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2006/01/14

投票の向こう

 
イラクへの自衛隊派遣と駐留延長を国際法と憲法に反してごり押ししている小泉首相。イラクを占領している連合軍に対するイラク人の見解と選挙について、チョムスキーが語る。

投票の向こう
ノーム・チョムスキー
ハレージ・タイムズ
2006年1月7日
ZNet原文

米国大統領ブッシュは、先月イラクで行われた選挙を「民主主義へと行進する中での大きな標石」と述べた。確かに、標石ではあった----けれども、米国政府が歓迎するようなものではなかっただけである。指導者たちがいつも通り自分たちは善意だと宣言していることを考慮するのではなく、歴史を振り返ってみよう。ブッシュと英国首相トニー・ブレアがイラクを侵略した際、最初に繰り返された口実は、イラクは大量破壊兵器を破棄するのだろうか?という「ただ一つの疑問」だった。

数カ月のうちに、この「ただ一つの質問」に答えが与えられたが、それは好ましからぬものだった。それからすぐさま、侵略の真の理由は、イラクと中東に民主主義をもたらすというブッシュの「救世主としての使命」へと変わった。タイミングを別にしてさえ、これを宣伝して回るバンドワゴンは、米国があらゆる手段でイラクの選挙を阻止しようとしてきたことと矛盾する。

昨年一月の選挙が実現したのは、多くの人々の非暴力レジスタンスがゆえであり、そこでは大アヤトーラ、アリ・シスタニ師がその象徴となった(暴力的なゲリラもまたこの大衆運動から生まれたものである)。フィナンシャル・タイムズ紙社説が昨年3月に述べていた次のような見解に反対する人は、有能なオブザーバたちの中にはほとんどいないだろう:「(選挙が)行われた理由は、大アヤトーラ アリ・シスタニ師が選挙を主張し、米国主導の占領当局が選挙を棚上げあるいは骨抜きにしようとして出した3つの提案を拒否したからである」。

選挙は、まじめに考えるならば、人々の意志にそれなりに注意を払うことを意味する。侵略軍にとって最も重要な問題は、「人々は我々がここにいるのを望んでいるだろうか?」というものである。

答えを示す情報にはことかかない。重要な情報源の一つは、昨年8月に行われた英国国防省の調査である。これはイラクの大学研究者によって行われ、英国のメディアがリークしたものである。この調査によると、82パーセントの人々が、連合軍の駐留に「強く反対」しており、連合軍が安全の改善に少しでも役立っていると考えている人々は1パーセントに満たない

ワシントンにあるブルッキングス研究所の分析によると、昨年11月の時点で、80パーセントのイラク人が「近いうちに米軍が撤退すること」を望んでいる。他の情報源もおおむね同様である。したがって、連合軍は、軍事力によって自分たちが支配できる雇われ政権を擁立しようと懸命に試みるかわりに、人々が望むように、撤退すべきなのである。けれども、ブッシュとブレアはいまだに撤退のスケジュールを決めることを拒否しており、目標が達成されたら名目だけは撤退すると言っているだけである。

アメリカ合州国にとって、主権を保ったそれなりに民主的なイラクは容認できない理由がある。この問題は、強固にうち立てられたドクトリンと対立するためにほとんど取り上げられることはない。そのドクトリンに従えば、合州国は、イラクがインド洋の孤島で主要輸出品が石油でなくピクルスだったとしてもイラクを侵略していただろうというものである。

公式見解に奉仕していなければ誰にでもはっきりしているように、イラクを制圧することで米国は、世界制圧の決定的な道具たる世界エネルギー資源に対する力を格段に強めることができる。イラクが主権を維持した民主的な国になったとしよう。そのようなイラクが進めるだろう政策を想像してみよう。イラクの石油の大部分がある南部のシーア派住民が大きな影響力を持つだろう。彼らは、シーア派のイランと友好的な関係を持つことを望むだろう。

両者の関係はすでに近いものになっている。おおむね南部を支配している民兵バドル旅団はイランで訓練を受けた。イランで育ったシスタニ師を含む影響力の強い聖職者たちも長期にわたってイランと関係を持っている。そしてシーア派が多数をしめる政府は、すでに、イランと経済関係を確立しつつあり、軍事関係を確立する可能性もある。

さらに、サウジアラビア国境の向こう側には、かなりの数の苦々しい思いを抱いているシーア派の人々がいる。イラクにおける独立へ向けた動きがあれば、そこでも一定の自治と正義を得ようと求める運動が増大するだろう。ちなみに、その地域は、サウジアラビアの石油の大部分があるところでもある。その結果、イラクとイランそしてサウジアラビアの主要油田地帯に住むシーア派の緩やかな連合が、米国政府からは独立の政策を採り、世界の石油資源のかなりをコントロールするかたちで、現れるかも知れない。こうした独立ブロックが、中国およびインドと大規模なエネルギー計画を共同開発するイランの前例に倣おうとする可能性もある。

イランは、西欧が米国と独立した動きをとりたがらないと考え、西欧との関係をあきらめ留かも知れない。けれども、中国を脅迫することはできない。アメリカ合州国が中国をおそれているのはそのためである。

中国はすでにイラン----そしてサウジアラビアとさえ----、軍事および経済の関係を作っている。中国とロシアを中心としたアジアエネルギー保全グリッドがあるが、おそらくインドや韓国その他の国々もそこに参入するだろう。イランがその方向に動くならば、そのグリッドのかなめになるだろう。

主権を持ったイラクさらには大規模なサウジのエネルギー資源さえもを含んだこのような展開があるとすると、それは米国政府にとって究極の悪夢である。さらに、きわめて重要な労働運動がイラクで姿を現している。米国政府はサダム・フセインが導入した過酷な反労働者法の維持を主張し続けているが、それにもかかわらず、労働運動は組織化の活動を進めている。

労働運動活動家は殺されている。誰が殺しているかわからない。ゲリラかも知れないし、バアス党員かも知れないし、他の誰かかも知れない。けれども労働運動活動は続いている。労働運動は、イラクの歴史に深く根ざした主要な民主化勢力の一つであり、再び活性化する可能性がある。それは、占領軍がとても恐れていることである。重大な問題は、西側の人々がどう対応するかである。民主主義と主権を阻止しようとしている占領軍の側に立つのか、それとも、イラクの人々の側に立つのか?

ノーム・チョムスキーは、米国マサチューセッツ州ケンブリッジのマサチューセッツ工科大学の言語学教授。著名な知識人で、新刊「Imperial Ambitions: Conversations on the Post-9/11 World」を含む著作を著している。

著作権:ハレージ・タイムズ

投稿者:益岡