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2005/02/04

選挙後:ノーム・チョムスキー

ノーム・チョムスキーが選挙直前に行なった講演からの抜粋。

選挙後
米国による占領とイラクの将来
ノーム・チョムスキー
2005年2月5日
CounterPunch原文


編集者から:以下はノーム・チョムスキーが2005年1月26日にラナン財団のスポンサーにより開催された米国ニューメキシコ州サンタフェで国際関係センター(オンライン)の25周年記念フォーラムで行なった講演からの抜粋。チョムスキーはIRCの評議員。


独立したイラク、独立した主権を有し、多少なりとも民主的なイラクの政策がどのようなものであるか、それがどのようなものになりそうかちょっと想像してみましょう。

シーア派が多数派を占めることになるでしょうから、政策に対してかなりの影響力を持つことになるでしょう。最初にするだろうことは、イランとの関係を再開することです。現在別にイランをとりたてて好きだというわけではありませんが、イランと戦争をしたくないので、既にサダム支配下で進んでいたように、ある種の友好的な関係をイラクとの間に構築するでしょう。

米国にとって、それは最も避けたいことです。米国はイランを孤立させようと大きな努力をつぎ込んできました。次に起こり得ることは、シーア派が統制する多少なりとも民主的なイラクがサウジアラビアのシーア派地域の感情を鼓吹することです。その地域はたまたまイラクのすぐ近くで、たまたますべての石油があるところです。その結果、ワシントンにとっては究極の悪夢であるに違いない状態、世界の石油のほとんどをコントロールしまた独立のシーア派地区ができあがることになるでしょう。さらに、独立した主権を有するイラクは、アラブ世界の主導的国家、恐らくは唯一の主導国家という自然な場所を占めようとする可能性が大きい。それが聖書の時代に遡ることだというのはご存じのことと思います。

これは何を意味するのでしょうか? まず第一に、再武装を意味します。地域の的に対面しなくてはならないからです。中東地域の強大な敵はイスラエルです。彼らはイスラエルと対立するために、抑止力として、恐らくは大量破壊兵器を開発することになるでしょう。ワシントンと恐らくはロンドンのダウニング街10番地が想定しているのはこのようなことです。シーア派多数派が再武装して大量破壊兵器を開発し、米国が世界の石油資源を確実に統制するために中東に配置した出先機関を取り除こうとする。ワシントンは黙ってみていてそうなっていくのを認めるでしょうか? ほとんど考えられません。

数日前に私がビジネス紙で目にした記事は、恐らくワシントンとロンドンの考えを反映しています:「よろしい。奴らに政府を持たせよう。けれども奴らが言うことに注意を払いはしない」。実際、2日前、ペンタゴンも同時に次のように発表しています:新政府が明日にも撤退を求めたとしても、少なくとも2007年まで我々は12万人の兵士を維持する。

これらの記事のプロパガンダは非常にはっきりしています。この場でコメンタリーを書くことさえ可能です:我々はそうしなくてはならない。というのも、イラクに民主主義をもたらすという使命を完遂しなくてはならないからだ。それを理解できないような政府が選出されたならば、我々がそのような馬鹿なアラブ人に何をするか、わかるだろう? 実際のところ、これは極めて一般的です。というのも、歴史を見れば、米国がいたるところの民主主義政府を次々に転覆してきたからです。そこの人々の物わかりがわるかったからという理由で。彼らが悪しき道を進んだという理由で。ですから、民主主義を確立する使命の後に、その政府を転覆しなくてはならない、というわけです。

徴兵制は最後の手段になると思います。というのもベトナムの経験があるからです。思うに、ヨーロッパ帝国主義の歴史の中で、ベトナムの経験は、帝国主義勢力が市民から構成される軍隊を使って植民地戦争を戦おうとした最初のときなのです。つまり、英国もそうしなかったし、フランスは外人部隊を持っていました。植民地戦争では、民間人兵士は好ましくないのです。植民地戦争はあまりに残忍で野蛮で血塗られているからです。ですから、路上から子どもを連れ去ってそうした戦争で戦わせることはなかなかできません。フランスの外人部隊のように訓練された殺人者が必要なのです。

