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2005/05/21

事実上の「内戦の宣言」と解釈されうる声明(ジャマイル,5月19日)

1月30日の「選挙」の後,4月28日になってようやく「移行政権」が発足したわけですが,その4月28日から後の死者数はかなりとんでもないことになっています。

それだけでなく,今週は,「武装闘争」を支持しているわけではないスンニ派組織の要職者のひとりが殺され,その組織から,事実上の「内戦の宣言」と解釈されうる声明が出されたとのこと。ダール・ジャマイル,5月19日記事。

イラクの「デモクラシー」
"Democracy" in Iraqby Dahr Jamail
May 19, 2005
http://www.zmag.org/content/showarticle.cfm?SectionID=15&ItemID=7895
またはhttp://dahrjamailiraq.com/weblog/archives/dispatches/000243.php

イラクについて大規模企業メディアが垂れ流すいいかげんな言説を,私は読みもしないし聞きもしない……しかし,今日というこの恐ろしい日に,失敗したイラク占領に理由を与えるために,彼ら大規模企業メディアは何を言っていることだろうかと気になっている。同時に,アメリカの人々が自国政府を押してブッシュを弾劾させ,ブッシュとその政権がイラクで犯した数え切れないほどの戦争犯罪について彼らに法の裁きを受けさせるために必要な行動をまだ起こしていないことにも疑問を覚える。

昨日,イスラム法学者〔または聖職者〕協会(the Association of Muslim Scholars: AMS,参考)の上層部メンバーであるハッサン・ヌアイミ(Hassan Nuaimi)が,バグダードで死体となって発見された。片腕は折れており,頭の側面にはドリルで穴があけられていた。

AMSが,シーア派主導の政府はスンニ派を殺害するためにバドル旅団を用い,そうすることによって国家が後ろ盾となったテロリズムを行なっていると非難した翌日に,ヌアイミの死体が発見されたのだ。

そして昨日,バグダードでは,ヌアイミ殺害への反応として,2人のシーア派法学者が銃撃され殺された。

AMSのトップであるハリス・アル=ダリ(Harith al-Dhari)は,最近続発しているイラク国内でのスンニ派法学者殺害は,シーア派のバドル旅団の所業であると非難した。

アル=ダリは,内戦の宣言とも解釈されうる声明を出し,これらの殺害についてスンニ派は沈黙し続けることはないだろうと述べた。

「私たちは破局へと向かっている。それがいつ終わるのかは神のみぞ知ることである。これが私たちからの警告である」と彼は怒りを込めて言った。

サダム・フセイン政権下,バドル旅団はイランに逃れていたが,〔米英などによる〕侵略の後にイラクに戻り,それ以降ずっと,何の制限もなく活動できる民兵組織となっている。昨年の夏,バグダードでのシーア派デモの際に,軍服を着て重武装したバドル旅団のメンバーを私は目撃している。このバドル旅団を何年にもわたって率いてきたのがアブドゥル・アジズ・アル=ハキム(Abdul Aziz al-Hakim),すなわち,1月30日の「選挙」で最大の得票率を得たシーア派の統一イラク連合(United Iraqi Alliance)のトップである。【訳注:参考

実際,軽度の内戦が始まってからしばらく経っているのだが,今回アル=ダリの声明によって,そのヴェールがはがされたわけだ。

イラクにあるスンニ派のモスクは全て,3日間にわたって閉鎖される……これから起こることの不吉な象徴である。

というわけで,内戦を防ぐためには米軍が残らなければならないのだという議論は成立しなくなる。さらに,米軍はイラクの人々を守るためにイラクに居るのであるなどという人は,否定するあまり何も見えていないか,あるいは占領されたイラクが実際にどうなっているのかについてまったく何も知らないかのどちらかである。イラクの米軍は,自分たちの身を守ることさえできていないのだ。ましてや一般市民を守ることなどできるわけがない。

2日前,私はここアンマンで国連の役職者と非公式のインタビューを行なった……非公式なので名前は明かさない,今の段階では。彼は私に,イラクを再建するための復興資金の95パーセントが,イラク国外で使われている,と語った。

