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2005/03/22

『ラマディの狂気』――米フロリダ州国家警備隊の「不適切な」ビデオ(米PBP,3月13日など)

3月8日,BBCに,米軍が重傷を負っている収容者を蹴ったり,死体の腕を振らせたりしている様子をビデオに撮影していたという記事が出ました。

その記事によると,昨年までラマディ(ファルージャの西)にいたthe Florida National Guard(フロリダ州国家警備隊)の兵士たちが録画した映像の中に,そのような映像があった,とのこと。テープは「ラマディの狂気(Ramadi Madness)」と名づけられていて,長さは約27分。シーンごとにタイトルとかもつけられているのだそうです。3月7日にその一部(←多分)がPalm Beach Postというウェブサイト(米フロリダ州)にアップされたそうです。

軍はこのビデオについて「不適切」としながらも,犯罪ではないとしていて,軍スポークスマンは「兵士らは厳重注意を受けたはずだ(I'm sure that they were admonished)」とロイターに語っているとのこと。

なお,このビデオの存在が明らかになったのも,ACLUが告訴に際して入手した文書に書かれていたため。ACLUの代理人(弁護士)はこのビデオについて「確かに不適切ではあっても犯罪ではないシーンも含まれている。一方で犯罪であると思えるシーンも少なくない(quite a lot of)。誰も責任を問われていないのは理解しがたい」と述べています。

このビデオについて,ビデオがアップされたPalm Beach Postが13日に詳しい記事を立てていますので,それを逐語訳しておきます。また,PBPの編集長による説明も,下の方に概略で日本語にしておきます。

「ラマディの狂気」のビデオ
'Ramadi Madness': Scene by scene
By Palm Beach Post Staff Reports
Sunday, March 13, 2005
http://www.palmbeachpost.com/localnews/content/news/epaper/
2005/03/06/m16a_videoscene_0305.html


26分47秒のこのビデオは,ウエスト・パーム・ビーチに拠点を置くBravo Company, 1st Battalion, 124th Infantry Regimentのメンバーによってイラクで撮影された映像を1本にまとめたものである。各シーンには,通常任務を撮影したものもあれば心に突き刺さるような(poignant)な場面もあり,また身の毛もよだつような(macabre)場面もある。

【シーン1:タイトル「トラックの件 The Truck Incident」】
夜間,屋外。兵士たちが1台のトラックの運転席側の窓に光を当てる。運転手は死んでいる。兵士が運転手の手を動かして,「まあちょっと待て。これからこいつに『どうも』って言わせるからさ」と言っている。

【シーン2:無題】
兵士2人がビニールの手かせ紐を使って,もう1人の兵士の首を絞めているふりをしている。

【シーン3:タイトル「すばらしく優れたスキル Super Special Skills」】
昼間,屋外。腕時計で2003年9月9日火曜日であることが示される。画面の外からの声が,画面に映っている上官たちをからかっている。兵士らは友軍誤爆(friendly fire)のジョークを飛ばしている。

【シーン4:無題】
夜間,屋外。パトロール中の兵士たち。画面の外からの声が「これが私と私のチームです」と言っている。

【シーン5:タイトル「ニューマンと彼のおもちゃ Newman and His Toy」】
夜間,屋内。兵士が自分の火器をカメラに示している。

【シーン6:タイトル「ハジの猫 Haji Cat」】
夜間,屋内。兵士たちが野良猫を抱き上げる。彼らはその猫に「炭疽菌 Anthrax」という名前をつけてある。猫を抱き締めて糧食を与えている。

【シーン7:タイトル「市長の独居房での私たちの新生活 Our New Lives at the Mayor's Cell」】
昼間,屋外。兵士たちが,とあるイラクの村を車で走り抜けながらジョークを飛ばし,クラクションを鳴らしている。ひとりの兵士が「どけどけどけー,俺たちのお通りだ!」と叫んでいる。

【シーン8:無題】
昼間,屋外。ビニールの手かせをされた収容者の列が兵士たちの背後に。カメラが押収された爆発物をパンして撮影し,画面の外からの声が「悪人,悪人,悪人」と言っている。

【シーン9:タイトル「ハジ激走す,ハジ銃撃さる See Haji Run, See Haji Shot」】
昼間,屋外。建物の屋上からの撮影。下では負傷したイラク人男性が,イラク人の男性達によって,歩道から建物の中へ引っ張り込まれている。

