「これほど状況がひどいことはかつてなかった」(続き)
植民地主義と人種差別主義は手を携えてきました。しばしばあからさまな「人種差別」ではなく差別者たちの自己欺瞞に満ちた耳には心地よく聞こえるような「宣伝」を伴って。第一部からの続き。
米国占領下のイラク
「これほど状況がひどいことはかつてなかった」
アンソニー・アルノーヴ
2005年11月16日
ZNet原文
日々、毎日、人々は嫌がらせを受けたり、殺されたり、逮捕されたり、拷問を受けたりしている。罪状はといえば、ただイラクに暮らしているというだけで。
赤十字の調査によると、米軍は、イラクで、「家財の破壊や容疑者とその家族への残忍な行為を伴う、無差別逮捕を繰り返して」いる。「ときに、米軍は家にいた成人男性全員を拘束する」と赤十字の報告は述べている。「老人や障害者、病人も含めて」。アブグレイブ監獄に収容された人々のなかで7割から9割の人が「誤った」逮捕であることは、米軍の諜報士官たちでさえ認めている。
米軍兵士たちは----かつてベトナムで米兵がベトナムの人々を人間以下と見なすよう訓練を受けたと同様----、イラク人を人間以下の存在と見なすように訓練を受けている。兵士たちは、イラク人を「ハジら」と呼ぶ。かつてベトナム人を「グークら」と呼んだように。
米国の政治家と軍の最上層部から、はっきりしたメッセージが兵士たちに伝えられている:イラク人の死やイラク人の苦悩はまったくどうでもよい。
最近ヒューマンライツ・ウォッチが行った調査では、米軍兵士たちは「スポーツ」として、イラク人を日常的に拷問しているという。この調査は、拷問の行使が広汎にわたっていることを記録しており、そうした拷問は、「しばしば上官の命令や承認のもとでなされている」。
第82空挺部隊の兵士たちは、「退屈しのぎに」イラク人を殴りつけると述べている。第82空挺部隊の「軍曹A」は、ヒューマンライツ・ウォッチに対して、兵士たちが日常的に「PUCをファックしたり」「PUCをスモークたり」していると語った(PUCは「Person Under Control:支配下に置かれた人物」のことで、法的保護を受ける戦争捕虜とイラク人被拘留者を区別するために用いられる用語である。ブッシュ政権は法的保護の義務を認めたがらない)。
「『PUCをファックする』ってのは殴ることだ」とこの軍曹は言う。「頭や胸や足や腹を殴って引きずり倒し、けりを食らわせる。毎日やるんだ。「スモークする」ってのは、無理な姿勢をとらせて消耗して気絶させることだ。これも毎日やっている。ときどき退屈するから、奴らをすみに集めて、ピラミッドを作らせるんだ。アブグレイブの前のことだけどね。でも今も似たようなものさ。退屈しのぎの、楽しみさ」。
拷問は、自ら「解放した」と主張する相手の人々に対する軽蔑を見せ続ける占領の、一つの病状に過ぎない。米軍兵士たちは、イラク人市民に対して、禁じられた集団的懲罰をほかにも多数加えている。
米国はイラク人死者数を数えることを拒否しているが、2004年10月に英国のトップ医学誌ランセットに掲載された調査は、米国侵略後に9万8000人の「過剰な死者」が出ていると報じている。この数値は実際には控えめなものである。というのも、米軍が行った最悪の攻撃の現場である「ファルージャの死者群」を除いているからである。「米軍侵略後、暴力的な死を迎える危険性は、戦争前の58倍になった」。
こうした状況のもとでは、イラク人の大多数が米軍兵士を解放者ではなく占領者と見なすのは驚きではない。
一方、米軍兵士の死者数も増加しており、今や2000人を超えた。けが人も増えている。イラクから帰還した兵士の6人に1人がPTSDの症状を呈しており、鬱や自殺率が高まっている。イラクの大量破壊兵器から世界を守ると信じたり、イラク人を解放すると信じてイラクにやってきた兵士たちは、そのかわりに、兵士たちを望んでいないイラクの人々を隷属させる仕事に従事するよう求められていることを発見する。
