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2007/01/31

「カルト指導者に対する米国の大勝利」は、虐殺だった

1月29日(月)、時事通信が「武装勢力250人殺害か=狂信集団?と激しい戦闘?米・イラク軍」との報道を行いました。産経では、

ロイター通信がイラク警察筋などの話として伝えたところによると、武装勢力は「天国の戦士」と名乗り、シーア派の中心的教義ともいえるマフディー(救世主)の降臨が近いと唱えるアハマド・ハッサーニ・ヤマニという指導者が率いる終末論的なカルトの一群。ヤマニ師はナジャフに事務所を構えていたが、1月初めに当局により閉鎖を命じられたという。

イラク治安筋などによると、この武装勢力は、シーア派最大の宗教行事アシュラが最高潮を迎える29日に、ナジャフの北にある聖地カルバラの宗教行事を攻撃し、シーア派宗教指導者たちの殺害を計画しており、米軍とイラク軍は事前に掃討作戦に踏み切った。

とのこと(以上は、P-navi infoより間接引用させてもらいました)。

これらの報道は「イラク警察筋」「イラク治安筋など」を情報源としています。バグダードからパトリック・コックバーンが伝える、別の可能性----巡礼者に対する虐殺----を紹介します。

「カルト指導者に対する米国の大勝利」は、虐殺だった
パトリック・コックバーン
バグダード発
2007年1月31日
インディペンデント紙より

ナジャフ郊外での、イラクのメシア的なカルト(「天国の兵士たち」)と米軍の支援を受けたイラク治安部隊との戦い----この戦いで263人が殺され210人が負傷した----をめぐる公式報道は捏造だという疑念がイラクで広まっている。

実際のところは、ナジャフの巡礼に向かうイラクのシーア派部族がイラク軍の検問とぶつかり、そこに米軍が介入して破滅的な事態を引き起こしたとの説明が現れている。自らを来るべきメフディすなわち救世主と信じているアフメド・アル=ハッサニ(アブ・カマルとも呼ばれる)がそれに関わっていたのは偶然だったようである。

イラクの独立系ウェブサイトやアラビア語の諸新聞に現れている説明は、いわゆる「天国の兵士たち」がシーア派宗教指導者たちを殺すためにナジャフを襲撃しようとしていたのでそれと戦ったというイラク政府の説明とは完全に食い違っている。

このカルトは、自分たちは平和的な運動であり、戦闘に関与してはいないと述べている。伝えられるところでは、この事件が起きたのは、200人の巡礼者たちの行列が、アーシューラー(シーア派ではムハンマドの孫イマーム・フセイン殉死の日として聖地を巡礼し喪に服する)のためにナジャフに徒歩で行こうとしていたときに起きた。巡礼者はナジャフとディワニヤの間に住むハワティム部族の出身で、日曜日の朝6時頃にナジャフから1マイルのところにあるザルガに到着した。行列の先頭にいたのは部族の超ハジ・サアド・サアド・ナイフ・アル=ハテミとその妻で、二人は歩けなかったため、1982年型のスーパー・トヨタ・セダンに乗っていた。一行がイラク軍の検問にさしかかったとき、イラク軍が発砲し、ハテミ氏とその妻、そして運転手のジャバル・リダ・アル=ハテミを殺した。部族の人々----夜旅をするために武装していた----は、長を殺されたことへの復讐として検問所を攻撃した。

ザルガに住む、カザイルと呼ばれる別の部族の人々が戦闘を止めようとしたが、彼らも攻撃されることとなった。その間、検問所にいた兵士たちと警察は司令官に電話で連絡を取り、自分たちは先端兵器を持ったアルカーイダの攻撃を受けていると伝えた。増援軍がこの地に殺到し、近くの果樹園にハワティム部族の人々を包囲した。ハワティムの人々は、軍の攻撃を止めさせようとしたが軍は攻撃をやめなかった。

それから米軍ヘリが到着し、「テロリストへ告ぐ、我々の爆撃前に降伏せよ」と書いたビラを投下した。ハワティムの人々は発砲を続け、米軍ヘリ1台が銃弾を受けて墜落し、乗員二人が死亡した。ハワティムの人々は、自分たちの発砲が当たったのか、米軍の友軍の発砲があたったのかはわからないと語っている。米軍機は激しい空爆を加え、それによりハワティム部族の人々とその地の住人120人が、月曜日の朝4時までに殺された。

アフマド・アル=ハッサニが率いるメシア的グループ----既にナジャフのイラク当局と不仲な関係にあった----は、ザルガを拠点としており、また、このグループの存在が、事実上の虐殺に対する都合の良い言い訳になったために、戦闘に引き込まれた。ハワティムとカザイルの人々は、ナジャフを支配しバグダード政府の中枢を占めるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)とダーワ党に反対していた。