【シーン10:無題】
昼間,屋外。ひとりの収容者が,背後で手を縛られて,地面に座っている。画面の外からの声が,「こいつが何をやりやがったかは知らんが,こいつは悪人」と言っている【訳注:元記事で一部伏字。発言主はwhat the f**kを使っているらしい】。これとは別の収容者が頭部の負傷の手当てを受けている。画面の外からの声が,「カメラに向かってにっこりして」と負傷者に言っている。少人数のグループになった兵士たちが収容者に尋問している。ひとりの兵士がその男性に立てと命令する。ひとりの兵士が男性のポケットから何かを取り出す。それが何であるのかはわからないが,それはビニール袋に入れられている。

【シーン11:無題】
昼間,屋外。兵士たちが錆びた油の缶の中に発見した,プラスチック爆薬で作られた手製のブービートラップを,カメラがパンして撮影している。

【シーン12:タイトル「血の塊 Bloodclot」】
夜間,屋外。画面の外からの声によれば,場所は標的である家屋から数ブロック離れたところである。カメラが標的である家屋の内部に入っている場面に切り替わる。拘束された人物は,銃撃を受けたと思われ,うめいている。銃を持った兵士がカメラを見つめて,「この**野郎【訳注:f-wordと思われる】,俺に向かって撃ってきた」と言う。兵士は負傷した被拘束者を蹴っているように見える。別の被拘束者はシャツを着ていない。黒いマジックペンで背中に「b2-2」と書かれている。「今回の強制捜査はうまく行った」との声。カメラは負傷した男性のところに戻り,銃創を示す。カメラが建物の中を移動して,女性たちが拘束されている場所まで行く。画面の外からの声が「悪い女ども」と言う。

【シーン13:無題】
昼間,屋内。建物の中で兵士たちがジョークを言い,ドアを蹴っている。

【シーン14:タイトル「爆発物をおもちゃにするのをほっとくのは友人ではない Friends Don't Let Friends Play with Explosives」】
夜間,屋外。カメラが焼け焦げてバラバラになった複数の死体をパンして撮影する。画面の外からの声が,「クレーターができてる」「当然の報いだ,この**野郎が」と言う。ひとりの兵士が人間の遺体を指差し,その遺体を足で蹴って地面を転がしていく。そして次のような声が入る。「あ,これって頭蓋骨の一部じゃん」,「そこで壁に叩きつけられたんだ」,「爆発物を仕掛けてたんだな。その爆発物で自分たちがやられたんだ」。最後に,カメラが別の遺体のひとかたまりにフォーカスを合わせ,「白痴の脳みそです(That's your brain on idiocy)」という声。【訳注:このidiocyは「人を軽蔑し馬鹿にするとき」のことばと判断されます。】

【シーン15:無題】
昼間,屋外。兵士たちが銃や弾薬を発見する。

【シーン16:タイトル「コペンハーゲン」】
昼間,屋外。ひとりのイラク人男性がカメラに表情を作り,噛みタバコの缶を掲げる。彼はにっこりと笑って「コペンハーゲン」と言い,噛みタバコをたっぷりと口に含む。


最後の「シーン16」の「コペンハーゲン」とは噛みタバコのブランドのことです。

タイトルがつけられているものなど13の部分のビデオ映像を,記事のページから見ることができます。

ちょっと探しづらいかもしれないので,どのリンクから見られるかを示すために,ページの一部のスクリーンショットを掲載します。記事の左側のIraq videoという見出しの下の,それぞれのシーンのタイトルをクリックしてください。再生にはQuicktimeが必要です。


また,このビデオをウェブサイトにアップロードしたことについて,Palm Beach Postの編集長が詳しく書いています(3月13日)。概略を。(正確な訳ではありません。)

3月4日に問題のビデオのことを知り,本紙は当該部隊の司令官や隊員らへの取材を開始した。問題のビデオテープはダビングされて配られていたが,昨年,兵士らが囚人虐待の可能性があるために調査があると知った時点でテープは破棄されている,と軍の調査官らには伝えられていた。しかし,本紙は土曜日に問題のテープを発見した。そのテープを所有していた兵士は,内容がとんでもないものだと感じたという。彼は本紙にテープを渡してくれた。本紙では,問題のビデオをすべて見れば,軍の調査が為された理由について,また軍があのような(=「虐待ではない」という)結論を出した理由について,本紙が説明する上で,および読者のみなさんが理解する上で,有益であろうと考えたため,ビデオをアップロードした。

