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2006/04/19

「イラク人を殺す10の理由」 by Brian Whitaker

2004年から現在までの具体的事例を短時間で振り返るのによい記事がありました。ガーディアンのComment is free ... (but facts are sacred) という、ブログ形式での論説記事集のページから。

記事を書いたブライアン・ウィテカーは、ガーディアンの中東部門のエディターです。「中東情報リンク集」のようなサイトを運営してもいます。(詳細は下記の名前のところをクリックしてください。)

イラク人を殺す10の理由
Ten reasons to kill an Iraqi
April 18, 2006 04:07 PM
Brian Whitaker
http://commentisfree.guardian.co.uk/brian_whitaker/
2006/04/ten_reasons_to_kill_an_iraqi.html


1. その人物がスンニ派だから。

2. その人物がシーア派だから。

3. その人物がクリスチャンだから。

4. その人物が警官だから。

5. その人物は教育省の役人だから。

6. その人物が大学で教えているから。

7. その人物が理容師で、散髪のやり方が気に食わないから。

8. その人物はゲイかもしれないから。

9. その人物のファーストネームが気に入らないから。

10. その人物がパンを買いに出かけたから。


【ブライアン・ウィテカーがリンクしている記事の簡単な説明】
1.「スンニ派」
→ Iraq Sunni party workers killed, Friday, 19 August 2005, 17:14 GMT
(モスルでスンニ派の「イラク・イスラム党」の党員3人が拉致され銃殺された。この前の日にはラマディで会議中のスンニ派指導者たちが襲撃され、数人が負傷した。)

2.「シーア派」
→ Dozens die in Iraq mosque attack, Friday, 7 April 2006, 17:55 GMT
(金曜礼拝のバグダードで最も重要なシーア派モスクに自爆者が3人。85人死亡、160人負傷。)

3.「クリスチャン」
→ Twelve killed as bombers attack Christians in Iraq, Monday August 2, 2004
(バグダードとモスルで、日曜の夕方の礼拝の教会に自動車爆弾。初期段階で確認できているだけでバグダードで死者11人、負傷者50人超。モスルで死者1人、負傷者11人。)

4.「警官」
→ 9 Killed in Attack on Iraq Police Convoy, Friday April 14, 2006
(タジの米軍基地で新たな車両を受け取ってナジャフに向かう警察の車列を反乱者が攻撃。9人死亡、数十人の安否不明。)

5.「教育省の役人」
→ Public servants pay the extremists' price, June 14, 2004
(出勤しようと家を出た教育省の部長をガンマンが襲撃、部長は病院に搬送されるも死亡。前日には外務省の事務次官が襲撃され死亡。)

6.「大学の先生」
→ Academics become casualties of Iraq War, Mar 9, 2006
(2003年の侵略開始からこれまでに殺害された大学教授や学識者は182人、との調査結果。拉致されたり殺されそうになったのは、この182人とは別に、85人。)

7.「理容師」
→ A Haircut in Iraq Can Be the Death of the Barber, March 18, 2005
(バグダードで、切ってもらった髪が気に入らないと、ガンマンが覆面をして店に戻って発砲、理容師とその妻、客1人が死亡。)

8.「ゲイ」
→ Death squads targeting gays in Iraq, 03/25/06-03/27/06
(先日BBCの記事を紹介しましたが、ここでブライアン・ウィテカーがリンクしている記事はゲイ・ライツ運動の情報誌Advocateの記事で、民兵組織がゲイの男性たちをいかにして「標的にする」のかなどの詳細が書かれている。)

9.「ファーストネーム」
→ Killed for the sake of a name, 02 April 2006
(バグダードで発見された14体の若い男性の銃殺体、全員の胸にきちんと置かれたIDカードで、全員がスンニ派の偉人にちなんだ「オマール」という名前であることが一目瞭然。)

10.「パンを買いに」
→ Nine die in Baghdad bakery attack, Friday, 11 February, 2005
(バグダードのシーア派・スンニ派の混ざり合った地域のパン屋で、覆面をしたガンマンが乱射、9人死亡。)

*****

ブライアン・ウィテカーのこの「10の理由」は、「セクタリアン・ディヴァイド(sectarian divide)」なるもののばかばかしさ(それはばかばかしいだけに恐ろしいものでもありますが)に焦点が当てられています。