ベトナムで何が起きたか見ることができました。名誉のために言うと、米軍は分解したのです。あまりに長い時間がかかりましたが、最終的に軍は本質的に崩壊したのです。兵士たちはドラッグに走り、士官を軽蔑し命令に従わず、上層部は撤退を望み始めました。1960年代末の軍事関係の雑誌を読み返すならば、どうやって兵士を撤退させるかとか、撤退させなければ軍が崩壊するとか、に三日前に軍予備兵の長官が述べたようなことを書いていることがわかるでしょう。彼は、米軍は分解しつつあると言ったのです。

「自由を広めなくてはならない」とブッシュはのたまっています。

投稿者:益岡
2005-02-03 23:52:33

「食べ物を得るための投票」?&投票率について。

選挙に関しては,ダール・ジャマイルが「食べ物を得るために投票した人もいる」という記事を書いていますが,これの日本語訳は「イラク情勢ニュース(URUK NEWS)」さんがなさっています。

というわけで,同じ主題を扱ったRaed blogを。私が管理・運営している日本語版からの転載。投票率についてもいろいろと書かれています。

2005年1月30日(日)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Sunday, January 30, 2005

食べる物のために投票を

いきなりですが訳注:
日本語化するにあたり,まず,Raedさんが下記記事で最初にリンクしているワシントン・ポストの記事を少しだけ見ておいていただきたいと思いますので,訳者の判断でそれをRaedさんの記事の前に置くことにします。
In Iraqi Vote, the Writing Isn't on the Wall
There is a sense among some in Baghdad that the United States wants the new parliament to choose Allawi, the incumbent, as prime minister. If the Americans want it, the conversation goes, so it will be. This reflects the deep vein of conspiracy theories that runs through Baghdad life these days -- from a rumor that the Jordanian militant Abu Musab Zarqawi, blamed for some of Iraq's most spectacular carnage, is an American fabrication, to a rumor voiced by Abed that Iraqis who don't vote will have their monthly food rations taken away.

"Maybe it's not correct," he said, "but it's what people are saying."


バグダードの人々の中には,米国は新たな議会に現在のアラウィを首相に選出してもらいたがっているのだと感じている人々もいる。もしもアメリカがそれを望んでいるのであれば,と会話は続く――そうなるんだろう。これは,最近のバグダードの生活に走っている陰謀論の深い根を反映している。アブ・ムサブ・アル=ザルカウィ【ザルカウィについての記述部分省略】はアメリカの作り事であるとか,アビド【引用した部分の前に出てくる,取材に応じたイラク人】が言っていた噂,投票しないイラク人は毎月の食糧配給が受けられなくなるという噂が,日々ささやかれているのだ。

「本当ではないかもしれないけれど」とアビドは言う。「でもそれが,みんなが言ってることなのだ。」


食糧配給云々は,いわゆる「デマ」かもしれません。しかしこういう場合に人々の行動を決める上で重要になるのは,それが本当かどうかより,むしろ,みんながそれを信じているということじゃないかと――Raedさんもそう書いています。

だから,「食べる物のために投票を Vote for Food」というこのエントリのタイトルは,「事実として,投票しない者には食糧配給をしないというお達しがあった」ということではなく,「投票しない者には食糧配給をしないという噂が流れて,投票しないでおこうと思っていた人たちも投票所に行った」ということと解釈してください。

では,以下がRaedさんの記事です。

**********

卑劣で腐りきったブッシュ政権は,汚いアラウ(ィ)政権と共同で,イラク人に投票を強要している。アラウ(ィ)ら傀儡どもは,投票しないイラク人は毎月の食糧配給を受けられないと脅している。

ブッシュ・ギャングは,目的に達するためなら何だってやりかねない。

どんなことだって

投票に行かなければ,政府は毎月の食糧配給をカットするということが,イラクじゅうでよく知られている。みんながこのことを話していて,みんなが信じている!!! ひどい状況にありめちゃくちゃにされたイラク人たちが何百万人と家から引っ張り出されて,爆発やら銃撃やらの中を選挙センターに行かされた大きな理由のひとつが,これなのだ。

