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2006/03/25

CPTメンバー解放についての記事類(1) CPTからの声明

CPTの3人の解放について、各種記事類。まず、CPTからの声明と、それについての反響。

声明を日本語化したもの(岡田剛士さんによる)が、原文(英語)とあわせて、P-navi infoさんに掲載されています。

■イラクで拉致されていたCPTのメンバーが解放 (CPT声明全訳あり)(3月23日)
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200603232142.htm

 私たちはHarmeet Soodenの帰還を歓喜と共に迎えます。……

 私たちはJim Loneyの帰還を歓喜と共に迎えます。……

 私たちはNorman Kemberの帰還を歓喜と共に迎えます。……

 私たちは、悲しみの涙と共に Tom Foxのことを覚えます。……

 HarmeetとJim、Norman、そしてTomは、イラクの人々が直面している苦闘を知るために赴きました。武力紛争によって破滅的な状況にある一つの国で非暴力的なオルタナティブを実現しようとする、そうした正義と平和のための情熱ゆえに、彼らは赴いたのでした。

 この4人は、彼らを守ってくれるのは、神の愛の力、そしてイラク人協力者たちと国際的な協力者たちの力だけなのだ、ということを知っていました。私たちは、多国籍軍によるイラク違法占領が、今回の誘拐、そしてイラクにおけるたくさんの悲しみと苦難をもたらした不安定さの一番の原因だと確信しています。この占領は終わらなければなりません。

 今日、この喜ばしい知らせに接して、私たちの信仰は、私たちの敵がたとえ私たちの友人に大きな苦難をもたらし、その家族に悲しみをもたらす行為に加担していたとしても、そうした敵を愛することを求めています。JimとNorman、Harmeet、そしてTomをイラクへと赴かせた預言的な非暴力のスピリットゆえにこそ、私たちは、復讐のスピリットに従うことを拒否します。私たちの友人に勇気を与え、このかんの数ヶ月にわたって彼らのスピリットを持続させてくれた慈悲深き神に、私たちは感謝します。

 ……


これを読みながら、イラクの人たちについて私が「よかった!」と思ったのは、これまでどういうケースがあっただろうかと思い出していました。

まずは、2004年、シーア派の行事「アシュラ」のときに、ものすごいでかい爆弾が爆発した際、取材に行っていたサラーム・パックス(元祖「バグダード・ブロガー」)が一時音信不通になってしまって、数日後に無事が確認されたとき。

それから、2004年9月、バグダードのハイファ・ストリートで取材していたG(Ghaith Abdul Ahad:元バグダード・ブロガーズのひとり)が英ガーディアンに書いた記事を読んだとき――それは単に、Gが死ななくてよかった、というだけのことにすぎない。Gが撮影した現場の写真の中の人たちは、死んだ人か、死につつある人でした。米軍の攻撃があったときにそこにいた人のなかで、生きのびたのは写真を撮影したGだけ。

バグダードで何か爆発があったとか、「捜索」作戦が行なわれたとか聞くたびに、バグダードのブロガーが何か書いているのを確認しては、「よかった、彼/彼女は無事だ」と安堵するのは、すっかりノーマルなことになっています。モスルで何かあるたびに女子高生ブロガーズやそのご家族のブログを確認してはほっとするということもノーマルで、ほとんどルーティーン化してさえいます。

大多数の人たちは、英語でブログやってないってのが現実なのだけれども、それを知っていてもやはり。

Khalid Jarrarがムハバラト(俗称)に連行された件では、彼らご家族とはほかのブロガーよりも強いつながりを私は持っているから(翻訳とかしてる点で)、Faizaが「息子が解放されました」と書いたときのモニタのこちら側での気持ちは、「安堵」を超えていました。

むろん、何度かあった「解放された外国人人質」のニュースでも「よかった!」と思いました。

けれど、そういった「私の安堵」の背後には、いかほどの暴力と流血と死があることか。

再度、CPTの声明より(source):

During these past months, we have tasted of the pain that has been the daily bread of hundreds of thousands of Iraqis: Why have our loved ones been taken? Where are they being held? Under what conditions? How are they? Will they be released? When?

 この数ヶ月間、私たちは、イラクの数十万もの人々の日々のパンとなってしまっている苦しみを味わってきました。つまり、なぜ私たちの愛する人々が連れ去られてしまったのか? 彼らはどこに拘留されているのか? その人々が置かれているのは、どんな状況なのか? かれらの状態はどうなのか? 解放されるのだろうか? そして、いったい、いつになったら? ──と。


****************

一方で、これは資料的にメモしておきたいから書くのだけれども、このCPTの声明に対して物申す的な記事もあります。

Activist group fails to thank rescuers
By Richard Beeston, Diplomatic Editor
March 24, 2006
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,7374-2101199,00.html

THE Christian group whose activists were freed in a British-led raid in Baghdad yesterday did not thank their rescuers but instead called on them to withdraw from Iraq.