だから、これら10の項目からすっかり抜け落ちているものがあります。「包囲した都市の市街にいたから」「男性だから」「それっぽく見えたから」「こっちに歩いてきたから」「あんなところに立っていやがったから」「アメリカ人の身体言語を理解せず停止しなかったから」「ザルカウィの隠れ家だと確実な情報のもたらされた家にいたから」など。「夜、家で寝ていたから」「車を運転して帰宅しようとしていたから」ってのもあるかもしれませんね。

あ、「そっちはどうだか知らんが、こっちが誤ったから(mistake)」が一番多いかも。


投稿者:いけだ

バグダード、アダミヤ地区で戦闘

バグダードのアダミヤ地区(アブ・ハニファ・モスクなどのあるスンニ派のエリア)が米軍とイラク軍によって封鎖され、激しい戦闘が続いている。ブロガーのZeyadがアダミヤにいる。

報道記事は下記URL(はてなブックマーク)にクリッピングしてある。
http://b.hatena.ne.jp/nofrills/Adhamiya%20April%202006/

これを詳細に報じているのはアメリカのメディアがほとんどで、英国のメディアではスコットランドのヘラルドやスコッツマン、およびFTのみで、全国紙は報じていない。(<私が確認した時点では。)

そのヘラルドは、Ethnic cleansing fears fuel clashes in Baghdadという見出しの記事で、この戦闘のことを次のように伝えている。

Yesterday's exchanges left two gunmen dead and six people, including civilians, wounded. At least five insurgents died and two Iraqi troops were hurt in fighting on Monday.

US officials said the gunmen were insurgents, but residents said the gunmen were locals who feared Iraqi troops were working with Shi'ite death squads to kidnap and kill Sunnis.

昨日(=火曜)の交戦で2名のガンマンが死亡、一般市民を含む6名が負傷した。月曜日の交戦では少なくとも5名の反乱者が死亡し、イラク兵2名が負傷している。

米軍将校はガンマンは反乱者だとしているが、住民たちはガンマンは地元住民で、イラク軍がシーア派の死の部隊と共同してスンニ派を誘拐したり殺害したりするのではないかと考えた者たちだと語る。


BBCは、1日前の「バグダードでまた射殺体」という記事の見出しを「米軍がバグダードの戦闘に」と書き換え、内容も「また射殺体」の記事のトップに「バグダードの戦闘」を書き加えて全体を整えている。(まさかあの記事がこういうふうに書き換えられるとは。)

日本のメディアは伝えていない。Yahoo(下記キャプチャ)のほかにasahi.comも見たが、どこも伝えていない。

19april_news1
※これで最大サイズです。文字が読みづらくてすみません。

私のRSSリーダーに登録してある70件ほどのイラクのブログのうち、今回のアダミヤ封鎖攻撃について書いているのは、今のところ2人:

1)http://truth-about-iraqis.blogspot.com/2006/04/...
the Truth about Iraqisは17日から18日にかけて(日本時間:彼のブログの表示時刻はアメリカ時間だと思う)西側の報道記事をベースに何本か記事を書いている。

2)http://healingiraq.blogspot.com/archives/2006_04_01_...
イラク・ブロガーの最古参組のひとり、Healing IraqのZeyadが、アダミヤ地区にいる。彼の記事を要旨だけ。

おばを訪ねてアダミヤに来たのだが、日曜日の夜から動きが取れなくなってしまっている。ニュースで報じられていると思うが、日曜日の夜、アダミヤでは激しい戦闘が起きた。これは、警官の制服を着て武装した集団(アダミヤ地区に入ろうとしていた)と、アダミヤの住民との間の戦闘だった。

アダミヤ地区は封鎖されていて、誰もこの地域から出たり、この地域に入ったりすることができない。この48時間、電気は通じたり通じなかったりだ。うちの発電機は、今朝の戦闘でひどくやられてしまった。

ダイヤルアップでつないでいるのでつなぎっぱなしにはできない。明日の夜まではブログの更新はできないと思う。明日の夜までには何とか落ち着いてくれればと思うのだが、現在は非常に緊迫している。

posted by Zeyad : 4/18/2006 11:59:00 PM


以上、取り急ぎ。

投稿者:いけだ

追記:
Nabil(薬学部の大学1年生)もアダミヤにいるような雰囲気。日付がずれている(18日の投稿で、「おととい」が15日だ)のは、単にブログの表示時間が米国時間になっているせいかもしれないのだが、停電やタイプする時間や気力がなかったなどの事情なのかもしれない。そこまではわからない。

