2004年4月と11月にファルージャに対して用いられた兵器
以下、その情報を含むウェブログthe Cat's Blogのエントリを日本語にします。なお、the Cat's Blogは、先日「BBCの記事見出しが「化学兵器」から「焼夷兵器」にサシカエになった件」で参照したウェブログです。
また、The Cat's Blogは「クリエイティヴ・コモンズ」のライセンスで公開されているので、日本語化文書も「クリエイティヴ・コモンズ」ライセンスにしておきますが(つまり、非営利なら自由に転載や再配布できます。原著者クレジットをつけてください)、日本語化が中途半端だし、誤訳などがある可能性がいつにもまして高いので(兵器関連が特に)、それらの修正ができる方は、再配布の前に修正をしてください。(できればコメント欄かメールでご指摘をいただければ当方でも修正できますので、助かります。)
以下、クリエイティヴ・コモンズのライセンスで公開します。
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Wednesday, November 09, 2005
BBC and Fallujah: War Crimes, Lies and Omerta
By Gabriele Zamparini
http://www.thecatsdream.com/blog/2005/11/bbc-and-fallujah-war-crimes-lies-and.htm
今朝(2005年11月9日水曜日)のBBC NEWSのウェブサイトには、「米国がイラクで『焼夷兵器を使用』というタイトルの記事があり、そこには今でもこう書かれている:
イタリア国営のRAIテレビが、イラクの都市ファルージャで一般市民に向けて白燐(黄燐)爆弾を使用したとして米軍を非難する内容のドキュメンタリーを放送した。
RAIテレビは、これらの爆弾は焼夷兵器であると考えられているにせよ、米軍が使用したことは、化学兵器の不法な使用に相当する、と述べている。
(番組では)目撃者や元米兵らが、反乱勢力が支配するその都市(=ファルージャ)の建て込んだエリアで白燐爆弾が使用された、と述べている。
米軍はこれを否定しているが、イラクで戦場を照らすために白燐爆弾を使用したことは認めている。
BBC NEWSは、白燐は化学兵器であるということを否認している(記事には「これらの爆弾は焼夷兵器であると考えられているにせよ」とあり、私へのメールには「白燐は化学兵器ではない」と書かれていた)のだが、BBC NEWSは間違っており(→関連する日本語記事)、その理由については昨日書いた通りだ。
国際法によれば、人間または動物を傷つけたり殺したりするために用いられる化学物質はいかなるものであれ、化学兵器であるとみなされる。化学兵器禁止機関(Organization for the Prohibition of Chemical Weapons)のピーター・カイザー氏(Peter Kaiser)の言葉を借りれば:
「人間に向けて、あるいは動物に向けて使用され、その毒性によって危害を加えたりもしくは死をもたらす化学物質はいかなるものであれ、化学兵器であるとみなされる。そして、危害を加えることが目的である限りは、禁止行為である。」(カイザー氏の発言は、RAIニュースのこのページの右下の画像の下にあるPlayをクリックすれば、聞くことができる。)
BBC NEWSの記事は次のように続いている:
米軍はこれを否定しているが、イラクで戦場を照らすために白燐爆弾を使用したことは認めている。
この申し立てについて、米国政府はこれまでにも否定してきた。「米国はファルージャで『不法な』兵器を使ったのか?――米国がイラクでの戦闘中に違法とされている兵器を使用したとマスコミは主張しているが」と題する記事(→関連する日本語記事)で、米国務省は次のように書いている:
最後に、新たに米軍がファルージャにおいて、「違法とされている」白燐砲弾を使用しているという報道があるが、白燐砲弾は違法ではない。米軍は白燐砲弾をファルージャにおいて、極めて慎重に使用している。その目的は照明である。白燐砲弾は、夜間の敵の位置を照らし出すために空中に向けて発射され、敵の戦闘員に対して発射されているのではない。
米軍がファルージャで「違法な」兵器を用いているという誤った情報は、自己増殖しつつ大量に出回っている。事実としては、米軍はファルージャでもイラクのどこでも、違法な兵器を用いてはいない。
(2004年12月9日作成、2005年1月27日更新)