ということは,イラクの再建を支援するためにイラクに留まっているのだという議論もまた,とっくの昔に成立しえなくなっているものだろう。一体誰のせいなのか――ブッシュ政権に大きな貢献をしている者たちを見ればわかる。彼らの名は既に私たちには明らかになっている。ついでに,彼らの利幅を示す最新のデータをチェックしてみていただきたい。

上述したアル=ダリの声明についてのニュースは,ここ〔アンマン〕でイラク人の親しい友人たちと一緒に,アルジャジーラで見た。殺害された法学者の遺体を運んでゆく大規模な葬列を見,アル=ダリが怒りの声明を出すのを聞いていたとき,彼女【訳注:おそらく「友人たち」のひとりを指すと思われる】は頭を垂れて両手で抱え,そしてそっと「アメリカ人が来てから私の国に何が起きたか,本当にひどい」と言った。

これ以上はないほどに的確な表現だ。イラクがこのような惨状になってしまったことについて,ブッシュ政権は,国際法のもとに,有罪である。国際法のもと,占領する国は占領される国の一般市民を守ることは,占領者の第一の責任なのである。

ブッシュ政権にとっては,それは10万人のイラク人が死に,死者数はまだ増えているということを意味する。

今日のアメリカの大規模企業メディアのテレビニュースではカットされそうなニュースをもう少し。

バクバでは,自動車爆弾が警察の車列の近くで爆発し,18人を負傷させた(被害者のほとんどは警察官だった)。

キルクークでは,警備会社(security company)につとめるイラク人7人の遺体が発見された。

バグダードでは,米国の車列を狙った路上爆弾で,イラク人7人が負傷した。

〔バグダードの〕サドルシティでは,運輸省の運転手が射殺された。

ベイジでは,イラク人警察官2人が自動車爆弾で殺された。

モスルでは,迫撃砲攻撃でイラク人2人が殺され,学童7人が負傷。

というわけで,この2週間ちょっとで,ブッシュ政権の一連の犯罪に加えてさらに500人近いイラク人が死んでいる。そして,1日1日と経過するごとに,ブッシュ政権の犯罪も長くなっている。


5月20日付けの英メディアの記事を付け加えておきましょう。

デイリー・ミラーから:
元記事が短すぎてストーリーがはっきりわからないので困りましたが,次の要旨で間違いないと思います。念のためにUSAトゥデーでも確認しましたので。
※要旨:
モスルにて,国民議会のファワズ・アル=ジャルバ議員(Fawaz al-Jarba:スンニ派)の〔おそらく自宅の〕警護をしていたイラク人が,議員の自宅を撃ってきた反乱者に向けて発砲した。米軍のアパッチヘリも援護に飛んできた。

そして,ジャルバ議員は,自宅が爆撃され,警備員10人が死んだと述べている。議員は「私はテロリストたち(terrorists)に銃撃されていたのに,どうしてアメリカ人が私を爆撃したのか?」と言う。


つまり,米軍のアパッチヘリは,自分たちに応援を要請した(<多分)側を爆撃して10人死なせた,ということのようです。

同じデイリー・ミラー記事にある「その他の事件」は:

・バグダードの石油省の役人,アリ・ハミード(Ali Hameed:USAトゥデーではAli al-Dulaimyという名前になっている)が,自宅を出たところで銃撃され死亡。

・大学の教授が,自宅の近くで3人のガンマンに襲撃され死亡。(またムスタンシリヤ大学だろうか。)

・バクバで路上爆弾,警官2人死亡。

・サマラで警官とその父親が車に乗っていたところを射殺。

これらに加えて,USAトゥデーから:

・バグダード南東部で路上爆弾,米兵1人死亡。

・キャンプ・ラマディでロケット砲もしくは迫撃砲攻撃により,米兵1人死亡,5人負傷。

・バグダードで車に乗ったガンマンが米軍車列に銃撃を加え,米兵2人が死亡。

最後に,ダール・ジャマイルは読んでないらしい「主流メディアの報道」を,USAトゥデーから。

イラクを訪問中のロバート・ゼーリック国務副長官は「インサージェンツは,新たなイラク政府の成立を阻もうとしていたが失敗したため,社会を二分しようとしている」と語った。

