アラブ映画祭2006(3月、東京・赤坂)
公式サイト:「アラブ映画祭2006」
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2006.html
上映作品は下記のとおり(公式サイトより):
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2006_2.html
■アラブ新作映画パノラマ
『夢』Dreams
2005年/108分/カラー/イラク=英=蘭
監督:ムハンマド・アル=ダラージ
「アラブ映画祭2005」で上映した『露出不足』に続く、イラク戦争後に製作された2本目のイラク映画。爆撃された病院と、生き残った人々のその後を描く。
音楽を、2004年に国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の招へいで来日公演も行なった巨匠ナスィール・シャンマが担当し、話題となっている。
『イラク、わが故郷、亡命者サマーワへ還る』Iraq, My Country
2005年/50分/カラー/イラク=豪/DVcam
監督:ハッディ・マフード
オーストラリアに亡命していたマフード監督が、イラク戦争後、故郷のサマーワに帰還する旅のドキュメンタリー。日本の自衛隊も登場する。
『長い旅』Le Grand Voyage
2004年/108分/カラー/モロッコ=仏
監督:イスマエル・フェルーキ
在仏モロッコ人の老人が、故郷をひと目見ようと、息子とともに長い旅に出る。様々なトラブルのなか、欧州から北アフリカまでの7カ国を走行していく、ロードムービーの傑作
。
『天井の下で』Under the Ceiling
2005年/90分/カラー/シリア
監督:ニダル・アル・ディブス
ひとつの部屋を主な舞台に据え、長い時間とともに推移していく男女の関係を描いた、シリア映画の新作。ディブス監督はモスクワ留学を経て、本作で長編デビューを飾った。
『夢と現実の日々』Dreamy Visions
2005年/103分/カラー/シリア
監督:ワーハ・アル=ラーヒブ
1982年、イスラエルのレバノン占領は、隣国シリアにも暗雲をもたらす。封建的な父親と対立する女子大生のジャミーレは、闘いに参加するため、家を抜け出して戦場に向かう。アル=ラーヒブ監督は女優としても活躍中。
アジアフォーカス・福岡映画祭2005出品作。
『Waiting』Waiting
2005年/88分/カラー/パレスチナ=仏
監督:ラシード・マシャラーウィ
役者のオーディションのため、中東各地の難民キャンプを回ってカメラテストを繰り返す劇場スタッフたち。パレスチナ、ヨルダン、シリア、レバノンへと旅は続いていく。
『消えゆく者たちの年代記』Chronicle of a Disappearance
1996年/85分/カラー/パレスチナ=仏
監督:エリア・スレイマン
『D.I.』のスレイマン監督の長編デビュー作。皮肉と笑いのなかに中東の現実を描くスタイルはすでにここにある。「イスラエル・アラブの日常生活を苦いユーモアのもとに描いたフィルム」(四方田犬彦)。カンヌ映画祭新人賞受賞作。日本ではCS放映されたが、スクリーン上映は初。
■アラブ映画祭2005アンコール
『露出不足』Underexposure
2005年/70分/カラー/イラク=独/35ミリ
監督:ウダイ・ラシード
イラク戦争後にバグダッドで撮影された、初の長編劇映画。フセイン政権崩壊後の混沌とした社会状況を背景に、映画を製作しようともがく青年たちの姿を通して、戦後イラクの新たなリアリティを探る意欲作。ロッテルダム国際映画祭とシンガポール国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。
『忘却のバグダッド』Forget Baghdad
2002年/112分/カラー/イラク=スイス=独/35ミリ
監督:サミール
映画史の中で「アラブ人」「ユダヤ人」像がいかに表象されてきたかをめぐるアーカイヴ・ドキュメンタリーの秀作。バグダッドのユダヤ人であること、イスラエルのアラブ人であることの意味を検証し、ステレオタイプと化したイメージを解体していく。ロカルノ国際映画祭審査員賞。
『D.I』.Divine Intervention
2002年/94分/カラー/仏=パレスチナ
監督:エリア・スレイマン
ナザレに住むイスラエル国籍のパレスチナ人を描き、ユーモアと詩情に溢れた作風でカンヌ映画祭審査員賞・国際映画批評家連盟賞をダブル受賞したスレイマンの出世作。「『D.I.』はすごい映画だ。中東の笑えない事態から笑いを噴出させる。」(池澤夏樹)
上映スケジュールは:
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/arab2006_3.html
私は「アラブ映画祭2005」で『露出不足』と『忘却のバグダッド』を見て、非常に深く印象付けられました。このウェブログにちょっと紹介のような文を書いています。
『露出不足(Underexposure)』について書いたもの(2005年4月):
http://teanotwar.blogspot.com/2005/04/underexposure.html
※ネタバレ注意
『忘却のバグダッド(Forget Baghdad)』について書いたもの(2005年4月):
http://teanotwar.blogspot.com/2005/04/forget-baghdad.html
※若干ネタバレ注意
……というわけで、昨年当方の拙い紹介記事を読んで「見たかった!」と地団駄を踏んだ方は、今年はぜひ見に行ってください。
ちなみに私は「アラビアンナイト大博覧会」(東京の前に、大阪の国立民族学博物館でも開催)に行きそこないました。残念です。この「大博覧会」については、国際交流基金さんのブログ「地球を、開けよう。」も参照。(何年も前に、「エキゾチックで楽しい絵本」としての「アラビアンナイト」が、西洋でいかに「アラブのステレオタイプ」を作っていったかを細かく解説したウェブサイトをブックマークしてあったのですが、パソコンがクラッシュしたときに失ってしまいました。残念。ここにある画像のような、19世紀末の“東洋趣味”についての考察が軸でした。)
なお、「アラブ映画祭2006」上映作品リストの一番上、『夢』の音楽のナスィール・シャンマは、局地的に「シャン様」として知られています。(笑:いけだ個人ブログ参照。)
ナスィール・シャンマは、1991年の湾岸戦争を音で追体験するというようなコンセプトの2枚組みコンピレーション・アルバム、Fire This Timeにも参加しています(ほかにAphex TwinやOrbital、Pansonicなど)。こちらでサンプルが聞けます。ご購入は発売元のレーベルでどうぞ(英国のインディペンデント・レーベルです)。add to basketを押したらページ下方のcheck basketをクリックして、次の画面でbuy goodsをクリックし、必要事項を入力してください。商品代と送料と手数料で£13.50(2800円くらい:リンク先は私の記録)です。
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なお、『忘却のバグダッド』に出てきて「イスラエルの映画にみる典型」についてなどを語っていたElla Habiba Shohatさんの記事があることを、しばらく前に教えてもらっていました。映画をご覧になっていない方でも、興味深く読める記事だと思います。
Reflections By An ARAB JEW by Ella Habiba Shohat
http://www.bintjbeil.com/E/occupation/arab_jew.html
映画祭公式サイトの紹介文で、エリア・スレイマン監督作品に四方田犬彦さんがことばを寄せておられますが、映画祭の前に『見ることの塩 パレスチナ・セルビア紀行』(作品社)を読んでおく、というのもいいんではないかと思います。
※表紙の絵は、小さくてわかりづらいのですが、火を吹くドラゴンを退治し乙女を救出した聖ゲオルギウス(聖ジョージ)です。
投稿者:いけだ