彼らは選挙のことなどまったく気にかけていない。食べる物がほしいのだ。何百万というイラク人は,この噂が本当なのかでたらめなのかを調べることなどできる可能性もない。これは生き残れるかどうかという問題なのだ。毎月の食糧配給を受けるためには命の危険も辞さない。

シスタニの命令ですら,人々を家から出させて投票に行かせるためには十分ではない。彼らはブッシュ流の自由などほしくないのだ。

数日前,バグダードで,弟のハリードの友人が,ハリードに「行くだけ行って白票を投じてくるよ。家族の食糧配給がほしいから」と言った。今日は2度,バグダードのハリードに電話をして,どんな状況かを確認したが,僕が(アンマンで)BBCで聞いたのと同じことを弟は言っていた――2分に1度爆発があると!

ブッシュ・ギャングは,イラクでのしょうもないお芝居を完成させようと,長きにわたって欺瞞を積み重ねてきたその上にさらに嘘を積み上げようと必死である。

そして,「イラク政府」は紛らわしく誤った数字を発表している。全有権者に対する投票者の割合を発表するではなく,登録した有権者に対する投票者の割合を発表している!!!!

たとえば,ヨルダンで名前を登録したイラク人の数は,ヨルダン在住の全有権者の20パーセントに満たなかった。だから,登録した有権者の90パーセントが投票した場合,結局は投票したのは総数の18パーセントということになる……90パーセントなんてのは,人々に告げられるべき真正な数字ではない!!!!!

嘘ばっか,嘘ばっか,嘘ばっか!!!!!!!

イラク国内で発表される数字は全部うそだ。たとえば,ティクリート行政区の登録した有権者数は,全住民合計数十万人のうち2000人であり,今日1000人が投票したとして,それは投票率が50パーセントなどということにはまったくならない

嘘ばっか,嘘ばっか,嘘ばっか!!!!!!!

イラクの偽物の政府は,今日イラク人の72パーセントが投票したと発表した。後に政府は800万人が投票したと発表したが,ということは,投票したのはおよそ56パーセントということになる。というのは,イラク国内にいる有権者の総数は1427万人だからだ。

原始的で弱体のイラク政府が,今日どれだけの人が投票に出かけたかをこんなに早く把握するなどということはありえない。これらの数字は,大げさな推測に過ぎない。

彼らはあまりにおばかさんなので計算間違いをする。

国外にいるイラク人の総数は,400万を超えている。イラク人の56パーセントが18歳以上である。【訳注:イラクで選挙権を有するのは18歳以上。】ということは,イラク国外でだいたい250万人のイラク人が有権者ということになる。そのうち投票したのは,25万人にも満たない。

驚くべきことに,単純な計算をすれば,イラク国内および国内の有権者の総数は,1675万人。そして実際に投票した人の数は,825万人にも満たない!!!!!

投票率は50パーセントに満たない。

ということは,これは法に適っていない選挙ということになる。

投票率は,選挙を法に適ったものにするには十分ではない!!!【訳注:すぐ上のリンク,http://www.globalpolicy.org/掲載の記事(元はシドニー・モーニング・ヘラルド)のタイトルのwon't beをis notに書きかえたもの。】

こんなに嘘八百並べても,人々の生存の手段を脅かしても,うまく行ったようには見えない。
:*)

アグリー・コンディ(ugly-condi:コンドリーザ・ライスのこと)がありとあらゆる放送局に「イラクの投票は予想より順調」と高らかに語っても,小ブッシュがイラクの投票のことを「圧倒的成功」と賞賛しても,世界はこの二人の,数学的に不自由な嘘つきが,自分が何のことを話しているのかをわかってないというそのさまを見なければならない。

今日の選挙は,イラクに対するブッシュの長い戦争の恥ずかしい1ページにすぎない。この選挙もまた,ブッシュと占領軍が近いうちに代償を支払うことになる過ちのひとつだったのだ。

Posted by: Raed Jarrar / 11:59 PM
*translated by: nofrills, 1 February 2005

*訳注:参考リンクなど
今回の選挙がどのように行なわれたかについて,英語ですが,クリスチャン・サイエンス・モニター紙(US)がQ&A方式でわかりやすくまとめてくれています。
http://www.christiansciencemonitor.com/2005/0128/p10s02-woiq.html

