イラク憲法の不法性
イラク憲法の不法性について、『ファルージャ2004年4月』著者の一人、ダール・ジャマイルが報ずる。
イラク憲法の不法性
イラクの人々は米国の憲法をめぐり投票することになる
ダール・ジャマイル
2005年10月8日
ZNet原文
イラク憲法草案作成過程に対する米国の影響は過剰で「きわめて不適切」であると、ある国連職員は言う。
「草案作成過程の最後の週に、新たに赴任した米国大使[ザルマイ・カリルザド]が自ら直接草案に大きく関与したことは周知の事実である」。国連イラク支援団の憲法支援局法律問題担当官であるジャスティン・アレクサンダーはIPS通信に対してこのように語った。「米国版の草案を少なくとも一つ回覧することさえした」。
バグダードの憲法草案プロセスを監督してきたアレクサンダーは、続けて、「この関与はきわめて不適切である。14万人もの兵士を駐留させている国にとっては」と語る。バグダードで草案作成プロセスを監督するもう一人の法律専門かザイド・アル=アリも、ロンドンで開催された現代イラク研究国際学会の会合で同様のことを述べた。
「占領者たちは、イラクの憲法草案作成プロセスに三つのやり方で介入した」と彼は言う。「第一に、イラクの暫定法と憲法の草案にあたる評議会を選び、その構成に影響を与えた。第二に、占領軍が、憲法草案作成にあたり制限と制約を課した。第三に、占領当局は憲法草案交渉の中で自分たちの利益を守るために直接介入した」。
アル=アリは、憲法草案の中で、最終草案から、外国の軍事基地に関する条項が削除されたことは重要であると語る。「以前の草案では、条項の一つで、イラクに外国の軍事基地を設置することは禁止すると述べられていた。それを覆すことのできる唯一の方法は、議会で3分の2の賛成を得たときだけとなっていた」。
シーア派聖職者ムクタダ・アル=サドル師は、スンニ派のムスリム法学者協会とシーア派の大きな運動が連合して、憲法草案と「占領者とその協力者により勧められている政治プロセス」を却下するだろうと語っている。
このグループはメディアに対する声明の中で、次のように述べている。「我々は、この草案を、人々の意志を反映していないプロセスの次のステップにすぎないと考えている」。この連合はまた、「国民投票が誠実に行われるかどうかについて大きな懐疑」を示している。この「投票は、占領下で行われ、国際的な監視も、アラブ世界やイスラム世界による監視もないから」である。
ロンドン大学教授マリノス・ディアマンティデス博士は、国際法に照らせば、憲法草案作成プロセス全体が違法である可能性がると指摘している。
「草案作成プロセス全体が法に反していると論ずることができる」とディアマンティデスはIPSに語った。1907年の紛争の平和的解決に関する条約によると、占領者は占領している国の法体系を維持する義務がある。占領社たちが占領している国の国内法体系を買いたいしたのは、これが歴史上最初のことである」。
彼はまた、皮肉にもスンニ派が予定されている投票を3つの規定における3分の2の投票条項により脱線させる力を持っていることを指摘する。この力はもともとクルド人に憲法を拒否する力を与えることを意図したものだった。
クルド人とシーア派が支配しているイラク国会で草案が承認されたとき、スンニ派はただちに、10月に予定されている国民投票で「否」の投票をするキャンペーンを開始した。草案が国民投票を通過すれば、その2カ月後に新政府の選挙が行われる。
少なくとも4つの州ではスンニ派が多数派で、スンニ派の聖職者たちは信者にスンニ派の要求が通らなければ草案を拒否するよう呼びかけている。
また、経済制裁下でイラクの国連人道調整官をしていたデニス・ハリデーは、国連さえも占領下イラクで何の地位も持っていないと指摘する。これは、すでに混乱している状況をさらに複雑にするものである。
「国連は今日のイラクに居場所を持っていない」とハリデーはIPSに語った。「侵略が始まったとき、国連は敵[米国]に協力する者となった」と。
「ジェノサイド的経済制裁」に抗議して国連の職を辞任したハリデーはさらに、「2004年8月、国連が侵略者に協力していたためにバグダードの国連事務所が爆破されたときに、この教訓を学ぶべきであった。国連は米国の道具に堕しており、イラクの人々は米国と国連をもはや区別できない」と述べる。
ジャスティン・アレクサンダーは、イラクには新たな憲法が必要かも知れないと語る。「イラクに進歩的で効果的な憲法とそれを実施する法律ができれば、イラクの人々の利益となるだろう。けれども和解もなく占領も終わっていないなかでの憲法は全く不毛だ」。
本記事のオリジナルはwww.upsidedownworld.orgに掲載された。
投稿者:益岡