戦争犯罪や大量殺人についての真実が、そういった人道に反する罪を犯しているとして非難されている当事者から語られることなど、もちろん、誰も期待しないだろう。いや、BBCやマスコミのほとんどを除いては誰も、だ。そしてもちろん誰でも、軍や政府の情報に対し懐疑的で、調査に調査を重ねることを目的とした、独立した嘘のない情報を求めている。BBCやマスコミのほとんどを除いては誰もが。
彼らはインディペンデントなジャーナリズムを信じていない。インディペンデントな情報源を信用していない。彼らは、自分たちの仕事が真実を発見すること、調査すること、公的な説明を問うことだとは思っていない。彼らは輝かしいキャリアのために、そして――ノーム・チョムスキーが最近発言したとおり――「ちゃんとしたディナーの席に招待される程度にはみっともなくないようにするために」、魂を売り渡した。
というところで問題です。BBC(とマスコミのほとんど)が信用しているのが軍の情報筋だけだとすれば、マスコミには軍の情報筋があるということですね。ではこちらを見てみましょう。米軍の「Field Artillery Magazine」(注:リンク先はPDFファイル。誌名は「隔月刊 野戦砲兵隊」という雰囲気か)からの抜粋:
9.弾薬
この戦闘にわが軍が持ちこんだ弾薬は、155ミリ高性能(highexplosive)M107砲弾(短射程距離)*1と、M795砲弾(長射程)、照明弾と白燐(WP、M110砲弾とM825)で、信管*2はpoint-detonating (PD)信管、延期信管(delay)*3、時限信管(time)、近接信管(variable-time: VT)である。……白燐(WP)。WPは効果的で多用途の軍需品であることがわかっている。われわれは白燐を、two breeches(訳注:同じ文書にbreeching minefieldsなどとあるが訳語が不明)での煙幕を張る任務で使用し、また、後の戦闘では、塹壕線や偽装蛸壺に潜んでいる反乱勢力に対し、HE(high explosives:高性能爆弾)では効果が見られない場合に、効果的な心理兵器として使用した。われわれは反乱勢力に対し、『シェイク・アンド・ベイク(shake and bake)*4』ミッションを行い、反乱勢力が潜んでいる場所から出てこさせるためにWPを使った。……HC(Hexachloroethane Zinc:ヘキサクロロエタン亜鉛)の煙の方がより有効であろうという場合にも、煙幕を張るためにはimproved WPを用い、WPは致死性のミッションに備えて取っておいた。
上記の情報源:
THE FIGHT FOR FALLUJAH - TF 2-2 IN FSE AAR: Indirect Fires in the Battle of Fallujah By Captain James T. Cobb, First Lieutenant Christopher A. LaCour and Sergeant First Class William H. Hight
情報源についてさらに詳しく:(上に名前が出ている人々の略歴)
ジェイムズ・T(トム)・コッブ大尉は、第1歩兵師団第6砲兵隊第1分隊(1-6 FA)所属である。コッブ大尉は、ファルージャの戦いを含めたイラクの自由作戦IIにおいて、第2歩兵師団タスクフォース第2分隊(TF 2-2 IN)でFire Support Officerとして任務に就いた。大尉はまた、コソヴォ・フォース(KFOR)4Bにも派遣されている。
【……以下、すみませんが、日本語にするのに時間ばかりかかってしまうので、当面英語のままで。】
First Lieutenant Christopher A. LaCour, assigned to 1-6 FA, has been the Targeting Officer for TF 2-2 IN in OIF II, including during the Battle of Fallujah. Also in OIF II, he was a Platoon Leader for 2/C/1-6 FA and, previously, a Fire Direction Officer in the same battery.
Sergeant First Class William H. Hight, also assigned to 1-6 FA, has been TF 2-2 IN’s Fire Support NCO since September 2003, deploying in OIF II and fighting in the Battle of Fallujah. He also deployed to Bosnia as part of the Implementation Force (IFOR) and to Kosovo as part of KFOR 4B.