昨日英軍主導の捜索でクリスチャンのグループのメンバーが解放されたが、そのグループは、救出者に感謝するどころか、救出者に対しイラクから撤退せよと呼びかけた。


引用したのは、記事の第一パラグラフ。つまり最も目立つ場所であり、最も明確に「筆者の主張」を打ち出す場所です。

記事ではその後CPTの声明やメンバーの発言を紹介し、その後で「CPTは他の援助団体が撤退したあとも、イラクに居座った」的なことが書かれ、CPTのメンバーが護衛をつけずにあちこちに赴いていることなどが、非難する書き方で書かれています。

The Times(米国ではNYTと区別するために、the London Timesと表記されることがある)はルパート・マードックのニューズ・コーポレーションの一員。この新聞は、こういう「“正論”を“正々堂々と”言う」系の記事を読みたい読者をたくさん持っているのだろうということで。

(ちなみに、同じthe Timesでも日曜のthe Sunday Timesは別組織で、編集方針も違います。また、低俗系タブロイドのthe Sunとその日曜版のthe News of the Worldも、the Timesと同じグループ、つまり一種の「系列」で、the Sunはthe Timesよりもっとあからさま。)

このthe Timesのような論調は、ネットをうろうろすればほかにも見つかるんですが、こういうのは1つメモすれば事足りるんでこれだけで。

ただし注目すべきは、the Timesがこのような書き方をしているということだけではありません。

ガーディアンなどに書かれているのですが、英軍司令官のマイク・ジャクソン将軍は、チャンネル4ニュースでのインタビューで、解放された人から解放した(解放してくれた)兵士への感謝のことばがないことについて「悲しい」と述べているそうです。

正確な発言とその発言の文脈を見るべきなので、チャンネル4のサイトから。

General Jackson interview
Published: 24 Mar 2006
By: Jon Snow(←チャンネル4のニュースキャスター)
http://www.channel4.com/news/...

Q: Does it help when - however well intentioned, people put themselves in this position? You have somebody who voluntarily goes out there, decides they're going to be a peacemaker, they oppose your presence there, and then you have to divert resources from what you are really doing - which is to protect the civil population, in order to rescue them...?

A: Well indeed. Part of this in my view; part of what we are doing is to take Iraq out of a pretty dark age and help it - with all the difficulties - but to help it progress to something rather better ...

Q: But there are more people saying they are going to go out and try and make peace... what do you say to them?

A: Well I would say please abide by the very clear advice you are given by the Foreign Office - I would say that to any British traveller.

Q: And don't go?

A: Well that is what they are saying. Yes. But equally, the point I was coming to; when I was reflecting upon moving Iraq into a better future - part of that is that people are free in a way that we understand - to make their own decisions, if that flies in the face of such advice, so be it...

There is a very fine balance here but I would urge people, because I am slightly saddened that there doesn't seem to have been a note of gratitude for the soldiers who risked their lives to save those lives.

【意訳:ところどころよくわからない部分があるのですが強引に。「誤訳」はご指摘ください】
キャスター:どんなによい意図であれ、自分のせいでこうなったという場合に、だからといってどうなんでしょうか? つまり、現地に行くのだと自発的に言い出して、平和をつくるのだと言う人がですね、あなたがた(=軍隊)がいることには反対している。そしてこういうことになったら、そういうことを言う人たちの救出のために、本来の任務にあたるべき人員を割かなくてはならない――本来のというのは、(イラクの)一般市民を守ることですが。

ジャクソン将軍:そうですね。私個人の考えでもありますが、(それとは別に、)われわれがやっていることとは、イラクを暗黒時代から出し、イラクを助けることですから。いかに困難であろうとも、イラクがもっとよい状態になるのを助けることですから。

キャスター:しかし、現地に行って平和をつくるのだと言う人たちが増えていますよね……そういう人たちについてはいかがおっしゃいますでしょうか?

ジャクソン将軍:そうですね、とにもかくにも、外務省から出されている非常にはっきりとした勧告(=退避勧告)に従って、思いとどまっていただきたい。英国人で渡航しようという人全員にそう申し上げたいですね。

キャスター:つまり行くなと?

ジャクソン将軍:そうですね、外務省はそう言っているわけですから。しかし同様に、私が言いたいのは、イラクをよりよい未来へと動かすことを考えますと――それには私たちが理解しているように自由に、人々がなれるということも含まれますが――自分自身で決断できるようにですね、ああいう勧告はうっとおしいだけというんでしたらそうでしょうが……

非常にデリケートな問題ではありますが(=「自由」な英国において政府の言うことに従えという点で)、しかし私としてはやはり強くお願いしたい。というのは、命を賭して彼らを救った兵士たちに対する感謝のことばが一言もないようですが、そのことで私は少々悲しく感じておりまして。


※The Timesの記事は24日付けで、マイク・ジャクソン将軍のインタビューは24日の夜のニュースですから、the Timesが将軍のこの発言を受けて記事を書いたということではありません。記事中に将軍への言及もありませんし。


投稿者:いけだ