「食べ物を得るための投票」?&投票率について。
というわけで,同じ主題を扱ったRaed blogを。私が管理・運営している日本語版からの転載。投票率についてもいろいろと書かれています。
2005年1月30日(日)の記事
http://raedinthemiddle.blogspot.com/
Sunday, January 30, 2005
食べる物のために投票を
いきなりですが訳注:
日本語化するにあたり,まず,Raedさんが下記記事で最初にリンクしているワシントン・ポストの記事を少しだけ見ておいていただきたいと思いますので,訳者の判断でそれをRaedさんの記事の前に置くことにします。In Iraqi Vote, the Writing Isn't on the Wall
There is a sense among some in Baghdad that the United States wants the new parliament to choose Allawi, the incumbent, as prime minister. If the Americans want it, the conversation goes, so it will be. This reflects the deep vein of conspiracy theories that runs through Baghdad life these days -- from a rumor that the Jordanian militant Abu Musab Zarqawi, blamed for some of Iraq's most spectacular carnage, is an American fabrication, to a rumor voiced by Abed that Iraqis who don't vote will have their monthly food rations taken away.
"Maybe it's not correct," he said, "but it's what people are saying."
バグダードの人々の中には,米国は新たな議会に現在のアラウィを首相に選出してもらいたがっているのだと感じている人々もいる。もしもアメリカがそれを望んでいるのであれば,と会話は続く――そうなるんだろう。これは,最近のバグダードの生活に走っている陰謀論の深い根を反映している。アブ・ムサブ・アル=ザルカウィ【ザルカウィについての記述部分省略】はアメリカの作り事であるとか,アビド【引用した部分の前に出てくる,取材に応じたイラク人】が言っていた噂,投票しないイラク人は毎月の食糧配給が受けられなくなるという噂が,日々ささやかれているのだ。
「本当ではないかもしれないけれど」とアビドは言う。「でもそれが,みんなが言ってることなのだ。」
食糧配給云々は,いわゆる「デマ」かもしれません。しかしこういう場合に人々の行動を決める上で重要になるのは,それが本当かどうかより,むしろ,みんながそれを信じているということじゃないかと――Raedさんもそう書いています。
だから,「食べる物のために投票を Vote for Food」というこのエントリのタイトルは,「事実として,投票しない者には食糧配給をしないというお達しがあった」ということではなく,「投票しない者には食糧配給をしないという噂が流れて,投票しないでおこうと思っていた人たちも投票所に行った」ということと解釈してください。
では,以下がRaedさんの記事です。
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卑劣で腐りきったブッシュ政権は,汚いアラウ(ィ)政権と共同で,イラク人に投票を強要している。アラウ(ィ)ら傀儡どもは,投票しないイラク人は毎月の食糧配給を受けられないと脅している。
ブッシュ・ギャングは,目的に達するためなら何だってやりかねない。
どんなことだって。
投票に行かなければ,政府は毎月の食糧配給をカットするということが,イラクじゅうでよく知られている。みんながこのことを話していて,みんなが信じている!!! ひどい状況にありめちゃくちゃにされたイラク人たちが何百万人と家から引っ張り出されて,爆発やら銃撃やらの中を選挙センターに行かされた大きな理由のひとつが,これなのだ。
彼らは選挙のことなどまったく気にかけていない。食べる物がほしいのだ。何百万というイラク人は,この噂が本当なのかでたらめなのかを調べることなどできる可能性もない。これは生き残れるかどうかという問題なのだ。毎月の食糧配給を受けるためには命の危険も辞さない。
シスタニの命令ですら,人々を家から出させて投票に行かせるためには十分ではない。彼らはブッシュ流の自由などほしくないのだ。
数日前,バグダードで,弟のハリードの友人が,ハリードに「行くだけ行って白票を投じてくるよ。家族の食糧配給がほしいから」と言った。今日は2度,バグダードのハリードに電話をして,どんな状況かを確認したが,僕が(アンマンで)BBCで聞いたのと同じことを弟は言っていた――2分に1度爆発があると!
ブッシュ・ギャングは,イラクでのしょうもないお芝居を完成させようと,長きにわたって欺瞞を積み重ねてきたその上にさらに嘘を積み上げようと必死である。
そして,「イラク政府」は紛らわしく誤った数字を発表している。全有権者に対する投票者の割合を発表するではなく,登録した有権者に対する投票者の割合を発表している!!!!
たとえば,ヨルダンで名前を登録したイラク人の数は,ヨルダン在住の全有権者の20パーセントに満たなかった。だから,登録した有権者の90パーセントが投票した場合,結局は投票したのは総数の18パーセントということになる……90パーセントなんてのは,人々に告げられるべき真正な数字ではない!!!!!
嘘ばっか,嘘ばっか,嘘ばっか!!!!!!!
イラク国内で発表される数字は全部うそだ。たとえば,ティクリート行政区の登録した有権者数は,全住民合計数十万人のうち2000人であり,今日1000人が投票したとして,それは投票率が50パーセントなどということにはまったくならない。
嘘ばっか,嘘ばっか,嘘ばっか!!!!!!!