# で,その「インサージェンツ」って誰よ?>こういうところ,印象操作するよね,大メディアは。あんまり曖昧だから翻訳できなくて困るんですけど。

暴力だけでなく,宗派的レトリックもまたエスカレートしている。スンニ派指導者のハリス・アル=ダリはシーア派が民兵を送ってスンニ派指導者を攻撃していると非難した。

# バドル旅団が活動していることは「スンニ派指導者の主張である」らしいです,USAトゥデー的には。

一方で,ジャファリ首相は,近隣諸国の協力を得て国境警備を強化し,外国人テロリストがイラクに入国しないようにしなければならないと述べた。

ザルカウィ一派のテロリストが隣国シリアからの攻撃を目論んでいるとの報道があるが【→参照】と質問されて,ジャファリ首相は「破壊行動を目的として,国境を越えて入り込むイラク人でない者がいる」と述べた。


さらに,BBC記事(モスルでの「米軍が味方を爆撃」がメインの記事)では:

バグダードのサドルシティでは,水曜日に殺されたシーア派法学者のムハマド・アラク(Muhammad Allaq)の葬儀に何百人も集まった。殺されたアラクはシスタニの側近のひとり。バグダードの南東160キロのクートの町を自動車で走行中に頭を撃たれて死亡した。


ということを,「このところ連続している宗派間の暴力の犠牲(to be killed in a wave of sectarian violence)」という言い方をして,説明しています。

さて,このくらいたくさんの断片的な情報が入ってくると,もう何が何で誰が何やら,わからなくなってきます。

投稿者:いけだ

土井敏邦 『ファルージャ2004年4月』

 
まばたきする以外、目以外、何も動かすことができない状態で、一人の少年が粗末な病院のベッドに横たわっている。

鼻にパイプをつながれた少年の脳には、小さな爆弾の破片が多数食い込んでいる。取り出すことが絶望的に不可能なまでに、細かい破片が食い込んでいることが、レントゲン写真で示される。

天井が目に入る。緊急に作られた診療所だった場所の天井。埃や鳥の羽がそこから舞い落ちてくる、高い天井。青い空がまぶしいまでに姿を現している、かつては天井であっただろうところ。

そして、ばらばらになって壁や床とともに地面に横たわっている、かつて天井を構成していただろうもの。

子どもの頃、熱を出して一人ふとんに横たわって眺め、様々な想像をめぐらせていた天井に、そして病院のベッドで雨の音を聞きながらする事もなく眺めていた天井に思いが及ぶ。

今となっては、忙しい、けれども当たり前の一日を終えて家に帰に帰ったあと、意識さえしないほど当たり前になっている天井。怠惰で横になることが好きな自分にとってあまりに当たり前の天井。

殺された人々、負傷した人々のうち、子どもや女性、老人の比率はとても高い。それは、米軍の爆撃が、攻撃が、住宅を標的として行われたためである。

米軍戦闘機が上空を飛び回る中、家の中で子どもを守るように抱きかかえている人々の上に、爆弾は天井を突き破って、あるいは破壊した天井とともに落ちてくる。白旗を掲げてどこかに避難しようとすると撃たれ、それを恐れて家の中に留まるしかない人々の上に、米軍の戦闘機は爆弾を投下し続けた。

米軍の爆撃に襲われ、負傷した身を横たえた人々は、埃や鳥の羽ねが舞い落ちてくる天井を、どのように眺めていただろう。

少年の唯一動かすことができる目には、天井が見えているのだろうか。見えているとすると、どのように。


制作者の土井さんは、次のように語っている。

私にできることは、一人一人の命を、一人一人の顔を拾っていくことなのです。人の死を数で伝えないこと。等身大の固有名詞で伝えることが私の役割です。〔・・・・・・〕ドキュメンタリーというとその「作品」としての完成度が語られることもありますが、私の映像は「作品」ではありません。ファルージャで何が起こったかを歴史的証言として残すことがこの映像の目的なのです。

カメラの前で語る人々の言葉の中に、語ることも体を動かすこともできず目を左右に動かしまばたきするだけの少年の視線の中に、空の見える穴の開いた天井の下に残された誰もいない部屋の中に、車の音や風の音、人の声に、ファルージャで生活してきた人々の証言が、そして、

