「なぜ発砲したの? 武器なんか持ってなかったのに」
「なぜ発砲したの? 武器なんか持ってなかったのに」
2005年1月20日
インディペンデント紙原文
タルアファル発
クリス・ホンドロス
日課となっている徒歩でのパトロールだった。我々が大通りに向かっていたとき、遠くに、我々の方に向かってくる車が見えた。自動車爆弾の可能性から身を守るために、米軍の徒歩パトロールは近づいてくる車両を停止されることが当たり前のこととなっていた。とりわけ、暗くなった後では。
「自動車爆弾がやってくる」と交差点にたどり着いたときに誰かが叫んだ。約100メートル先に車が見えた。車は近づいてきた。高いエンジン音で、スピードを緩めているというよりは速めているような音だった。50ヤード程先までせまってきていた。「車を止めろ!」と誰かが叫んだ。ほぼ同時に誰かが警告発砲のような音に聞こえた発砲を行なった----とぎれとぎれの発砲音。
車はこちらに近づいて来続けた。それから、恐らく1秒とたたないうちに、不快な発砲音が聞こえた。混乱して折り重なる騒音の発砲。車は惰性で交差点に入って来、発砲が車を貫きずたずたにしていた。ついに発砲が止まり、車は当てもなく回転した。誰もハンドルを握っていないことは明らかだった。それから縁石のところでとまった。米兵たちが用心深く車に近づいた。子どもの泣き声が車の中から聞こえた。私は車に近づいた。頭を覆った十代の少女が後部座席から現れ、泣き叫んで激しい身振りをしていた。彼女の後ろから少年が一人、座席から地上に転げ落ちた。既に血だまりが出来ていた。
「民間人だ!」と誰かが叫び、米兵たちが駆け寄った。さらに多くの子どもたち----結局全部で6人だった----が車の中から姿を現した。泣きながら、顔には長い筋となって流れる血をつけて。米兵は全員を近くの歩道に連れていった。
その頃にはほとんど真っ暗になっていた。ライフルの先についた灯りだけで、軍の医療担当が子どもたちの怪我をチェックし始めた。体を手でなぞって、傷を捜した。
信じがたいことに、怪我をしていたのは手を切った少女と背中に切り傷を負った少年だけだった。少年の傷からはひどく血が出ていたが、命にかかわるほどではなかった。医療担当者は、少年を壁に向けてかがませ、ただちに傷口を縫った。
歩道から、銃弾だらけの窓ガラスをはっきりみることができた。運転手の男性を多くの弾丸が貫いており、頭が砕けていた。体は恐ろしいまでに歪んでいた。助手席の女性も死んでいた。ムスリムの服に包まれており、見にくかった。
その間、子どもたちは嘆き叫び、壁にかたまって、傷口を縫ったり慰めようとする兵士たちに取り囲まれていた。軍の通訳は後になって私に、この人たちはトルクマンの一家で、十代の少女は「何で我々を撃ったの? 武器なんか持っていなかったのに! ただ家に帰ろうとしていただけだったのに!」と叫び続けていたという。装甲車が来て準備ができるまで待ってから、車列はタルアファルの総合病院へと向かった。
兵士と十代の姉が小さな子どもたちを運び込んだ。背中に傷を負った少年だけがさらなる処置を必要とした。軍の医療担当とイラク人医師が予後について短い話をし、少年の傷は簡単に治るだろうとの見解で一致した。軍は、恐らく全面的な調査を行うことになるだろうと私に語った。
クリス・ホンドロスはゲッツィ・イメージズの写真家で米軍に軍属している。
自動車爆弾が各地で爆発する中、あまり伝えられないけれど、やはり日常的に起きている出来事。
投稿者:益岡
2005-01-20 23:23:01
<< Home