*要旨

家から出られなくなって2日になる。おととい(土曜日)の夜11:30ごろに就寝したのだけれど、午前1:00ごろに銃弾の音で目が覚めてしまった。銃撃はとても激しかった。道路を渡るときに空に向けて撃っているから、ING(イラク国家警備隊)ではないかと思った。それはその通りだったのだけれども、INGは道路を渡っているのではなかった。道路に陣取っていたのだ。INGとレジスタンスの戦争に違いないと思ったのだけれど、銃撃の音から考えると、彼らはどこか他の場所を撃っている。戦争なんかじゃない・・・彼らは人々を、通りに並ぶ商店を撃っている。電線の鉄塔を撃ち、電話線を撃っている。標的などない。目に入るものなら何でも、彼らは撃っている。なぜそんなことをしたのか、今もわからない・・・。

でもとにかく、彼らはこの地区を破壊するためだけにそうしたのはわかる。卑しい連中。これは怠惰な政府の責任だ。政治家という政治家はみなろくでもない連中ばかり。議員の座を争うだけで、イラクの人々のことなど気にかけていない。この国は破壊されてて、こんなところで生きてくなんて無理。

posted by Nabil @ 10:28 PM
Tuesday, April 18, 2006


追記2(19日午後7時ごろ):
Baghdad Treasureが、April 17, 2006 at 10:31 AMのポストと、April 18, 2006 at 12:00 PMのポストにアダミヤのことを書いていました。RSSの読み込みがうまく行っていなかったのか、私が見落としたか。。。

***17日のポストの要旨***

昨晩も眠れなかった。暑いのに電気がないから扇風機なしで。いや、眠れなかったのは扱ったからではなく、アダミヤの中心部で衝突が起きたからだ。いつもとは違って、絶え間なく続く銃声、しかも重い爆発音までしている。戦闘が始まったのは深夜1時ごろだった。幸いなことに僕の住んでいる地域は離れているので今こうしてブログを書けているけれど、今この瞬間まで、衝突はまったく止まらない。仕事に出かけるときにもかなりこわかった。母は会社に電話してお休みしなさいと言う。父は回り道をしていけと言う。結局何とかなったけれど、それでも恐ろしい状況であることに変わりはない。近所の人たちの中には子供に学校を休ませた人もいる。アダミヤの親戚から、一帯が封鎖されたよと電話がかかってきたと言う人もいる。

8時に会社に着いて、まさに戦闘が勃発した地域に住んでいる友人に何とか連絡を取ろうとしたが、固定電話もだめだし携帯も回線がダメでつながらない。午後2時になってようやく固定電話で連絡が取れた。「いやーひどい夜だった! 戦争中でもあんなことはなかった。」声の様子から、彼も家族も一睡もしていないようだ。爆発音が聞こえてくると次々と部屋を移って回ったという。「隣の家に迫撃砲が落ちた。幸いなことに家族は全員無事だったのだけど、うちにも迫撃砲が来るかもと思うと。」

アダミヤの住民はほとんどがスンニ派で、サマラのアスカリ聖廟の爆破のあと、住民たちが武器をとって地域を守るようになった。内務省の治安部隊もアダミヤの中には入れない。入れるのはイラク軍だけだ。内務省に属していると言われる死の部隊が入ってきたら、シーア派住民を誘拐したり殺したりするのではないかと考えているのだ。ちょうどバグダード西部のスンニ派地域で起きていたように。アダミヤでは反乱者と住民たちが軍と話をつけた。むちゃくちゃに襲わない限りは自警は自由にしてよいということになった。

「つまり、住民はまずは武装集団に対して戦った。イラク軍が銃声を聞いて駆けつけ、軍が武装集団と戦った。そのころには住民たちは家に入り、米軍がイラク軍の要請で後援に入った」というのが友人の話である。

住民たちはこわくて外には出られないし、状況がどうなっているのかもわからない。「中心部の通りで何体かの死体を見たという友人が何人かいる。武装集団の死体だったという話だ。」

APの報道では、一般市民が少なくとも1人死亡し、7人が負傷している。

この数週間、バグダードでは反乱者の活動が活発化している。政治家は地位を争うばかりで、今日予定されていた国会も流れた。毎日何十人というイラク人が自動車爆弾やら路肩爆弾やらで殺されている。1日に少なくとも5人、関係のない人が死体になって発見されている。