以上の説明は、「ヒーリング・イラク」のウェブサイト及び権威主義的なバグダードの日刊紙アザマンの情報に基づいており、立証はできていない。けれども、以上の説明は、ある発表では政府側の犠牲者が25人以下だったのに対して、殺されたり負傷した相手側の数が極めて多かった事態を説明している。イラク当局は現場を封鎖し、記者たちが負傷者と話をすることを禁じている。

イラク全土のセクト的暴力もまたシーア派の祭式アーシューラーを台無しにしている。バラード・ルズのシーア派モスクでは、自爆爆弾が23人の礼拝者を殺し、57人を負傷させた。そう遠くないカナキンでは、ディヤラで、爆弾により3人の女性を含む13人が殺され、29人が負傷した。バグダード東部では、迫撃砲で17人が殺された。

米軍。最大のテロリストはまた、自らをテロリストであるなどと毛ほども信じていない、完全に自らに無知な集団であるために、最悪のテロ行為をイラクで続けています。

投稿者:益岡

今日、クラスで私はたった一人だった

バグダードの小学校では生徒も先生も通えなくなっています。

今日、クラスで私はたった一人だった
サミール・イブラヒーム
2007年1月29日
IRIN
Electronic Iraq 原文

バグダード発。私は11歳で、一人息子です。バグダードのマンスール小学校の生徒です。最近、クラスでとても寂しく感じています。今週、私はクラスでただ一人の生徒でした。というのも、色々な理由で、クラスメートが一人も学校に来なかったからです。

昨年9月以来、クラスメートの3人が誘拐されて、2人が殺されました。一人は自宅で家族と一緒に殺され、もう一人は1カ月前、爆弾が爆発したとき犠牲になったのです。

他のクラスメートは、家族と一緒にヨルダンやシリアに避難したか、何か起きるといけないと心配して親戚が学校に行くのを禁じたのです。

私は学校のすぐ近くに住んでいるので、歩いて2分で学校に行けます。母が、毎日、学校に連れていってくれ、迎えに来てくれます。行き帰りの道中ずっと、母は神に祈っていて、私に怖がってはいけないといいます。少なくとも私は勉強を続けていて、いつか重要な人物になってイラクを永遠に離れることができるだろうと母は言います。

学校で生徒の誰かに何かが起きると必ず、次の日は学校中が空っぽになり、1週間誰もいない日が続きます。家族も先生も怖がって、絶望的な気持ちになるのです。

しばらく前、学校から帰ろうとしていたとき、車に乗った4人の男がカディジャを誘拐しました。彼女は私の友だちの一人で、まだ10歳でした。彼女が殺されるのじゃないかと思って、何日も泣き続けました。両親が家と車を売って身代金を払ったので、彼女は釈放されました。でも、そのとき彼女はとても体が弱っていて、2週間入院しなくてはなりませんでした。

今、彼女と家族はヨルダンにいます。彼女がいなくて寂しいのですが、彼女たち皆にとってそれがいいことだというのもわかっています。

唯一恐いのは、私が誘拐されれば、殺されるのは確実だということです。私の家族には身代金を払うお金はありません。家も車もないし、売り物になりそうなものもありません。ですから、誘拐されたら私たちが日々その中で暮らしているテロの犠牲になるのは確実ですが、神が私を守ってくれると信じています。

先生も、ほとんどが学校を去っていきました。外国に行った先生もいれば、家族の求めにしたがって安全のために仕事をやめている先生もいると聞きました。いない先生みんなのことを懐かしく思っています。学校の中を走り回り、子どもたちだけで家に帰り、暴力の心配をしなくてよかった日々が懐かしいです。

今週、私は母に、家にいたいと言いました。クラスで生徒は私一人になってしまったからです。でも、母は私が学校に行くべきだと言い張りました。恐かったのですが、母の言葉に従いました。

クラスには21人生徒がいましたが、今日は、私がただ一人の生徒でした。

事態が良くなって安全になる日が来るとの希望を持っているかと聞かれると、持っていないと答えます。暴力は毎日悪化していて、友だちを失う日々は続いているからです。

もう勉強はできません。集中できないし、先生たちも前みたいに授業をしないのです。この頃勉強しているのは、2年前に学んだ内容です。こんな風に勉強していても、母が信じているように、いつか重要な人物になれるかどうかは、わかりません。

このニュースは国連人道ニュース・情報サービスIRINから届けられるが、必ずしも国連やその機関の見解を反映するものではない。IRINの文書はすべて無料で再ポスト・再プリントできる。使用条件については、IRINのコピーライト・ページを参照のこと。IRINは、国連人道問題調整局のプロジェクト。

投稿者:益岡