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2005/06/27

米国がイラクの反占領武装勢力と会合(英サンデー・タイムズ,26 June 2005)

米国がイラクの反占領武装勢力と秘密で接触しているとの報道が,6月最後の週末にありました。ペンタゴンも接触自体は認めたようです。以下,英サンデー・タイムズ記事と,BBCの続報など。

まず,日本語の報道記事です。
米、武装勢力と秘密会談 イラク中部で、と英紙報道

 【ロンドン26日共同】26日付の英紙サンデー・タイムズは、米政府や米軍の当局者がイラク中部バラドで今月前半、反米武装勢力の代表らと2回にわたって秘密会談を行い、武装解除の可能性などを打診していたと伝えた。
 会談に参加した武装勢力の関係者2人が同紙に明らかにした。報道が事実とすれば、好転の兆しが見えないイラクの治安情勢を打開するため、米国が軍事作戦による抑え込み一辺倒から、交渉による解決を探り始めた可能性がある。同紙によると、米国防総省はコメントを避けている。
 一方、イラクでテロを主導しているとされるザルカウィ容疑者が率いる「イラク聖戦アルカイダ組織」は参加しておらず、会談は反米武装勢力の分断を狙った動きの可能性もある。
(共同通信) - 6月26日16時47分更新


当該のサンデー・タイムズ記事:
US 'in talks with Iraq with Iraq rebels'
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2089-1669601,00.html
※ウェブ版だと全部で3ページです(page 4は追加署名のみ)。上に引いた日本語の報道記事ではわからない点が詳しく書かれています。

このサンデー・タイムズの記事はHala Jaberの署名入り(Hala Jaberは同紙の特派員。例えば,2005年1月の選挙のときの論説記事)。一読したところ,同じ筆者による「ザルカウィは今」関連報道の記事に比べ,慎重に言葉を選んでいるという印象を受けます。また,情報源の述べたことの内容にも具体性があり,例えば「ザルカウィがイランに」といった記事とはまったくトーンが違います。

なお,追加署名として,Additional reporting: Ali Rifat, Baghdad, Tony Allen-Mills, Washingtonとありますが,どちらもサンデー・タイムズの記者です。

この記事の内容については,上の日本での報道にあるようにペンタゴンはノーコメントだったのですが,記事の出た翌日の27日に,会談が行なわれた事実をラムズフェルド国防長官が認めています(→BBC記事:下の方に要旨を記しておきます)。

なお,サンデー・タイムズの情報源は,記事の第3パラグラフにある通り,「会合に出席したというイラク人1人」と,「会合に参加したグループに属するイラク人2人」(原文:..., according to an Iraqi who said that he had attended both meetings. Details provided to The Sunday Times by two Iraqi sources whose groups were involved ...)です。彼らは「過去において信頼できることが立証されている」人物であるとのことです。

以下,記事の要点。元記事とは記述内容の記載の順番が異なります。(元記事の順番どおりに要約しても,日本語ではあまりにもわかりづらいので。)

イラクの反乱者集団司令官と米国の高官4人による会合が,まずは6月3日,その次はその10日後に,バグダードの北40マイルに位置するバラド(Balad)近郊の避暑用の別荘で行なわれた。会合が行なわれる際,別荘周辺は米軍によって厳重に警備されていた。

イラク人情報源によると,会合を行なった米国の代表団は,軍の幹部と情報部の幹部,連邦議会の文民スタッフ(a civilian staffer from Congress)およびバグダードの米国大使館の代表者だった。

一方反乱勢力側からは,Ansar al-Sunna(アンサール・アル=スンナ),Islamic Army in Iraq,the Iraqi Liberation Army(イラク解放軍),Jaish Mohammed,および小規模な組織が参加した。ザルカウィのグループは参加していない。

イラク人司令官によると,米国人のひとりは「ペンタゴンの代表者」と名乗り,「双方の流血をストップするための途を見つけ,要求および不満に耳を傾ける」用意があると述べたという。また,話し合った内容はワシントンの上役に伝えると示唆したという。

その後米国側は,長い時間をかけて,反乱勢力の構造について質問を展開した。連合軍の情報は,反米勢力【かつ/または反占領勢力】には少なくとも4系統あることを把握している。すなわち,ザルカウィのジハディスト,サダム政権のメンバー,スンニ派アラブ民族主義者,および犯罪組織(criminal gangs)である。これらの集団の間の連携ははっきりしていない。米国側は「これらのグループのヒエラルキーとロジスティックスについて,どのように機能しているかについて,命令はどのように伝達されるかについて,どのように分担しているかについてなど」を質問した,と,イラク人情報源は述べている。

米国人がこれらの点について質問を行なったとき,イラク人はこれを情報を集めようとしていると見て苛立ちを見せたという。イラク人情報源のひとりは「解決策を見つけるというよりも,敵についてもっと知ろうとしているかのように,退屈な質問を連発していた」と述べる。「私たちは通訳者に,そちらがその点にこだわるのであればこちらは全員退席すると告げるように言った。」