今週、バグダードは世界で3番目にQoLが低い都市だという報道をバグダードの新聞で読んで、気分がへこんだ。【IRINでは「最悪」と書かれていますが、同じMHRCによる調査です。】

しかし今朝のサンデー・タイムズの報道には笑い死にするかと思った。今タイプしながらまだ笑ってるくらいだ。「米軍は、新政府が発足したら、イラク軍と合同で『第二次バグダード解放』を計画している」っていうんだから。マジで笑えるでしょ。イラクが完全に「解放される」まで、連続シリーズで「解放」してやるのでイラク人も楽しいだろう、ということですか、そうですか。次は誰の彫像を引っ張り倒すつもりだろう。サダムの後に据え付けられたハキムのか。

***18日のポストの要旨***

今朝、目覚まし時計ではなく銃声と爆発音で目が覚めたのだが別に珍しいことでもなし、シャワーを浴びて朝食を取った。銃声と、レバノンの歌姫Fayrouzの歌声のミックスがBGM。母はいつものごとく仕事に行くなと言う、僕はいつものごとく、いや行くと言う。家を出たときにはまだ激しい銃声がしていた。

昨晩は静かだったのに、今朝7時ごろに衝突が発生した。アダミヤの近くの地区の政府機関に勤めている友人は、出勤途中にクフィーヤをまいてRPGを持った男を見た、2人はいたと言う。血まみれの死体が乗せられた警察のピックアップも3台見たと言う。警官の制服を着た死体もあれば、冬用の毛布にくるまれた死体もあった、と。

アダミヤ近くのNidaモスクのあたりに住んでいる別の友人からたった今メールが来た。「うちのへんでは朝から今までずっと激しい銃声がしている。いまも離れたところで銃声がしているし、サイレンがわんわん鳴ってる。音から判断すると、あれは大口径マシンガンだろう。」

また何かあれば更新します。


一方で、このエントリのコメント、4/19/2006 12:12 PMによると

おかげさまでアダミヤはもう大丈夫。今朝電話をした友人は仕事に出かける途中だったし、道路の封鎖も解除され、外出禁止令も解除されている。今朝は子供たちも登校した。


……というわけで、アダミヤはもう落ちついたようです。

Zeyad(healingiraq.blogspot.com)の更新はまだですが、さっきまであったコメント欄が消えた、と思ったら現れた、ということがつい2分ほど前にあったので、設定を触ってるのかな、とにかく彼も無事だろうと思います。

Nabilの更新もまだですが、家の外に出た様子はないし、無事でいることと信じています。

一方で、アダミヤ封鎖と同時に報じられたラマディ攻撃ですが、私もいっぱいいっぱいで記事は拾えていません。

北米のブロガー、Madtomさんがラマディについてのボストン・グローブの記事を紹介しているので、ご参照ください。
http://thisfuckingwar.blogspot.com/2006/04/marines-repel-assault-in-iraq.html

どうやら、ラマディにいる米軍の部隊のご家族・ご友人にも状況が伝わっておらず、みなが情報を探して必死になっているようです。

イラクの同性愛者たちは今。

このことが大メディアの記事で取り上げられたのは初めてかもしれません。(個人のブログでは関連する記述があったかもしれないけれども。)BBC、4月17日付け。

Gays in Iraq fear for their lives
By Michael McDonough
http://news.bbc.co.uk/2/hi/middle_east/4915172.stm

*要旨

「もうゲイであることがいやになりました。パンを買いに出ると怖いと思うし、ドアベルが鳴れば僕をやりにきたのだと思うのです」と語るフセインさんの抱く恐怖は、イラクの男性同性愛者たちに共通したものである。

米国主導の侵略以降、男性同性愛者たちはその性的指向ゆえに殺されている、と彼らは言う。サダム・フセインが政権を追われて以降、暴力が増大し、宗教指導者や民兵組織が影響力を増しているためだと。

イスラームでは同性愛を罪(sinful)と考える。シーア派のアヤトラ、シスタニ師の名前で運営されているウェブサイトには、同性愛者は死刑にすべきとある。モラルの問題を扱ったコーナーに「ソドミーを行なうものは、最も苛烈なる方法で殺されるべきである」と書かれているのだ。サイトの英語版にはこの記述はない。イランのクオム(Qom)で制作されているアラビア語版に書かれているのだ。