それから,Raedさんのこの記事のコメント欄で,Reiさんという方が,投票率についての報道をまとめてくれているので,それを引いておきます。
I decided to dig up all of the reports that I could find on turnout. When I couldn't find a % of elligible voters for a location, I used the number of voters and assumed that only half of the residents were elligible (the "scaled" percentages)

Ansar province - "up to 10%", "over 15000" (US military). These numbers don't jive with each other, because 15000 is very different from 10%.
* Fallujah: ~7500 out of ~250,000 (3%, scaled=6%?) (same source, disputed as too high by others)
* Ramadi: ~1700 out of ~350,000 (1/2%, scaled=1%?) (same)
* Contradictory number for Ramadi: ~300 (1/10 %, scaled=1/5%?) (poll workers; Dexter Filkins, NYT)

Mosul: with 60% of presincts in, 53,000 were left (NYT). This means about 130k votes cast, in a city of
about 1,739,800 (7.5%, scaled=15%)

Irbil (Kurdish): "60%", surprisingly low ("arab satellite tv", sourced by Juan Cole)
* The Iraqi government says that the Kurdish north as a whole was around 90%, which seems contradictory

Samarra: 1400/200,000 (<1%): US military

Baji: Election officials didn't show up (Dexter Filkins, NYT)

Najaf:
* Turnout "very high" - ~80% (Iraqi government)
* "Free Republic" party complains that the ballots were modified, other relatively minor irregularities

Maysan province: 92% (Iraqi government)

Kerbala: 90% (Iraqi government)

Baghdad: 80% (Iraqi government)
* Rufasa: 65% (Iraqi government)
* Karkh: 95% (Iraqi government)

Electoral commission estimates 57% total in the country

Overseas: 280,303 registered out of 3 million elligible voters; of these, turnout averaged 94%; thus, around 260k out of 3 million voted (~9%). Only 2 million were able to register due to incomplete facilities, so of those who could vote, the number is around 13%.

Misc problems: The whole "ration card" thing

Summary: An incredible turnout in the shia areas, if you can believe the government. Same for the kurdish areas. Almost no turnout at all for the sunni areas. Pretty much what was predicted beforehand.

- Rei

# posted by Anonymous : 7:45 PM


日本語にするのは……ごめんなさい,省略。


「食糧配給カードと引き換え」というのが,本当に出された通達だったのか,あるいは噂に過ぎないものだったのかは結局わかりません。可能性として高いのは,選挙登録で国連の「オイル・フォー・フード」の食糧配給カードが使われたとのことですので,そこから話が発展してしまったんじゃないかと個人的には思います。

いずれにしても,特にこういう局面では「何が真実か」よりも「何が信じられているか」のほうが影響力というか,作用する力が大きいのではないかと思いますが。


投稿者:いけだ
2005-02-03 13:53:45

CIAが公式に情報を修正。

米CIAが,「イラクの大量破壊兵器の情報」を修正し始めているそうです。まずは化学兵器からのようです。

この件については,日本語でも記事があります(時事通信)。

CIA,侵略前のイラクの兵器情報を修正
CIA Revising Pre-Invasion Iraq Arms Intel
Tue Feb 1, 5:44 PM ET←時間はnews.yahoo.comより
By KATHERINE PFLEGER SHRADER, Associated Press Writer
http://www.guardian.co.uk/worldlatest/story/0,1280,-4771679,00.html

ワシントン発――2003年の侵略前のイラクの兵器能力について,誤りであったと判明した情報を公式に改める遡及的報告書をCIAが準備している。

それらの中には,わずか12ページほどの,「イラク――1990年代初めから大規模な化学兵器開発はなかった」と題されたドキュメントも含まれている,と,この作業をよく知っている情報当局関係者が,匿名を条件に語った。