イラク側は前もって,「米国のイラクからの撤退についての保証されたタイムテーブル」という要求に焦点を絞ることで合意していたと情報源は述べている。しかし米国側から好意的反応を得ることはなかった。おそらくは,ブッシュ大統領がタイムテーブルは示さないと明言しているためであろう。大統領もラムズフェルド国防長官も,先週,タイムテーブルを示すことは,反乱勢力を延命させると主張した【→日本語の記事】。イラクのジャファリ首相も,金曜日にホワイトハウスで首脳会談を行なった際に,タイムテーブルを示すということについて否定した。

続いて,反乱勢力は,米国の軍事占領(the American military occupation)によって引き起こされた損害を米国は補償すべきであるという要求を出した。サダムの復権を迫ったグループもあったが,これを真剣に考えている者は,イラク側でさえも他には誰もいなかった。

最初の会合(6月3日)は1時間半ほど続き,米国側がワシントンと相談しなければならないと述べたところで終わった。

なお,米国側のひとりが,米軍キャンプに拘束されているイラク人を全員解放したらその見返りとして武装解除に応じる気があるかと尋ねたとのことである。しかしイラク側は即座にタイムテーブルを示すようにという要求に戻り,この日に得られた唯一の合意点は,会合を再度行なうというものだった。

イラク人情報源によると,2度目の会合には,ほとんど知られていない反乱グループが2つ参加していたとのことである。彼らはThawarat al-Ishree【ThawaratはどうやらEruptionという意味らしいです】と,the Shoura Council of Mujahideen【Shouraは「評議会」という意味?】と紹介されたという。

この会合はうまく進まなかった。「米国側のトーンが違っていた」とイラク側当事者は述べている。「優越なのはこちらだというトーンが強くなっており,より傲慢で挑発的になっていた。」

アル=カーイダの活動について話をした後に,米国側は直截に「ザルカウィに対するサポートもロジもカバーもすべてストップ」するようイラク側に告げた。アル=カーイダとのリンクが断ち切られない限りは,米国側はイラク側の要求を話し合うつもりはない,と。

「私たちの国を守るのを助けに来てくれているムスリムであれば誰一人として,私たちは決して見捨てない,とこちらからは答えた」と(イラク側の)司令官は述べた。「それが私たちの権利(right)であり特権(prerogative)である。彼ら(=米国)が,連合軍がイラクに侵攻した際に外国と同盟を結ぶ権利があると彼らが考えたのと同じである。」

会合はまたもや齟齬をきたしたまま終わったが,双方が交渉を続けることでは一致した,とイラク人情報源は述べている。反乱勢力側は,次回の会合には国連の代表者も出席するよう要請したとしている。

なお,再三確認を求めているが,(会合が行なわれたという)イラクからの主張に対し,ペンタゴンではすぐにはコメントを出していない。(→その後認めました。後述)

この会合に先立って,イラクの元閣僚や部族指導者も参加した交渉が,何週間か重ねられてきた。この春に暴力【<日本の報道で「テロ」と言われているものを指す】が激化して以来,米国人とイラクの反乱勢力とによって互いの接点を見つけようという会合は,6月の会合が初めて。これまでにも非公式の接触は報告されていたが,目に見える進展は何ら達成していなかった。

今回のような会合はこの先も予定されている。

米軍は何ヶ月にもわたって反乱者の拠点と考えられるところに武力攻撃をしてきたが,米軍のアビザイド司令官が先週認めたように,反対者【opposition:「レジスタンス」という語は使えないのでしょう】の強さは6ヶ月前と「ほぼ同じ」であり,「反乱に対してなされるべきことがたくさんある」状態だ。イラク人情報源によると,今回の反乱勢力指導者との秘密交渉は,アビザイド司令官の言う「なされるべきこと」の一部だ。

ワシントンは,イラクで育った反対勢力を鎮め,米国に対する聖戦を戦うために流入したザルカウィ指揮下にある外国人イスラム主義戦士を孤立させる方法を,慎重に探っているようである。

イラク人情報源によると,今回の会合の準備はAyham al-Samuraiの監督下で進められた。Ayham al-Samuraiは,米国で20年間の亡命生活を送っていたスンニ派ムスリムだが,サダム・フセイン政権崩壊後にイラクに戻り,暫定政府で電気担当大臣の職に就いていた。Ayham al-Samuraiは,襲撃されることなく会合が行なわれると反乱勢力と米国の双方を説得し,双方が一切の敵対行為を行なわないことを確約し,今回の会合が実現した。

25日,バグダードの米国の広報担当者たちは,コメントはできないと述べた。al-Samuraiとは電話連絡が取れなかった。しかしこれがコンファームされれば,米国高官はこの紛争(conflict)において現状打開策を交渉しようという意思を新たに抱くようになっているということを示している。