「最初イラクに行ったとき、俺は米国政府が言っていたことを信じてたんだ。大量破壊兵器を探して、イラクに民主主義をもたらして、なんてね」と、最近、良心的兵役拒否を申請したある兵士は、デモクラシー・ナウ!でエイミー・グッドマンに語っている。「だけどイラクにいってすぐわかったのはまるでそうじゃないってことだ。すぐに、イラク人は俺たちにいてほしくないんだってことがわかった・・・・・・兵士が俺たちの国に入ってきて侵略して家に侵入してきたら、俺だってやり返すだろう」。
* * *
イラクを解放する唯一の道は、侵略を終わらせ、兵士を今すぐ呼び戻すことである。そのためには、イラク人には自分たちの国を運営することはできないとか、米国は「テロリストたち」と闘うためにイラクに居続けなくてはならないとかいった、あらゆる人種差別主義的な嘘に異議を申し立てなくてはならない。この戦争はテロリズムや解放とは何一つ関係がない。最初から、この戦争は石油と、米国の世界的な資本帝国を維持するためのものであった。戦争を米国の人々に売りつけるために人種差別主義が使われたが、今や人々はますますそれらの嘘に気づいてきている。
今日、米国の過半数が、イラク侵略はその結果に見合うものではなく、決してやるべきではなかったと考えている。ワシントン・ポスト紙とABCが今月行った世論調査では、「ブッシュは合州国市民の間でこれまでなかったほど人気がない」ことがわかっている。9月にニューヨーク・タイムズ紙とCBSニュースが行った世論調査では、即時撤退支持が52%を占めている。アフリカ系アメリカ人の79%がイラク戦争は誤りだったと考えている。アフリカ系アメリカ人の中でブッシュ大統領を支持する人々は2%で統計的誤差に過ぎない。
反戦運動の目標に共感を持つ人々は何百万人もいるが、いまはまだ行動に動員されていない。こうした幅広い人々を反戦運動に取り入れ、各地の行動をつなげて全国的な動きにし、あまりに多くの人々がここ合州国で感じている孤立と断片化の感覚を人々が乗り越えられるようにしなくてはならない。
ベトナム戦争を終わらせた運動と同様に、多くの側面で運動しなくてはならない:軍へのリクルート反対に対する支援、政府や軍の官僚たちに戦争の人的犠牲と戦争正当化に使われた嘘をつきつけること、戦争で利益を得る者たちを暴くこと、真実を話したり、命令や軍務に抵抗する兵士たちを励まし守ること、退役兵士や軍人の家族と協力すること、そして、それらすべてとともに、忍耐強くけれども危急の意識をもって、周りのすべての人と、この占領を今すぐ終わらせるべきであることについて話すこと。
自衛隊はこんなことをしていないとか、今撤退したら内戦になるから無責任だと、他国を侵略し、その住民を無差別に殺し、拷問を加えている者たちが言う。それをしたり顔で支持している者たちが言う。相手の非人間化と醜悪な人種差別にもとづき、そして同時にそれを造りだしながら。
「イラク問題」というのは、単に、法を破って主権国家を侵略し、住民に拷問を加えて殺し、占領を続けている米国・英国・日本等の野蛮と人種差別と殺人と拷問と戦争犯罪の問題です。あからさまな犯罪であり殺人であるイラク戦争を「誤りだった」と述べる米国世論の結果は、人種差別主義と米国の自己幻想の根深さを示しています。「誤っていた」というのは、自らが他人に及ぼした行為の性格を客観的に見直すことなしに、相変わらず自らの主観的判断が通用する世界の中に閉じこもっている限りで言えることですから。
PEACE ONさん主催の、イラク人による講演会や展覧会があります。ぜひお出かけ下さい。
投稿者:益岡