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2006/07/19

女性への隠れた戦争

 
アメリカ合衆国軍がイラクを占領する中、女性に加えられている様々な犯罪。長いので二つに分けます。本日は、第一部をご紹介いたします。

女性への隠れた戦争
ルス・ローゼン
2006年7月13日
ZNet 原文

アブグレイブ、ハディーサ、グアンタナモ。我々の国(米国)が恥じ入るべき言葉である。今やそれに、バグダードの南20マイルにある町マフムディヤが追加された。伝えられるところでは、今年3月、そこで、米軍兵士5人の集団が、若いイラク人女性アベール・カシム・ハムザを強姦して殺害した。兵士たちは、それから、犯罪を隠蔽するために、彼女の遺体に火を付け、父と母と妹を殺した。この一人の女性に対する強姦は、事実ならば、おそらくは、単なる孤立した事件ではない。けれども、我々はどうすればそれを知ることができるだろうか? イラクでは、強姦について話すことはタブーである。強姦されたことに恥じ入ったこの少女の親戚たちは、公式の葬儀はおこなわず、どこに彼女を埋葬したかについても話したがらない。

他の場所に住む女性たちと同様、イラクの女性たちも、ずっと強姦の攻撃を受けかねない立場にいた。けれども、米国がイラクを侵略して以来、性的テロリズムについての事件報道は如実に増えている。しかも、それは、家族の不名誉を恐れて強姦をイラク人官僚にも占領軍にも報告したがらない女性がほとんどという実状の中で、そうなのである。地方部では、強姦の犠牲になった女性は、「名誉の殺人」として、家族の名誉を回復するために親戚の男性に殺される恐れもある。アムネスティ・インターナショナルは、2005年の報告書で、「性的犯罪について、しばしば実行犯ではなく犠牲者になすりつけられる不名誉のため、そうした虐待を伝えることが非常に難しくなっている」と報じている。

しかしながら、このイラク人女性に対する強姦は、今や、ブッシュ政権がイラクの名誉を傷つけるやり方のシンボルになりつつある。ヌーリ・アル=マリキ首相はすでにこの犯罪に対する審問を開始した。普段は謝罪の意味を知りさえしない米国政府の中で、駐イラク米国大使ザルメイ・カリルザードと駐イラク米軍トップのジョージ・W・ケーシー・ジュニア将軍が公式に謝罪した。イラクのムスリム法学者協会は、この犯罪を激しく批判し、次のように非難した。「占領軍兵士が犯したこの行為、少女を強姦して遺体を切り刻み、家族を殺したこの行為は、人類すべてを恥じ入らせるものだ」。

たしかに、恥である。けれども、それではまったく十分でない。結局のところ、現在、国際刑事裁判所は、強姦を戦争犯罪と見なしているのだから。

これまでずっとそうだったわけではない。はるか以前から、兵士たちは、文民指導者や軍指導者が批判したにもかかわらず、女性を戦利品とみなしていた。しかしながら、1990年代前半に、強姦について新たな国際的合意が形成された。活発な世界的女性運動に突き上げられて、国連総会は1993年、女性に対する暴力の撤廃に関する宣言(Declaration on the Elimination of Violence Against Women)を採択した。その後の、旧ユーゴ及びルワンダの国際戦犯法廷の規程、そして2002年7月の国際刑事裁判所ローマ規程は、いずれも、人道に対する罪としての強姦あるいは戦争犯罪としての強姦を定義している。

イラクの路上を我が物顔で走り回り、反対勢力に対する戦争の道具として女性を強姦する米軍を非難するものは誰もいない(けれども、まさにそうした行為により、3名のボスニア人兵士は、2001年、歴史上初めて、戦争犯罪としての強姦で訴追されるに至ったのである)。

イラク侵略と占領は、イラク人女性を侮辱し、危険に陥れ、弾圧している。けれども、主流はメディアでは、そうしたことについては広く報道されてはいない。米国人が運営する監獄に収容されると、彼女たちは性的虐待を受け、強姦される。文民としては、拉致され、強姦され、そしてときに売春のために売り払われる。そして女性として、とりわけアラブ世界でより解放された女性としては、ますます公的生活から姿を消しており、多くの人が自宅に閉じ込められている。

