableは、白燐は禁止されている化学兵器ではないとしている。米国政府は、白燐を一般市民に対して使用することを制限する国際条約を批准していない(原文:Washington is not a signatory to an international treaty restricting the use of the substance against civilians)。

以前、米国国務省は、白燐は照明の目的で極めて慎重に用いたがそれ以外では使用していないとしていた。Col Venableは、これについて「不十分な情報(poor information)」に基づいたものだと述べた。

ファルージャは、バグダードの西にあるスンニ派反乱勢力の拠点で【←泣けてくるね。去年の11月の攻撃の理由覚えてる?「ザルカウィとその支持者がいるから」。4月のときは「殺人犯に法の裁きを下すため」】、ここに対する米軍の攻撃で、市の人口30万人の大半が家から離れ、市内の多くの建物が破壊された。

Col VenableはBBCのPM radio programmeに対し、米軍の白燐使用の目的は、「第一に視界をさえぎり、煙幕とするため、またいくつかの場合にはターゲットのマーキングのため(原文:primarily as obscurants, for smokescreens or target marking in some cases.)」と語った。「しかしそれは焼夷兵器であり、敵の戦闘員に対しては使用してもよいものである(原文:However it is an incendiary weapon and may be used against enemy combatants.)」、また、白燐は「通常兵器(conventional munition)」であって化学兵器ではない、白燐は「非合法とされているものではなく、また、違法なものではない」と述べた。

また彼は、米軍は、敵の兵士を隠れている場所から追い出すために、WPを用いることができる、と述べた。「炎と煙の効果が合わさり、また時には地上での爆発による恐怖も加わって、敵が隠れ家から出てくる。そうすれば高性能爆薬で殺すことができる。」

サンディエゴのジャーナリスト、Darrin Mortensonは、ファルージャ攻撃に際して米軍にエンベッドしていた記者である。彼はBBCのToday(ラジオ番組)に対し、白燐が反乱勢力に対して「焼夷兵器」として使用されるのを見た、と語った。しかし、「一般市民に対して故意に武器が使用されるところはまったく見なかった」と彼は語っている。(原文:he "never saw anybody intentionally use any weapon against civilians")

【茶々:ジャーナリストが「自分が見たか見なかったか」だけで語るってのも奇妙なことですね。never saw anybody intentionally use any weapon against civiliansということは、字義通りに見れば、「いかなる人も一切の兵器を市民には使わなかった」ということになりますが、例えば「検問所で“誤射”」なんてことはしょっちゅうあったのだから、この発言は「最小限を引用した」ものだろうと思います。また、Darrin Mortensonがエンベッドしていたのは4月の攻撃と11月の攻撃の2度あって、4月のときにWPの使用を目撃して記事を書いているのですが、このBBC記事では、Darrinがどっちのことを話しているのか、あるいは両方なのかがわかりません。控えめに言っても雑な編集です。】

英国の国防省のスポークスマンは、戦闘での白燐の使用が許されるのは、ターゲットのエリアの近くに一般市民がいない場合である、と語る。

しかしブラッドフォード大学平和研究所のポール・ロジャース教授は、白燐は故意に一般市民に向けられた場合は、化学兵器と考えることができると述べる。教授はPM(ラジオ番組)に対し「通常の使用ならば白燐は化学兵器禁止条約の対象にはなりません。しかし、法的には微妙な問題になりますが、このような目的で、人間に対して直接用いられれば、白燐は化学兵器のカテゴリに入ることになるでしょう」と語った。(原文:It is not counted under the chemical weapons convention in its normal use but, although it is a matter of legal niceties, it probably does fall into the category of chemical weapons if it is used for this kind of purpose directly against people.)