この報告書は,イラクのサダム・フセイン前大統領は1991年の湾岸戦争の後で化学兵器開発計画を断念したと結論している。

ブッシュ政権は,大量破壊兵器――化学兵器・生物兵器・核兵器――の存在を,イラク政府転覆の第一の理由として利用した。

開戦前のヴォリュームのある分析は,現在では物議をかもすものとなっているが,それらでは情報当局はサダムはおそらく少なくとも100実質内蔵量トンの化学兵器を保持し,さらに,可能性としては500実質内蔵量トンということも考えられるとしていた。「それらの多くは前年に加わったものである」とドキュメントでは言っている。

ジョージ・テネットCIA前長官をはじめとする情報当局関係者は,イラクについての戦前の評価のうち少なくとも3件が誤っていたと認めている。

テネット前長官は1年近く前にCIAを弁護して,演説で「情報部にとって非常に困難な仕事の多くと同様に,イラクについての事実についても,情報部が完全に正しいということも完全に誤っているということもないだろう」と述べている。前長官は化学・生物兵器ではないかとされるものがその時点でもまだ見つかっていないことは認めていた。

昨年夏までに,米上院の情報特別委員会のインクワイアリが,イラクが大量破壊兵器を所有しているとの推測を疑うことをしなかったために情報コミュニティが「集団思考」に陥っていたのだと結論づけた。

イラクに関する新たな一連の部外秘報告書は,CIAの情報分析部門によって準備されるが,米国の情報コミュニティを構成している15の部局に配布されることになっている。この報告書はブッシュ大統領をはじめとする上層の政策決定者にためにまとめられるものではないと,情報当局者は語っている。

今回の作業は,「イラクの大量破壊兵器計画についての情報コミュニティの記録は正確であり,これらの計画についての最も日付の新しい評価を反映していることをはっきりさせる」ことを意図している,と,この当局者は付け加えた。

新たな分析は,大量破壊兵器を評価する情報コミュニティの能力を精査している大統領諮問機関が,3月末に報告書をまとめるのに合わせて作成される。

化学兵器についてのドキュメントの存在を報じたのは,火曜日(2月1日)のロサンゼルス・タイムズ紙が最初であった。

議会情報特別委員会所属の民主党ジェーン・ハーマン議員(カリフォルニア州選出)は,イラクの兵器についての情報を修正する作業を歓迎した。「戦前のイラクの核兵器・生物兵器能力についてのCIAの評価も含め,もっと多くの記録に訂正の必要があります」とハーマン議員は語った。

「ですが,情報コミュニティがよりいっそう優先すべきは,イランや北朝鮮の大量破壊兵器に関する情報の見直しです。イランや北朝鮮では大量破壊兵器計画が存在しているということがわかっており,米国の政策はそれらに基づいて決められているのですから」とハーマン議員は語った。


もう一度,「イラクの大量破壊兵器」騒動を思い出すと,私の記憶では,最初に騒ぎ出したのは英国政府でした(SIS,いわゆるMI6の情報による)。2002年9月のことです。当時,情報部の書類が英国議会に出ると同時にウェブで公開されていて(異例中の異例),それを読んだ限りではcouldとかmightとかの仮定法がいっぱいでした。(が,後から,部分的にcouldをbe capable ofといったように表現を改めた箇所があったことが判明。)→2002年9月の私のメモ(リンク先の25番と32番)

また,英国の書類は,ネット上にあった米国の大学院生の論文をパクったことが2003年2月に判明しました――1991年の湾岸戦争のころのことを書いた論文で,部分的に2002年の状況に合うように文言がかえられていたものの,文法ミスまで同じだったのでバレたのですが。→2003年2月の私のメモこれも。

国連安保理でこの「英国がまとめた書類」が「イラクの大量破壊兵器の証拠」として提示されたのは,その「パクリ」が判明した後のことです。

こういったことがすべて「情報の誤り」だったのかどうか……英国では独立司法調査委員会でそういう判断が出されましたが……。

ちなみに,湾岸戦争のころのイラクの大量破壊兵器・通常兵器については,入手が極めて簡単なものとしては,例えばフレデリック・フォーサイスの『神の拳』に虚実とりまぜて(←重要)書かれています。1994年に発表されたこの長編で,フォーサイスは,1991年の湾岸戦争の真意はクウェート解放ではなかったということを軸にしています。『神の拳』は角川文庫で絶版にはなっていませんので普通に買えますが,古書店でもよく見ます。

