Downtown Baghdad Blues
なんとなく読んでみたアイルランドのニュースを中心に放送している米国のラジオ局のウェブログで,ニューヨークのBlack 47というバンドのDowntown Baghdad Bluesという曲を知りました。
下記URLで全曲聞けます。(曲の前後にやけに淡々としたバンド紹介などが入っています。)
http://www.npr.org/dmg/dmg.php?mediaURL=/asc/asc80/20050317_asc_03&mediaType=RM
バンドの公式サイトやamazon.co.jpでも試聴はできますが,全曲ではありません。
曲としては,アイリッシュ・トラッドがベースのロックにヒップ・ホップのスタイル――とどっかのレビューには書いてあったのだけど,ロックというよりアイリッシュ・トラッドで,声質のせいかヒップ・ホップっていうよりむしろルー・リード(笑)という感じで,非常に聞きやすいと思います。ヘッドフォンで少し音量を上げて聞くと,いろいろな音が入っているのがはっきりわかります。
このDowntown Baghdad Bluesは,今年の3月1日にリリースされたアルバムに収録されている曲で,曲名でネットで検索すると何件もレビュー記事が読めます。
曲を書いたLarry Kirwanは,「イラクにいるうちのバンドのファンの人たち(米軍兵士)からのコメントを反映した」とインタビューで言っています。
歌詞はアルバムの公式サイトで読めます。
http://www.black47.com/elvismurphy/index.htm
※Read song lyrics from the albumというところをクリックすると,小窓が出ます。
少し引いておきます:
I wish I was back in the land of Giuliani
Instead of takin' heat from Ayatollah Sistani
Don't know what I'm doin,' but one thing is clear
Twenty years old, I can kill but I can't buy a beer
Keep your head down, don't get your brain cells fried
You'll be home by Christmas - dead or alive!
シスターニにあれこれ言われてるより
ジュリアーニの街に戻りたいよ
自分でも何してんのかわかんないけど
ひとつはっきりしてんのは
僕は20歳で,
人を殺すことはできるのに
ビールは買えない
頭は上げるな,脳みそのフライはごめんだろ
クリスマスには家に戻れるさ――死体になってるかもしれないけどね
……
Shia don't like me, want Islamic Revolution
Sunni say civil war is part of the solution
Maybe someday there'll be peace in Fallujah
McDonald's on the boulevard, Cadillac cruisin'
I'm tryin' hard to keep this whole thing straight
But will someone tell me what am I doin' here in the first place?
シーア派はイスラム革命がやりたいんであって
僕のことなど嫌ってる
スンニ派は内戦もありだと言う
いつかファルージャにも平和が訪れるかもね
大通りにマクドナルドができてキャデラックが走り回る
あれもこれもとりあえず何とかするしかないわけで
けどさ,一体そもそも僕はここで何をしてるわけ?
誰か教えて
バンドについての情報:
listen.co.jp(ほとんど情報らしい情報なしですが日本語ページ)
バンド公式サイト
Black 47はニューヨークを拠点とするアイリッシュ・アメリカンのバンド。バンド名は,アイルランドのじゃがいも飢饉が最もひどかった1847年がこう呼ばれていることに由来。
ニューヨークのアイリッシュ・アメリカンというと,2001年9月11日に世界貿易センターで亡くなった消防士には,アイリッシュ・アメリカンがたくさんいました。
そして「テロとの戦い」であるとされる「イラク戦争」で,イラクに送られたアメリカ人が――アイリッシュな音楽をやってるバンドのファンだからおそらくはアイリッシュじゃないかと思うんですが―― will someone tell me what am I doin' here in the first place? と言う。
……思いつきで「アイリッシュ」をこんなふうにつないでみたのですが(「アイリッシュ」というくくり自体の使い方がうさんくさいし,だから何ら意味あるものではないし,茶飲み話にすらならないのですが),歴史は皮肉だとつぶやきたくなります。
さらに「アイリッシュ」には「IRAのテロ活動(武装闘争)」という要素があり,これについては,話をする機会のあったある英国人(保守党支持者で白人)が「WTCで死んだ消防士の多くはアイリッシュだ。そしてニューヨークのアイリッシュ・コミュニティはIRAを支持してきた。したがって彼らに自分たちはテロの犠牲者ですという顔をする資格はない」と言っていました(ものすごい三段論法)。このケースだけではなくネット上ではこれと同じような感情はしばしば見かけます。「うちらに対してテロ活動をしてきたIRAを支援していたUSAをうちらの政府が支持してうちらの国の軍隊がドンパチやってる不条理」というか。
さらにそのアイルランドに対し英国は……,ということを考え出すといつまでも終わらないので,ここらへんで終わりにします。
なお,この曲が収録されているアルバムは,アイリッシュ・アメリカンであるバンドのリーダーLarry Kirwan(文筆家でもある)の回想録と同時リリースされるものです。
アルバムのリリース元レーベルによるCDの内容紹介:
http://www.gadflyrecords.com/products/289.htm
回想録の内容紹介:
amazon.co.jp(英語のエディターレビュー)
amazon.com(ユーザーレビュー数件あり)
インタビューではthe Irish Echoのものがおもしろかったです。
あと,The Contemporary Pop Music of the Irish Diasporaという文章もあります。ここで紹介されているStiff Little Fingersというパンクバンドの代表曲に,Suspect Deviceという曲があります。その歌詞に,Their solutions are our problemsとか,They take away our freedom in the name of libertyとかいうフレーズがあります。思わず笑ってしまうくらいに「同じ」です。
投稿者:いけだ
2005-03-25 12:50:54
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