米国の『タイム』誌は2月に,反乱勢力の代表者1名と米軍高官2名との間で会合が行なわれたと報じている。また,今月(=2005年6月)既に,仲介人を介した間接的な交渉が始まっているとの主張もなされている。当紙に情報が寄せられた会合は,双方による最初の正式な交渉であるようだ。

バグダードのイラク内務省上級スポークスマンであるDr Sabah Kathimは,両者が会っていることは認識していないが,ペンタゴンと米国務省が反乱勢力指導者と話をしたがっていたということは知っていると述べた。「米国側としては迅速に行いたいと望んでいる。当初米国は軍事作戦で勝てると考えていたが,それでは解決は得られないということを悟り,政治的決着をも考えるようになっている。」

ワシントンの専門家らは,両者の秘密接触について,意外なものではないが,両者が合意できる点があるかどうかが主要な問題だと述べている。

Globalsecurity.orgのジョン・パイク(John Pike)は「彼らが米国人をイラクから追い出したのだと主張することを可能にするような方法は,ワシントンではまず耳を傾けられることはないだろう」と述べている。「また,米国側も反乱勢力側も,自分たちが誰を相手にしているのか,確信することはできない。今回の会合により何らかの決着があると判断するには,時期尚早である。」またパイクは,米軍が恩赦に同意すれば反乱勢力は戦闘を停止すると申し出る可能性もあるが,いかなる取引であれ,監視することは難しいであろうと述べた。

また別の専門家は,イラクの部族指導者が仲立ちとなったことは,スンニ派指導者が暴力に疲れてきているが,米国の操り人形と見做されることを恐れてそれを公言できずにいるということを示している,と述べている。「直感ではあるが,部族指導者たちはプラクティカルな考え方をする。反乱はビジネス上悪影響を及ぼすと考えている。しかしそれを公言すれば頭に一発銃弾を打ち込まれるリスクを冒すことになる。」

金曜日にブッシュ大統領は「この先の道は易しい道ではないだろう」と述べたが,今回ばかりはイラクの反乱司令官もブッシュに同意している。「アメリカ人はイラクで大変な目にあっており,何とか出口を見つけようと必死だ。でなければ,『テロリスト』とレッテルを貼っている人間と交渉のテーブルにつくことなどないはずだ。」


なお,上記記事(26日のサンデー・タイムズが報じた段階)では「米国防総省はコメントを避けて」いましたが,27日(英国時間)にはラムズフェルド国防長官が交渉の事実を認めています。

BBC記事:
US holds talks with Iraq rebels
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/4624385.stm

過剰な一般化が疑われる箇所や,言葉遊びらしきものによる論旨のすり替えと思われる箇所などの「ラム爺節」満載で,読んでもわけのわからないところがありますが,要約。突拍子もないように思われる部分は原文を付記しておきます。

サンデー・タイムズの報道があった後,ラムズフェルド国防長官はイラクで米軍高官が反米(=反占領)反乱勢力指導者と交渉を行なったと述べた。

同長官は米Fox Newsに出演し,米国は常に(regularly),イラク高官と反乱勢力との間の会合【<コンテクスト上の意味が不明:原文はmeetings between Iraqi officials and insurgents】を「促進(facilitate)している」と述べた。

「反乱というものは5年,6年,8年,10年,12年続くものです。外国の軍隊はそういう反乱を鎮めるものではありません(Insurgencies tend to go on five, six, eight, 10, 12 years. Foreign forces are not going to repress that insurgency)」と同長官は述べた。「私たちは,イラクの人々とイラクの治安部隊が反乱に対して勝利できるような環境を創造していくのです。」

同長官は交渉の詳細は一切コンファームせず,その重大性を軽く扱おうとした。「私としてはそんなに重要なことだとは思いませんね。人々との会合というものは頻繁に行なわれるものです(Meetings go on frequently with people)。今回のことは度を越して注目を浴びているんじゃないですかね。」

一方,中東地域の米軍総司令官のアビザイド将軍はCBSテレビに答え,イラクの政治家と米国は,イラクのスンニ派アラブ人コミュニティと常に接触していると述べた。「スンニ派は政治的未来の一部にならなければなりません。かといって,ザルカウィやその組織に関係しているような人々と我々が話をしているということではありませんが。」

一方,アンサール・アル=スンナはそのような接触に参加したということを否定している。「アンサール・アル=スンナ軍と,いかなる十字軍もしくは背教者との間では,いかなる交渉も一切まったく行なわれていない」という,同組織の指導者によると言われる声明文がネット上で公表されている。「この国の威厳を回復できる途は唯一ジハードのみである。この威厳なくしては,この国は恥辱にまみれ敗北するであろう」と声明文にはある。

この4月に移行政府が成立して以降,1000人を超える人々が殺されており,そのほとんどはイラク人であるが,米軍の死傷者数も増えており,それをめぐる懸念は増大している。そのような中,ブッシュ大統領は火曜日にprime-time address(プライムタイムにテレビで行なう演説)を予定している。


投稿者:いけだ