BBCではシスタニ師の代理人のセイエド・カシュミリ(Seyed Kashmiri)に説明を求めた。メールでの回答には「男性同性愛者も女性同性愛者も、行為1度だけで殺されるというわけではない。この刑罰が行なわれる際には法学者が判断する。おそらくほかの宗教(heavenly religions)でも同様であろうが、法学者の判断は神学に基づいてなされる」とあった。

イラクでは殺害や誘拐が広がっていて、流血の多くが宗派間の緊張や反米反乱と関係している。しかしBBCの取材に応じたイラクの同性愛者たちは、性的指向のために標的にされているのだ、と語る。

フセインさんは32歳で、兄と兄嫁と姪たちと一緒にバグダードに暮らしている。女性っぽい外見と立ち居振る舞いは人目を引き、敵意を呼ぶのだと彼は言う。本名を使わないことを条件にBBCの取材に応じたフセインさんは、「兄の友人たちが『今の混乱した状況なら弟を殺しても報復されることはない。そうすれば恥をさらさなくてもよくなる』と兄に言ったそうです」と語る。フセインさんの友人でトランスセクシャルのディナさん(元の名前はハイダーさん)は、6ヶ月ほど前にバグダードでパーティへ向かう途中で殺されたそうだ。

アハメドさんは31歳で内装工。以前はバグダード市内でボーイフレンドのマージンさんと暮らしていた。そのマージンさんがジムの建物の外で射殺され、アハメドさんはヨルダンに逃げた。9ヶ月前のことだ。

ふたりがカップルであることはよく知られていた。マージンさんはセクシャリティのために標的にされたのだ、とアハメドさんは言う。「私はゲイで、そのために生命に危険がある。だからイラクから逃げてきたのです」と彼はBBCに語った。

アハメドさんは、ジムでマージンさんが射殺される前にも、ゲイの友人と一緒にいたところを手榴弾で攻撃されたことがある。彼の顔にはまだその破片が残っている。その友人は手榴弾攻撃の1週間後、家を急襲したガンマンたちに殺されたという。

イラクの内務副大臣のフセイン・カメル少将は、BBCに、特定のマイノリティ集団が誘拐や殺害の標的になっているとの認識はないと語った。また、ゲイは殺されるべきであるとの記述がシスタニ師のサイトにあることについても知らないと述べた。

副大臣は「攻撃を受けているという場合には当局に連絡していただきたい」と言うが、フセインさんは、ゲイの人々は警察を恐れているのだと言う。

(警察を管轄する)内務省は、イラク最大のシーア派政党のひとつであるSCIRIのメンバーによって運営されている。SCIRIにはバドル旅団という自前の民兵組織がある。イラクの警察の多くの部分が、そのような集団の支配下にあるという懸念が広くあるのだ。

ゲイに対する攻撃の多くはバドル旅団やシーア派民兵組織によるものだとフセインさんは考えている。

アムネスティ・インターナショナルは、反乱に関連する暴力についての作業に注力しており、イラクでの反同性愛的な動きについては情報を把握していないという。AIのロンドン本部のスポークスマンは「私たちが積極的に見ている分野ではないので。かといって今後も注目しないということではありませんが」と述べている。

しかしフセインさんやアハメドさん、またイラク国外のゲイのアクティヴィストたちは、イラクの同性愛者たちにとって状況が劇的に悪くなっているというはっきりした証拠があると言う。

「サダムは暴君でした。しかし少なくともサダム政権下では私たちにはもっと自由があった」とフセインさんは言う。「今では、ゲイの男たちは何の理由もなく殺されているのです。」

※アラビア語のインタビューは Muhayman Jamilによる。


この記事に言及しているウェブログを検索:
http://blogsearch.google.com/blogsearch?hl=en&q=
http%3A%2F%2Fnews.bbc.co.uk%2F2%2Fhi%2Fmiddle_east%2F
4915172.stm&btnG=Search+Blogs


「イスラム法に基づき、シーア派によって切り盛りされている国家」であるイランでは、昨年、「同性愛者の公開処刑」が、私が聞いただけでも3度行なわれています(今閲覧できるソースはgayjapannews.comさんとか、Human Rights Watchとか)。この処刑については、私は偶然、映像をコマ送りにしたような写真を数点見た(というか「見てしまった」)のですが、死刑についてどう考えるかとか人道的な殺人などというものがあるのかということは別にして、いくらなんでもその高さはないだろう、という絞首刑の方法でした。