『ノース・カウンティ・タイムズ』のダリン・モーテンソン記者が2004年4月に書いた記事をご参照いただきたい。
距離を置いたところからの戦闘
数日間にわたって市内のいくつかの地域を爆撃したのに、最近の戦闘は予定していたよりも激しいものになっている、と多くの海兵隊員が言う。しかし手に負えないほどのものではない、と。
「戦争なんだ」とニコラス・ボガート伍長(22歳、ニューヨーク州モリス出身)は言う。
ボガート伍長は迫撃砲チームのリーダーである。金曜日と土曜日にファルージャに高性能爆弾と白燐爆弾を次々と発射するよう部下たちを指揮した。標的が何であるのか、砲撃の結果として起きる爆発でどのようなダメージがあるのかについては何も知らずに。
「ここに来る前に、こういった治安・安定化作戦(security and stabilization operations: SASO)の訓練は受けていたが」と伍長は言う。「そしたらこれが本当の戦争になってしまった。」
土曜日、伍長のチームがパックされた朝食を食べ始めたところで、無線で砲撃の命を受けた。
「スタンバイ!」と伍長は叫び、下士官のジョナサン・アレクサンダーとジョナサン・ミリキンにスクランブル体勢を取らせた。
シェイク&ベイク
数秒前は学生のように冗談を言ってからかい合っていたのに、彼らは瞬時にして真顔になった。自陣と標的との間に友軍の海兵隊がいる。万が一のことがあれば大変なことになる。
ボガート伍長が標的の座標を受け取り、地図にそれを書きつけて、チームが「サラ・リー(Sarah Lee)」と呼んでいる大砲のセッティングを大声で叫ぶ。
ミリキン(21歳でネヴァダ州リーノ出身)とアレクサンダー(23歳でアラバマ州Wetumpka出身)が迅速に調整を行った。得意分野の仕事なのだ。
数秒で準備が完了すると、近くにある弾薬の缶から白燐砲弾をつかみ、ミリキンが「砲身を上げろ」と叫んだ。
ミリキンが砲弾を落とすと、ボガート伍長が「発射!」と叫んだ。
連続して何発も発射され、衝撃でピットの周りに砂埃が立つ。彼らは発火した白燐と高性能爆薬の混合したものを「シェイク&ベイク」と呼んでいる。それが一群の建物の中に送られる。反乱勢力がそこにこもっていることが突き止められていた。
中断した朝食に戻り、いつもどおりの爆笑ものの悪口大会を続けながら、彼らは、砲撃した対象は見ていないし、その話もしない、と言う。
(from VIOLENCE SUBSIDES FOR MARINES IN FALLUJAH by DARRIN MORTENSON, North County Times, Saturday, April 10, 2004)
メインストリームのメディアの沈黙と嘘の結果が、戦争犯罪と人道に反する罪だ。イラク戦争は嘘で始まり、嘘によって継続されている。私たちはナチスの戦犯の裁判で用いられた言葉を忘れてはならない:
「したがって、侵略戦争を始めることは、国際犯罪であるばかりではない。それはそれ以上はないほど重大な国際犯罪である。そのほかの戦争犯罪と異なるのはただ1点、侵略戦争を始めることはそれ自体に、すべての悪を蓄積させているということだけだ。」――ドイツ重大戦犯を裁く国際軍事法廷、1946年、ニュルンベルク
今やこれは私たちの問題だ……。
ガブリエル・ザンパリーニ
Gabriele Zamparini
※この記事で使った重要な情報は、マーク・クラフトが教えてくれました。感謝します。
posted by The Cat's Dream at 12:32 PM
【参考資料】
*1「M107砲弾」
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/m107.htm
*2「信管」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E7%AE%A1
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/fuze.htm
http://www.geocities.jp/aobamil/Sagyou.html#信管
*3「延期信管」
http://www.geocities.jp/aobamil/Sagyou.html#%89%84%8A%FA%90M%8A%C7
*4「Shake and Bake」
こういう名称の、日本で言えば「てんぷら粉ミックス」のような商品がアメリカにある。肉に衣をつけて焼く料理の衣用の粉(小麦粉とベーキングパウダーと調味料と……)で、その粉と肉をビニール袋に入れてぶんぶん振り回して焼くだけで料理ができるので、「振って焼く」という名称であるらしい。(→他人様のサイトの写真)
――参考にさせていただいた各サイト作成者の皆様にお礼申し上げます(訳者)。
【このテクストはクリエイティヴ・コモンズのライセンスで転載可です】
帰属(原著作者):Gabriele Zamparini (The Cat's Dream)
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投稿者:いけだ