戦争犯罪とその帰結
『ファルージャ2004年4月』著者の一人ダール・ジャマイルが、ジョージ・W・ブッシュの戦争犯罪を論ずる。
戦争犯罪とその帰結
ダール・ジャマイル
2006年4月27日
Antiwar.com 原文
この週末、私はイラクにいる友人から、次のようなeメールを受け取った。
「こんにちは、ダール。私は今日ラマディにいて、状況を知ろうとしている。そこで、米軍兵士たちがイラク人の父親と3人の子どもを残忍に処刑し、それからその家を爆破したというニュースを聞いて衝撃を受けている。かわいそうに、母親はそのショックに耐えられなくて、心臓発作で死亡してしまった」
信じられないかも知れない。とはいえ、イラクで米軍兵士たちが犯した戦争犯罪を報じているCNNのこの映像を見ると、理解できるだろう。この映像は、2003年10月26日に撮影されたもので、米軍海兵隊が、床で苦しみもだえている怪我をしたイラク人を殺して、喜んでいるのが映っている。殺人犯の一人は、それからCNNに、「こいつらは今や死んでいる。いい気持ちだ。やったあと、そうだな、すごいんだよ。もういっぺんやろう。」
この映像だけでも、米軍兵士が米国の国内法と国際法のいくつかを犯している証拠になる。実質的に、前述の映像に映った男や、私のイラク人の友達がラマディから伝えた殺害の実行者のように、こうした犯罪を犯している米軍兵士は、総司令官に至るまで、戦争犯罪者である。
米国の軍事統一行動規範
紛争の際に、米軍の拘禁下に置かれる戦争捕虜や、逮捕されたり拘禁されたりしているそれ以外の敵の人員の取り扱いについて、米国の文書上の政策としては、それら全員に人道的な配慮と取り扱いが、拘束された瞬間から最終的に解放あるいは本国送還されるまで、求められており、指示されている。米国軍事司法統一規範(UCMJ)は、はっきりと、この規範を遵守することは、米国要員の全面的かつ例外ない義務であり、それはどのような立場であるかにかかわらず、相手を拘束した兵士であれ拘留所の要員であれ誰であれ同じであると明言している。UCMJはまた、拘留・抑留された人物が、捕虜であれ、民間人の被収容者であれ、誰であれ、等しく適用される。
ここでさらに、この規範はまた、拘留者が、戦争犯罪に該当しうる重大な犯罪を犯したことがわかっている場合あるいはその疑いがある場合でも、関係なく適用されることを付け加えておこう。非人道的な取り扱いは、戦闘のストレスのもとであるいは相手からの大きな挑発のもとでなされたとしても、米国法およびUCMJのもとで、重大かつ罰せられるべき侵害である。
UCMJを侵害しているのは、イラク人を殺している兵士たちだけではない。残虐行為の現場を目撃しながら、当該の監督機関にそれを報告しなかった者たちも全員、侵害の罪を問われる。
UCMJは、この規範を侵害した個人は、戦争犯罪者として処罰されるかもしれないと明言しており、また、法の侵害を目撃したり侵害があったかも知れないと疑念を抱いている者には、それを適切な筋に報告するという積極的な法的義務があると明言している。そうしないこと自体も、法を犯すことになる。
ジュネーブ条約
米国は、ジュネーブ条約の加盟国であるため、その規定すべてを遵守しなくてはならない。映像で映された出来事は、1949年8月12日のジュネーブ条約(第一条約)の、「戦地にある軍隊の傷者および病者の状態の改善に関する条約」に違反している。
興味深いことに、くだんの映像には、ジェームズ・キンバー大尉の言葉が添えられている:「現在イラクでわれわれが採用している方針は、IED[即席の爆発物]を据え付けている[ママ]者は誰であれその場で撃つというものだ」。
キンバーの言葉を信じて、それがイラクにおける米軍の方針だとすると、命令を与えている上官は全員がそれらの残虐行為すなわち殺人の責任を負うことになる。
キンバーがその犯罪をめぐり裁判にかけられたときどうなるかについて、サンディエゴのトマス・ジェファーソン・ロー・スクールの教授マージョリー・コーンは、次のように述べている。
「正当防衛は、自衛のために撃った者が、差し迫った死や大けがから自分あるいは他の者を守っているという正直かつ妥当な信念を持って行ったときにのみ、成立する。問題は、IEDを据え付けることが、どれだけ緊急の危機か、である。さらに、海兵隊が真実を述べているかどうかに関して、事実をめぐる疑問がある。