イラク人の同性愛者に取材した上記の記事を読んだとき――正確には、シスタニ師のアラビア語版のサイトに「ソドミーを行なう者は殺されるべきである」と書かれていると読んだときに、イランで行なわれたその「処刑」の映像が頭に浮かびました。

安易に「イスラム教では」とくくることは常にあぶなっかしいことだけれども(その国家に「死刑」という制度があるかないかの話と、「宗教」の話を混同しすぎてはいけない。英国は死刑が廃止されているので英メディアはここでちょっと暴走するきらいがなくはないのだけど、このBBC記事はそうでもない)、イランでの「同性愛者の処刑(理由は同性愛行為を行なったから)」は、宗教と国家の名での殺人(killing in the name of the religion and the state)であると私は考えています。そしてイランでそれがあるのならば、とつい考えてしまう。

宗教指導者たちが大きな発言力と政治的指導力と社会的な圧力を有するようになったイラクで、「ソドミーを行なう者」と呼ばれる(それを「ソドミー」と呼ぶことは、空を「空」と呼ぶこととは違うのですが)人たちが、日々何を感じているか。

情報量が少ない記事ではあるけれども、このBBC記事がなければ、それを考えてみることすらしなかったかもしれません。

「殺されるべき」というのが、シスタニ師のアラビア語版のサイトには書かれているが英語版のサイトにはないということは、「アメリカやイギリスに見えないところで何をしているか」、「英語で書かれないものは“国際社会”には存在しないも同然という残念なデフォルトの事実を前提に、彼らは何をしているのか」(ファトワを出したわけではないにしても、権力者が「ゲイは処刑」と書くことは、少なくともintimidationにはなるだろう・・・どんなに少なく見積もっても)を示す事例のひとつかもしれません。英語の情報に頼るしかない自分としては、こういうことはしっかり覚えておかなければ。

それから、アムネスティ・インターナショナルも「ゲイへの迫害」どころではないということ。「バグダードはQOLが世界最低」という調査結果があり、またそれ以前に、日々のニュースや、バグダードやモスルなどから英語で伝えられるブログの記事を読んでいれば、多くの人が「朝出かけて夕方帰宅する」「帰宅したら扇風機のスイッチを入れる」「銃声に邪魔されずに熟睡する」といったことだけでいっぱいいっぱいになっている様子はわかるのだけれども、それにしても、AIでさえこの問題にほとんど目を向けることができないとは。。。

昨年10月、「憲法国民投票」の前に、Riverbendがこう書いています。(翻訳は池田真里さん。)

 女性の権利はもはや誰にとっても主要な関心事ではない。女性の権利について話し始める人がいると、人は笑いさえするのだ。私がイラン型シャリアの可能性について意見を述べると、たいてい「ともかくイラクを分裂させないことだ・・・」という返事が返ってくる。

 内戦の可能性や民族の強制退去や浄化という現実、日常化した流血や死に比べたら、権利や自由はたいしたことではなくなってしまった。

-- http://www.geocities.jp/riverbendblog/0510.html


単純に考えて「人口の半分」の女性の権利についてすらこの状況。(もっとも、「女性の権利」については、誰も注目していないというわけではないのだけれども。)

同性愛者は、数として女性より少ないし、女性よりももっと・・・・・・何というか、「自分がそうであること」で「人権」を、というか「普通に生きていくこと」を訴えることがしづらい。それはその社会の多くの人の信じる宗教が何であるかとは本来あまり関係のないことだと思うけれども、イラクの場合、シスタニ師のサイトが「殺されるべき」とまで書いている。

そして、実際に襲撃され、殺されている人がいる。そしてそれはおそらく、彼らを標的とする襲撃である。「無差別」とか「巻き添え」とか「コラテラル・ダメージ」ではないもの。

なお、「民主化された」イラクでは「死刑」は廃止されるはずでしたが、結局廃止されませんでした。「イラクでの死刑」についてニュースになるのはサダム・フセイン特別法廷の被告たちばかりですが(彼らは死刑になるのかどうか、など)、昨年9月には3人の「犯罪者」が絞首刑になっていますし、この3月には13人が処刑されています。(この人たちの処刑には、行為から政治的動機・意図をはぎとる「犯罪化(criminarisation)」の意図もあるかもしれません。つまり、思想・信条ゆえにその行為を行なった「テロリスト」ですらない、「犯罪者」としての処刑。)