本紙では,今回のビデオもアブ・グライブ刑務所での写真のような,非常に残忍で生々しい映像なのではないかと考えていた。しかし,今回のビデオはそのようなものではなかった。テレビで流されている映像と同じような映像が大半であった――囚人たちをくたびれきった表情で警備する兵士たち,当惑したり怖がったりして兵士たちに近づかないイラク人たち,ふざけ合ったり野良の動物と遊んだりしている若いアメリカ人たち,といった映像だ。

だがそのような映像ばかりではない。死んだイラク人の手を振らせ「どうもと言わせ」ようとしている兵士の映像や,兵士らが踏み込んだ建物内で捕らえられているイラク人のひとりが,負傷しているのに蹴られているらしい映像がある。爆発のあった現場でばらばらになった死体を拾い集め,爆発の威力に目を丸くしている兵士の映像もある。収録されていた音声は,全編を通して,非常に荒い言葉であった。

ビデオテープを入手していなければ,本紙は今もまだ,軍の調査への反応について書いていたであろう。しかしビデオを入手したことで,本紙は,何が録画されていたのかを伝え,それをコンテクスト上に位置づけることに取り組んだ。

言葉が非常に荒かったためにそのままではアップロードができず,また作業時間がなかったので,まずは音声を消去したものをアップロードした。(後になって問題となる言葉にビープ音をかぶせる編集を行なったものをアップロードした。)爆発の場面はあまりに凄惨であったためにカットした。

軍による調査はその日の最大のニュースであり,本紙はそれを1面トップで報じた。ビデオ全体の内容を示すためには1枚の写真では不十分であると判断し,写真は何枚か使用した。使用した写真は,死亡したイラク人トラック運転手に手を伸ばす米兵のもの,強制捜査に踏み込んだ建物内部のもの,そして拘束された人の写真2枚である。うち1枚は,傷の手当てを受けながら「カメラに向かって笑って」と言われているイラク人のもので,もう1枚は手かせをされて兵士にポケットを探られているイラク人のものだ。見出しは「国家警備隊のビデオに厳しい戦場が映されている(Guard video shows harsh war scenes)」とし,「不法ではなく『不適切』とされた行為(Behavior deemed 'inappropriate,' not illegal)」という副見出しをつけた。

中面の記事では,メインの見出しは「司令官は兵士を弁護(Commander defends soldiers)」で,副見出しには「ストレスへの対処法はそれぞれで違う(Each individual handles stress differently)」という言葉の引用が含まれている。また,負傷して手を後ろ手に縛られている男性の写真など何枚かの写真も掲載した。記事内容と写真キャプション双方に,そのイラク人が兵士を狙って発砲したことが書かれている。

週末には,拘束された人が蹴られている写真で使えるものがないかと探した。それがニュースで最も大きく伝えられていたからだ。しかしビデオの映像ではあまりに突然の動作であり,時間も短く映像もぶれていて,使える写真を取り出すのに数日を要した。何が起きたのかは判然としない。

おそらくは,軍も同様に考えたのだろう。調査官らは,問題の行為は「犯罪行為であるというよりはむしろ不適切(inappropriate rather than criminal behavior)」と考えた。

結局はどういうことなのか――記事を読み,写真を見て,ウェブサイトの映像を見ていただき,最前線の司令官や兵士のコメントを読み,そしてご自身で判断していただきたい。

読者のみなさんが考えを固めるために,十二分の情報を供給することが,我々の仕事である。

私としては,本紙はそれを正確に,フェアに,締め切り通りに行なったと考えている。本紙が示したことは,判断を示すものではない(The presentation is non-judgmental)。本紙は部隊の司令官のコメントも,ビデオ撮影担当の兵士のコメントも,ACLUの代理人(弁護士)のコメントも掲載した。おひとりおひとりにご意見がおありのことと思う。

ご意見は私までメールでお寄せいただきたい(メールアドレスはeditor@*****.com)。


※訳注:メールアドレスは元記事には明記されています。ここでは一部を伏せましたが,伏せた箇所はpbpostです。

投稿者:いけだ
2005-03-14 22:00:00