【訳注:「このような目的」this kind of purpose の指示対象は不明。編集が雑なんだと思います。】


この記事からわかることは、米国が言っているのは、「確かに使ったことは認める。それも人に対して使った。しかし相手は一般市民ではない、敵の戦闘員だ」という論だということです。

その論拠は、「ファルージャからは一般市民はいなくなっていた」、「ファルージャにいたのは全員が戦闘員だ」。

まさに1年前に危惧していた通り。

1年前、攻撃が開始される前に執拗に「住民のほとんどは避難した」と報じられました。ファルージャについてのすべての記事にその一言(と「ザルカウィの拠点」という語句)が書かれていました。

報道記事のどれにも、「ほとんど (most of ~など)」という語句がついていたことは確かです。また、ファルージャの総人口についての記述が、あるものは「30万」、あるものは「20万」、あるものは「25万」というように、ブレていたことも確かです。

にもかかわらず、「ファルージャの一般市民はみな退避した」という“空気”が作られてた。「残っているのは戦闘員だけだ」と言いたげに。情報戦争です。

実際にはどうだったか? 2004年11月13日には「イラク赤新月が物資を搬入」という記事がBBCに出てたんですが(そしてそれは実際には搬入されていたかどうかって問題もあるんですが)、そのBBC記事には、Tens of thousands of civilians fled Falluja before the US-led assault, but up to 50,000 people are thought to have stayed.(数万単位の人々が攻撃前に脱出したが、最大値で5万の人々が残っていると思われる)と書かれています。

ちなみに、このファルージャ攻撃、作戦名Operation Phantom Fury(別名「夜明け」作戦)は、11月13日の時点では終わっていない。(この作戦の終結宣言って出たんでしたっけ?)

つまり、米軍が白燐を使った作戦を行っていたとき、戦場となったファルージャには一般市民が「最大で5万人」残っていると考えられていて、それでも米軍は雨あられとクラスター爆弾だの白燐弾だのを浴びせたわけです。

そうしておいて、「WPは、戦闘員に対しては使ったが、市民に対しては使ってない」と言う。

WPが化学兵器になるならないで論争になっているのは、WPが化学反応を起こして酸化リン(五酸化二リンP2O5→分子が2つで十酸化四リンP4O10)の形で煙が発生する(致死性のガスが発生する)からです。

爆弾は戦闘員に向けて撃ち込まれたのだとして、撃ち込まれた爆弾から発生したガスは戦闘員と非戦闘員を区別するんでしょうか。

問題は爆弾とか砲弾そのものではなく、ガスのはずです。

【ここらへん、「戦場」の定義にも関わってくることだと思います。「市街戦」はどう扱うのか、という問題。お詳しい方、いらしたらぜひコメントをください。】

それから、「あの死体は本当に戦闘員だったのか?」ということ。

RAIのフィルムでは、「奇妙なことに服は損なわれていなかったので、防弾チョッキを着ている反乱軍と非戦闘員を容易に区別することができた」というナレーション(日本語訳はゆっくすさんによる)があり、映像でも防弾チョッキを着用した黒く溶けた遺体と、防弾チョッキを着用していない黒く溶けた遺体が示されます。

米国が、「防弾チョッキを着ていないのは非戦闘員だ」と認めることがあるのかどうか?

最後に、ファルージャについて米軍がどう考えていたのか。作戦の現場に兵士としていた人の言葉(RAIニュースより)。
元アメリカ兵士ジェフさん:
私は、作戦「夜明け」において指揮官がファルージャに入る際の護衛に関わった。
ファルージャの戦闘地域に入る際、歩いている人、話している人、息をしている人は一人残らず敵の戦闘員だ、と指示された。すなわち、道を歩いてる人も家の中にいる人も全て標的だった。

-- 日本語訳はゆっくすさんによる


米国は、アブ・グレイブについて最終的に「一部の不届き者が」で逃げ切った。それと同様に「敵の戦闘員が白燐で焼け爛れた」で逃げ切るつもりでしょう。それが、今になってUSAがWPの使用を認めたことの意味です。途方もなく暗いけれど、私はそう考えざるを得ません。

投稿者:いけだ