曲がりなりにも法的手続きを経た「処刑」以外に、いわゆる「死の部隊」による「法的手続きを経ない処刑」もあります。

※なお、パキスタンの難民キャンプから陸路ロンドンを目指すアフガニスタン人2人の旅を描いた映画、『イン・ディス・ワールド (In This World)』で、2人がイランのテヘランに着くなり、たくましい男性の写真をあしらった「テレクラのピンクチラシ」が壁に貼られた部屋(白タクの事務所だったかなあ、あれは)が映像に出てきた、ということも書き添えておきます。(この映画は手持ちのデジカムでゲリラ的に撮影されているのでその場面もセットではないはずです。)

投稿者:いけだ

Technoratiタグ:


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追記:
■ BBC報道までの経緯&事態の全体像
英語で最初にこのこと(バドル旅団による組織的な同性愛者への襲撃・殺害)を取り上げたのは、Doug Irelandのようです。
http://direland.typepad.com/

2月17日にはフランスのル・モンドが記事にしているそうです。(私は読んでいません。)
http://www.lemonde.fr/cgi-bin/ACHATS/937676.html...

NYCのGay City NewsのMarch 23 - 29, 2006号:
http://www.gaycitynews.com/gcn_511/iraq.html

この、3月23~29日号のGCNの写真には、Courtesy OutRage! Londonというクレジットがついているので、OutRage!で何か記事が出ていたのかもしれません。(確認している余裕がないのではしょります。)

direlandの4月13日(NYCのGay City Newsに書いた記事だそうです):
http://direland.typepad.com/direland/2006/04/un_agency_confi.html

国連のOffice for the Coordination of Humanitarian Affairs (UNOCHA)が4月10日に出したレポートに
- 大学の教授や講師に対する誘拐が多発していること。身代金を取った上で人質を殺してしまうというもの(この5ヶ月だけで350件)
- 内務省の役人が「1日にざっと50件の誘拐が発生している」と認めていること
- 同じ役人が、「1月以降、誘拐の件数はますます増加し、ある特定のコミュニティに対する襲撃や脅迫も同様である」と認めていること
- そういった「コミュニティ」のひとつが同性愛者であり、その場合の目的は「身代金以外のもの」であるということ
……が書かれている、という記事です。

同Direland、4月17日(BBC報道があったことを受けての記事):
http://direland.typepad.com/direland/2006/04/at_last_bbc_fir.html

この17日の記事にはBBC記事には書かれていないとても重要なことが書かれていますので、その部分だけ引用します(改行を加えました。読みづらいので):

The BBC failed to note the relationshihp between the killings of Iraqi gays and the lethal anti-gay pogrom in Iran -- it does not mention that Ayatollah al-Sistani is himself an Iranian, that SCIRI (Supreme Council for the Islamic Revolution in Iraq) is backed by Iran -- its headquarters were in Tehran for more than 20 years during the Saddam Hussein dictatorship -- and that the Badr Corps is financed by Iran.

This is common knowlege in Iraq -- indeed, in an important February 17 interview with Le Monde that was ignored by the English-language press, the fact that the salaries of the soldiers of the Badr Corps -- whose death squads are carrying out the "sexual cleansing" campaign of murder of gay Iraqis -- are paid by Iran, was confirmed by Ali Debbagh, a counselor to Grand Ayatollah Ali al-Sistani, a member of the Iraqi parliament's Foreign Affairs Committee, and a university professor specializing in religious political parties.

And while the BBC report did mention that "there are widespread concerns that large parts of Iraq's police force are under the control of such groups," it omitted the fact that Badr Corps members in Baghdad and elsewhere wear the uniforms of the official police under the control of the Interior Ministry.

つまり、バドル旅団(Badr Corpsなのでほんとは「旅団」ではありませんが)は警察の制服を着ていて、給与はイランから支払われている。給与については、シスタニ派というか SCIRIの責任ある立場の人物が認めている。そして、これは書くまでもないことですが、SCIRIはサダム政権下でイランに亡命していたシーア派の人たちの組織である――これを、BBCは書いていない。

なお、Advocateも記事を出しています。日付は03/25/06-03/27/06。
http://www.advocate.com/news_detail_ektid28282.asp