コーン教授のこのコメントは、ハディタの出来事についても妥当する。
表象
ビデオ映像に撮された出来事から約3年がたった2006年4月10日、同じジェームズ・キンバー大尉の名がニュース報道に表れた。AP通信は、「海兵隊員3人が、イラク派遣中の問題に関して、司令官の地位を解任させられた」と報じた。この3人は、2005年11月19日の悪名高いハディタ事件に関与していた。この事件では、米軍海兵隊員の一人が路肩の爆弾で殺されたあと、海兵隊が暴れまくり、2家族15人のイラク人を虐殺した事件である。
ジャーナリズムを専攻するイラク人学生が撮影したこの事件のビデオを『タイム』誌が入手し一般の目に触れることになったが、そのビデオには、血と人間の肉塊で汚れた寝室の床が撮影されており、また、壁に銃弾の穴があいた部屋が撮されていた。殺されたイラク人のうち7人は女性で3人は子ども、その一人は3歳の少女だった。
3人の海兵隊士官は、海兵隊第一連隊第三大隊司令官ジェフリー・R・チェサニ中佐、第一連隊第三大隊第K中隊司令官ジェームズ・S・キンバー大尉、そして第一連隊第三大隊第I中隊司令官ルーカス・M・マッコネル大尉である。
AP記事は、この3人に対しては何の告発もなされていないと指摘しているが、「ハディタで2005年11月に起きた事件との関係で第三大隊の兵士一ダースほどが戦争犯罪の疑いで調査を受けており、戦闘行為の規則に反したかどうか判断されることになる」。
一方、カリフォルニア州キャンプ・ペンドルトンにある海兵隊第一師団の報道官ロートン・キング中尉によると、キンバーおよび他の士官は、同師団内の別の任務に、「指令能力に対する自信喪失」のため、配置換えになったという。彼はまた、3名を司令官から解任する決定は「派遣中を通しての彼らの任務遂行力によるもの」と述べている。
海軍犯罪調査局は、イラクの人々が海兵隊により意図的に殺されたかどうかの刑事調査を始めたが、メディアにはそのことはほとんど報じられていない。また、ハディタ殺害をめぐって軍が行った、人を誤らせる説明を調査するために第二の捜査がなされているという事実についても報道はほとんどない。
誤伝
驚くべきことは、キンバーの発言は、ハディタを含めて占領中に殺されたイラク人全員が、IEDを「据え付けている」ところを見つかったために殺されたことを示唆している点である。海兵隊員がイラクで現在のようなふるまいをしていることについて、それを訓練するにあたってはキンバーやその上官たちのような士官が重要な役割を果たしたことを認識する必要がある。それゆえ、現地で命令を実行した者たちと同様、命令を発した士官たちも、戦争犯罪で有罪である。
イラクにおいて、戦争犯罪行為が例外ではなく当たり前のものになっているという状況を創り出した責任は、完全に、米軍の士官と司令官にあり、その大元は、総司令官ジョージ・W・ブッシュにある。
告白
イラクにおける米軍兵士に蔓延する精神状態は、キンバーに見られるような戦争犯罪者のものである。イラク占領に参加した29歳の退役兵士ジョディ・ケーシーは、次のように言う。
「私は、罪のない人々が殺されるのを目にした。IEDが爆発すると、兵士たちは、近くにいる農民たちを誰でもいいから撃ち殺す。そうした人たちは、生活の糧を稼ぐために外で働いている。一方、IEDが4つか5つ目の前で爆発すると、兵士たちは、それにもうあきあきする」
ケーシーは自分自身そうした殺害に手を染めたことはないが、イラクで蔓延する雰囲気は、次のようなものだと語る。
基本的に、殺したければ誰を殺してもいい。簡単なんだ。殺したあとその場に行って穴を掘ったりする必要すらない。ある種の状況を作っておけばいいんだ。朝の3時に車を運転していて、道ばたに男の姿を見て、撃ち殺す。あとはシャベルを放り投げておけばいい」。
ケーシーによると、彼の部隊は、その地域(アンバル州)にそれまで駐屯していた兵士たちから、車にシャベルを積んでおくようアドバイスを受けたという。罪のないイラク人を殺したときはいつも、遺体の横にシャベルを投げておけば、その死んだ民間人は、路肩の爆弾を据え付けようと穴を掘っていた最中だったということになるからである。