「米軍は、たた住民を殺すのです」。

というたった一言が一人一人の住民にとって何を意味するのかを語る証言が、記録されている。


私たちが編訳した同じ標題の本と、このビデオは、言葉と映像、侵攻下での目撃証言と侵攻前後の証言というかたちで、お互いに補い合うものとなっています。どうか、個人であるいはグループ上映会で、自主上映で、見て、広めて下さいますよう。

このビデオについての問い合わせ先は、「土井敏邦・ファルージャ侵攻の記録を残す会」
falluja2004@hotmail.co.jp
です。


益岡

自衛隊の即時撤退を求める国会請願署名

 
2004年12月に、イラクの女性NGO「イラク・女性の意志委員会」と連携し、「イラクの人びとの声にこたえ、自衛隊の即時撤退を求める国会請願署名」という運動が立ち上がりました。

ホームページは
http://page.freett.com/palestine/iraq_action.html
です。

2005年3月11日に、署名1万筆(第一次集約分)が国会に提出され、現在は、7月15日を締め切りに第二次署名集約の活動中とのことですので、ご案内致します。


投稿者:益岡

ダール・ジャマイル『イラク:破壊』が日本語化されています。

TomDispatch.com, 2005年1月7日に掲載されている,ダール・ジャマイルの"Iraq: The Devastation"が日本語化されてウェブ上にアップされています。TomDispatch.comに掲載されている記事に,関連する画像(ダール・ジャマイルが撮影した写真)を添付して豊富な脚注をつけたPDFファイルです。
→ http://www.geocities.jp/wemustnotkill/main/Iraq-TheDevastation.pdf

私が疑問に思っていることは、来年の1月にもなおも「イラク:破壊」と呼ばれる記事を書いているのだろうかということである。2004年の最初の半年はまさに兆候であった。2004年終わりの恐ろしい数ヶ月が来るべき恐怖の香りを予言するであろうところの来年度版「イラク:破壊」を書いているのだろうか?そして2006年には?2007年には?

――ダール・ジャマイル,『イラク:破壊』(翻訳はnoranyankoさん)


ここで日本語化されているジャマイル記事にある,「2003年7月にキルクークの自宅から米軍に拉致されてティクリット近郊の米軍施設に監禁され、1ヶ月後に昏睡状態でサラハディン総合病院に捨てられた」男性,サディク・ゾーマンさんについては,2004年1月にダール・ジャマイルが伝えた記事(→私の個人ウェブログで概略を日本語に)が米国内で大きな反響を呼び,「何かできることを」という一般の人々の思いが,募金運動につながったとの報が同年6月にありました(→同じく私の個人ウェブログで概略だけ説明英語記事)。

しかし,どんなに多くの人々の善意が集まったところで,ゾーマンさんが連行される前の状態に戻るわけでもありません。

電気拷問の痕の残る体で反応もなくベッドに横たわっているサディク・ゾーマンさんのお写真は上記PDFファイルにも含められていますが,どうか,サディク・ゾーマンさんが米軍に連行される前のお姿も見てください。破壊される前のこの男性の姿を。

↑PDFファイルの画面キャプチャ。画面右上と左下がサディク・ゾーマンさんの画像。

↓ご家族が部屋に飾っている写真立ての中のサディク・ゾーマンさんのお写真。

* picture taken by Dahr Jamail

サディク・ゾーマンさんについてのダール・ジャマイルの記事は,反戦翻訳団さんでも日本語化されています。

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[Software Tips]
※PDFを読むにはAdobe Acrobat Readerが標準的ですが,このソフトは異様に重いので,環境によってはファイルを開けないという場合もあるかと思います。その場合,よりずっと軽快に動作するPDF閲覧ソフトがありますので,お試しください。

Foxit PDF Reader for Windows(フリーソフト)
http://www.foxitsoftware.com/pdf/rd_intro.php
→日本語を読むには,Eastern Asian Language Supportというところにある"FPDFCJK.BIN" というファイルも必要です。(今回ご紹介したPDFファイルが読めることは,私の環境=WinXP+Firefox 1.0.3で確認済み。)

……このほかにもたくさんのソフトがあります。

投稿者:いけだ