イラクの偽物の政府は,今日イラク人の72パーセントが投票したと発表した。後に政府は800万人が投票したと発表したが,ということは,投票したのはおよそ56パーセントということになる。というのは,イラク国内にいる有権者の総数は1427万人だからだ。
原始的で弱体のイラク政府が,今日どれだけの人が投票に出かけたかをこんなに早く把握するなどということはありえない。これらの数字は,大げさな推測に過ぎない。
彼らはあまりにおばかさんなので計算間違いをする。
国外にいるイラク人の総数は,400万を超えている。イラク人の56パーセントが18歳以上である。【訳注:イラクで選挙権を有するのは18歳以上。】ということは,イラク国外でだいたい250万人のイラク人が有権者ということになる。そのうち投票したのは,25万人にも満たない。
驚くべきことに,単純な計算をすれば,イラク国内および国内の有権者の総数は,1675万人。そして実際に投票した人の数は,825万人にも満たない!!!!!
投票率は50パーセントに満たない。
ということは,これは法に適っていない選挙ということになる。
投票率は,選挙を法に適ったものにするには十分ではない!!!【訳注:すぐ上のリンク,http://www.globalpolicy.org/掲載の記事(元はシドニー・モーニング・ヘラルド)のタイトルのwon't beをis notに書きかえたもの。】
こんなに嘘八百並べても,人々の生存の手段を脅かしても,うまく行ったようには見えない。
:*)
アグリー・コンディ(ugly-condi:コンドリーザ・ライスのこと)がありとあらゆる放送局に「イラクの投票は予想より順調」と高らかに語っても,小ブッシュがイラクの投票のことを「圧倒的成功」と賞賛しても,世界はこの二人の,数学的に不自由な嘘つきが,自分が何のことを話しているのかをわかってないというそのさまを見なければならない。
今日の選挙は,イラクに対するブッシュの長い戦争の恥ずかしい1ページにすぎない。この選挙もまた,ブッシュと占領軍が近いうちに代償を支払うことになる過ちのひとつだったのだ。
Posted by: Raed Jarrar / 11:59 PM
*translated by: nofrills, 1 February 2005
*訳注:参考リンクなど
今回の選挙がどのように行なわれたかについて,英語ですが,クリスチャン・サイエンス・モニター紙(US)がQ&A方式でわかりやすくまとめてくれています。
http://www.christiansciencemonitor.com/2005/0128/p10s02-woiq.html
それから,Raedさんのこの記事のコメント欄で,Reiさんという方が,投票率についての報道をまとめてくれているので,それを引いておきます。I decided to dig up all of the reports that I could find on turnout. When I couldn't find a % of elligible voters for a location, I used the number of voters and assumed that only half of the residents were elligible (the "scaled" percentages)
Ansar province - "up to 10%", "over 15000" (US military). These numbers don't jive with each other, because 15000 is very different from 10%.
* Fallujah: ~7500 out of ~250,000 (3%, scaled=6%?) (same source, disputed as too high by others)
* Ramadi: ~1700 out of ~350,000 (1/2%, scaled=1%?) (same)
* Contradictory number for Ramadi: ~300 (1/10 %, scaled=1/5%?) (poll workers; Dexter Filkins, NYT)
Mosul: with 60% of presincts in, 53,000 were left (NYT). This means about 130k votes cast, in a city of
about 1,739,800 (7.5%, scaled=15%)
Irbil (Kurdish): "60%", surprisingly low ("arab satellite tv", sourced by Juan Cole)
* The Iraqi government says that the Kurdish north as a whole was around 90%, which seems contradictory
Samarra: 1400/200,000 (<1%): US military
Baji: Election officials didn't show up (Dexter Filkins, NYT)
Najaf:
* Turnout "very high" - ~80% (Iraqi government)
* "Free Republic" party complains that the ballots were modified, other relatively minor irregularities
Maysan province: 92% (Iraqi government)
Kerbala: 90% (Iraqi government)
Baghdad: 80% (Iraqi government)
* Rufasa: 65% (Iraqi government)
* Karkh: 95% (Iraqi government)
Electoral commission estimates 57% total in the country
Overseas: 280,303 registered out of 3 million elligible voters; of these, turnout averaged 94%; thus, around 260k out of 3 million voted (~9%). Only 2 million were able to register due to incomplete facilities, so of those who could vote, the number is around 13%.
Misc problems: The whole "ration card" thing
Summary: An incredible turnout in the shia areas, if you can believe the government. Same for the kurdish areas. Almost no turnout at all for the sunni areas. Pretty much what was predicted beforehand.
- Rei
# posted by Anonymous : 7:45 PM
日本語にするのは……ごめんなさい,省略。
「食糧配給カードと引き換え」というのが,本当に出された通達だったのか,あるいは噂に過ぎないものだったのかは結局わかりません。可能性として高いのは,選挙登録で国連の「オイル・フォー・フード」の食糧配給カードが使われたとのことですので,そこから話が発展してしまったんじゃないかと個人的には思います。
いずれにしても,特にこういう局面では「何が真実か」よりも「何が信じられているか」のほうが影響力というか,作用する力が大きいのではないかと思いますが。
投稿者:いけだ
2005-02-03 13:53:45
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