占領の第一年目にイラクに派遣されたもう一人の退役兵マイケル・ブレークは、派遣の前に米軍兵士たちが受けたメッセージは、「イスラムは邪悪である」そして「奴らはわれわれを憎んでいる」というものだったという。22歳の彼は、現在「戦争に反対するイラク退役軍人」のメンバーで、「私と一緒にいた兵士のほとんどがそれを信じた」と述べ、罪のない民間人が無差別に殺されたことを目撃したと告白した。彼は、自分では残虐行為に参加しなかったが、「路肩でIEDが爆発したときに、指令----あるいは慣例----は、周りの動くものをすべて撃つというものだった。そして、そんなことはしょっちゅう起こったから、罪のない人々が殺された」と述べている。
国の最高法規およびその他の諸法
状況をはっきりしておくために、繰り返そう。イラクで戦争犯罪が当たり前のものとなる状況を創り出したことについて第一の責任を負うのは、ブッシュ政権の上級職員たちである。米国憲法第6条第2項には、次のようにある。
この憲法、これに準拠して制定される合衆国の法律、および合衆国の権限をもってすでに締結され、また将来締結されるすべての条約は、国の最高の法規である。これによって各州の裁判官は、各州憲法または州法の中に反対の規定がある場合でも、これに拘束される(強調引用者)。
上で述べた虐殺により破られた国際法をいくつかだけあげておくと、そうした「締結されたすべての条約」として、ニュルンベルク憲章原則VI(b)「戦争犯罪:・・・・・・殺害、占領地所属あるいは占領地内の一般人民の殺害、虐待・・・・・・;戦争捕虜の殺害、虐待」および(c)「人道に対する罪:犯行地の国内法の違反であると否とを問わず、裁判所の管轄に属する犯罪の遂行として、あるいはこれに関連して行われた、戦争前あるいは 戦争中にすべての一般人民に対して行われた殺害、せん滅、奴隷化、移送及びその他の非人道的行為、もしくは政治的、人種的または宗教的理由にもとづく迫害 行為」がある。
「締結されたすべての条約」にはまた、ジュネーブ条約第一追加議定書第75条「(1)紛争当事者の権力内にある者であって諸条約またはこの議定書に基づくいっそう有利な待遇を受けないものは、第一条に規定する事態の影響を受ける限り、すべての場合において人道的に取り扱われるものとし・・・・・・(2)次の行為は、いかなる場合においても、また、いかなる場所においても、文民によるものか軍人によるものかを問わず、禁止する。(a)人の声明、健康または心身の健全性に対する暴力・・・・・・」および第51条「文民たる住民それ自体および個々の文民は、攻撃の対象としてはならない。文民たる住民のあいだに恐怖を広めることを主たる目的とする暴力行為または暴力による威嚇は、禁止する」、第57条、関係者は「攻撃の目標が文民または民用物でなく、・・・・・・特別の保護の対象ではないものであることおよびその目標に対する攻撃がこの議定書によって禁止されていないことを確認するためにすべての実行可能なこと」を行う、という条文も含まれる。
イラクにおける破滅のすべては、第一に、アメリカ合州国軍総司令官が創り出したものであるから、米国連邦法の対象となる。1996年の戦争犯罪法は、「1949年8月12日にジュネーブで署名された国際条約あるいは米国が加盟しているそれら条約のすべての議定書に重大に違反する」行為として定義される戦争犯罪を犯すならば、それは「本法のもとでの罰金および終身刑あるいはいずれかの刑期の禁固あるいはその双方、そして犠牲者を死に至らしめた場合には、死刑により」(強調引用者)処罰されうるとしている。
本件に関する立証終わり。
TruthOut.orgの好意により再掲。ベトナム時代の退役軍人で「平和を求める退役軍人」(ジョージ・ブッシュ等が侵害した法)が、この記事執筆を助けている。
訳文一部いいかげんなところがあります。「派遣の前に米軍兵士たちが受けたメッセージは、『イスラムは邪悪である』そして『奴らはわれわれを憎んでいる』というものだった」という兵士の告白は、「われわれは花を持って歓迎されるだろう」などという戯言がまったく嘘であることを政府が熟知しており、プロパガンダ目的でそう述べただけであることを示しています。
投稿者:益岡