投稿者:いけだ
2005-02-03 13:48:39

マイケル・ジャクソンの裁判のおかげで公共の電波に乗らなかった声。

先日「戦死した米兵の母から,イラクの母親への手紙」で日本語にした3通のメールのうちの1通の主,シンディ・シーハンさんが,マイケル・ジャクソン裁判のためにCNNのトーク番組の出演をドタキャンされ,「私が言いたかったこと」を文章にしてネットに上げています。

シンディさんがやっているGold Star Families for PeaceのサイトのEssaysのところでも読めますが,Faizaさんのウェブログの2月2日のエントリにも紹介されています。

私は昨晩の「ラリー・キング・ショー」に出る予定でした。この選挙の前に息子がイラクで戦死している母親の視点から,イラクの選挙についての意見をお願いしますと言われていたのです。番組で私が受けることになっていた質問のひとつが,私が息子の死を「それだけの意味があった(worth it)」と考えているかというものでした。

ところが昨晩は結局「ラリー・キング・ショー」には出ませんでした。非常に重大なことが起きたという理由でキャンセルされたのです――マイケル・ジャクソンの公判があったので。

もし「ラリー・キング・ショー」に出演して,選挙と息子の犠牲についての意見を述べる機会があったならば,私は以下に書くようなことを,ラリー・キングと視聴者の方々に申し下げるつもりでした。

私の息子,ケイシー・オースティン・シーハン技術兵(2004年4月4日,サドルシティにて戦死)は,アメリカを守り,祖国に何かを返すために軍に入隊しました。息子は,私たちの国にとって差し迫った脅威などではない(あるいは何らの脅威にもならない)国を先制攻撃し占領するために兵士たちを送り出す無謀な総司令官によって利用され誤用されるために,軍隊に入ったのではありません。ケイシーは,私たちの生活を恐怖で満たすことを喜びとするネオコンの空想に基づいた戦争で死ぬために,送られたのです。

ケイシーは「任務(Mission)」には賛成してはいませんでしたが,勇敢で立派な人間でしたので,仲間たちをサポートするためにこの戦争という過ちに行かなければならないのだということをわかっていたのです。また,ケイシーは何度も,貴重な兵士たちと資源が本当の対テロ戦争からイラク戦争のために割かれているんだろうと,疑問を声に出してもいました。

イラクでは,装甲を外したハムヴィーの前で,チョコレートや薔薇の花びらを振りまかれ,解放者として歓迎されるだろう,とケイシーは言われていました。シーア派の反乱勢力の「歓迎ワゴン」が,息子の若く美しい命を奪った銃弾やRPGで息子をバグダードに歓迎したとき,息子はイラクに着いてわずか2週間でした。チョコレートや薔薇の花びらよりも,ヘルメットやヴェトナム戦争時代のフラックジャケットのほうが,息子を守るのに役立っただろうと思います。

ケイシーが殺されたのは,ジョージ・ブッシュが2003年5月1日に「任務完了」を宣言した後です……同年12月にサダムが身柄を捕らえられた後です。ケイシーが殺されたのは,2004年6月に主権が委譲される前のことで,今回の選挙の前のことです。

今回の選挙の後,昨日,海兵隊員が4人,無残に殺されています。私が数えたところ,およそ60人のイラク人と連合軍兵士が,選挙の日に殺されています……これが「大成功(Catastrophic Success)」の定義でしょうか。これはイラクではよい日だったのでしょうか。

もう2年近く前にジョージ・ブッシュが高らかに「大規模戦闘」の終結を宣言してから,何百人という(アメリカの)若者と数千単位のイラク人が,その必要もないのに意味なく殺害されて(murdered)います。

上に書いた出来事はすべて,この政権によって「対テロ戦争」の「転換点」であると……あるいは「デモクラシーの行進」におけるすばらしい出来事であると告げられてきたものです。本当に? つい最近の動きから判断して,選挙が流血と破壊を終わらせることになるとは,私には思えません。

ラリー・キングには,イラクでのいかさまの選挙のためにお子さんのお一人を犠牲にしたいですかと尋ねるつもりでした。キングやジョージ・ブッシュが,一連の嘘と誤りと誤算のために,自身の子どもたちを,殺されたり一生不自由な身体にされたりするために送り出すでしょうか。イラク侵略と占領のすべての嘘が白日の下にさらされています……どうして私たちの息子たち・娘たちは,まだイラクにいるのでしょうか。この嘘のかたまりのためにもう1滴でも血が流されることがあってはなりません。

この戦争は,1世紀前であればいんちきなセールスマン(snake oil salesmen)の印象に残ったであろうような,狂人めいた熱意とうさんくさい誠意をもった下劣な指導部によって,アメリカ人に売り込まれました。平均的アメリカ人は,私たちの「死亡」の手紙に署名するだけの気配りも同情心も持ち合わせていない政府の傲慢と無知によって辛酸をなめさせられている人々から,物事を聞かされる必要があります。【訳注:兵士の戦死通知書には通常国防長官が肉筆で署名をすることになっているが,現在それが為されていないという。】

「公平で偏りのない」ようにするために(あら,このネットワークじゃだめよね【訳注:「ラリー・キング・ショー」はCNN】),私が出演していたら,今でもまだ「任務」と大統領に賛成している(戦死者の)親御さんと議論させられたかもしれません。私にはその親御さんのお子さんの死を悼む気持ちがあるし,その親御さんのご意見は尊重しますが,キング氏やその親御さんが「任務」について私に講釈することは許さなかったでしょう。平気な顔をしてそのようなことができる人など,誰もいないと思います。

大統領は,この玉虫色のころころ変わる「任務」を完成させることによって私たちの犠牲をたたえるために,兵士たちをイラクに駐留させ続けなければならないのだとも言いました。それに対する私のお返事は,「ケイシーとシーハン家にはもう遅すぎるのです。このカメレオンのような『任務』の名において,さらにまだ罪のない命が奪われることを,どうして望みましょうか」です。

いずれにせよ,私は番組への出演をドタキャンされたのです。(妊娠した妻を殺害した)スコット・ピーターソンはその犯罪について判決を受け,(スコットの妻の)レイシーと(レイシーのおなかの中にいた)コナーの家族は,彼らに与えられて当然の正義を得ました。【訳注:ピーターソンの事件は,おなかの中の子どもの「人格」の問題もあり,イラク戦争の間中,全米のマスコミで大きく報道されたとのこと。】

それが一件落着となって,私たちには新たな「世紀的な裁判」ができて,私たちがイラクでモラルに反する戦争を行なっているという,不愉快で面倒くさい事実から関心をそらされるのです。マイケル・ジャクソンの性的虐待の裁判の派手な写真や映像で,テレビの画面も家も埋め尽くすこともできるでしょう。マイケル・ジャクソンの犠牲者たちを思っての怒りと,彼らに正義がもたらされるようにと望むことで,自分の生活をいっぱいにすることもできるでしょう。ジョージ・ブッシュと不誠実な閣僚と彼らの誤った政策が,世論という舞台に引き出されることすらないという事実を問うこともせずに。

私たちの国の指導者たちと彼らの嘘のせいで,1438人の勇敢なアメリカ人が……そして数万の罪のないイラク人が……死んだのだという事実に,そして私たちの国の信用が世界中で失墜してしまったのだという事実に向き合う必要は,私たちにはないのです。ということは,テレビのスイッチを切って,それについて何か行動をしなければならないということを意味するのかもしれません。

ああそうそう,最初のラリーへの質問に答えていませんでしたね。答えは「いいえ,それだけの意味はありませんでした」です。

Cindy Sheehan
Mother of Hero: Spc Casey Austin Sheehan KIA 04/04/04
Casey's Peace Page
Co-founder of Gold Star Families for Peace: www.GSFP.org


文中のスコット・ピーターソン事件については,CBSのまとめなどを。興味がおありの方は,検索するといやというほどたくさん出てきます。裁判が始まる前に(!)テレビドラマも製作されています。

関係ないんですが,「スコット・ピーターソン」っていう名前のクリスチャン・サイエンス・モニター紙の記者さんがいます。11月のファルージャに入ってたようです。


投稿者:いけだ
2005-02-03 13:46:18