監獄内での強姦と性的侮辱

アブグレイブの被拘留者虐待スキャンダルでは、イラク人男性への拷問と性的虐待、侮辱に焦点が当てられた。様々な情報源から、女性捕虜も、強姦を含む同様の扱いを受けたことが示唆されている。

米国が運営するバググレイブ監獄には女性の被拘留者もいたことを知る米国人はおそらくほとんどいないだろう。被拘留者の一部は、政治的な理由でアメリカ人に拘束された人々である----バアシスト指導者の親戚であるとか、ゲリラの情報を男性の親戚に無理矢理言わせたり、降服させるための取引に女性たちを使えると占領軍が考えたといった理由である。

ヒューマンライツ・ウォッチの報告によると、女性の被拘留者を秘密が取り囲んでいるのは、「家族と占領軍とが共謀関係にあるからである」。家族は社会的な不名誉を恐れる一方、占領軍は人権団体からの非難や、女性をそのように扱うことは侵害の中でも特に酷いとみなすイラクの人々の怒りを恐れる。

それでも、匿名という条件で酷く怯えながらも、収容所から解放されたあと、人権活動家と話す女性の被拘留者たちもいた。殴打や拷問、独房に入れられることなどを彼女たちは話した。男性の被拘留者たちと同様、アメリカ合衆国が運営する監獄で最も恐ろしかったのは、性的な侮辱だったと言う。女性の被拘留者ほとんど全員が、強姦すると脅されたと述べている。女性たちの中には、裸で尋問を受け、アメリカ合衆国軍兵士たちのあざけりや屈辱的な言葉を投げかけられた人もいる。

英国のガーディアン紙は、ある女性被拘留者がアブグレイブからノートを持ち出すのに成功したことを報じている。彼女は、アメリカ合衆国の看守たちが監獄に拘留されている女性たちを強姦したと述べ、その中には現在妊娠している女性もいると語っている。絶望にかられた彼女は、イラク人レジスタンスに、女性たちがこれ以上の屈辱を味あわなくて済むよう、監獄を爆破するよう求めた。

拘束された女性たちの弁護をしようとしている7人の弁護士の一人アマル・カダム・スワディは、ガーディアン紙に、彼女が面会した女性の中で強姦について話す意志があるのはたった一人だと述べた。「彼女は泣いていました。強姦されたと私たちに言いました。数人のアメリカ合衆国軍兵士が彼女を強姦したのです。抵抗して追い払おうとしましたが、彼らは彼女の腕を傷つけました。縫い目を見せてくれました。『私たちには娘や夫がいます。どうか、誰にもこのことを話さないで下さい』。こう彼女は言ったのです」。

バグダード大学の政治学者フダ・シャケル教授もまた、ガーディアン紙に対し、アブグレイブに拘留された女性たちは性的な虐待を受け強姦されたと述べた。彼女は特に一人の女性をあげ、彼女がアメリカ合衆国軍事警察官に強姦され、妊娠し、その後に失踪したと述べた。

シャケル博士は次のように言う。「私の同僚のある女性は、拘束されてそこに連れて行かれました。解放されたあと彼女にアブグレイブで何が起きたか聞いたとき、彼女は泣き出しました。イラクの女性たちは、そうした話題を話すのを恐れ恥じ入っています。彼女たちは、大丈夫だったと言います。西洋の進歩的な社会ででさえ、強姦について話すのはとても難しいのです」。

シャケル自身も、アメリカ合衆国軍兵士の手でより酷くない性的虐待を受けている。検問で、あるアメリカ合衆国軍兵士が「[銃の]レーザーを彼女の胸に直接あて・・・・・・それから自分のペニスにあてたのです」と彼女は語る。「彼は私に、『ここに来い、売女! ヤッってやる』と言いました」。

バグダードで取材していたガーディアン紙のリューク・ハーディンは、アブグレイブで記者たちは女性の被拘留者に話すことを禁じられ、女性たちは窓のない小さな房に隔離されていたと報じている。しかしながら、ジャーナリストをアブグレイブ周辺に案内した上級アメリカ合衆国軍士官たちは、19人の「上等な」男性捕虜が拘留されているブロックで、女性が強姦されたことを認めた。現在、監獄の拘留施設を担当しているデーブ・クアントック大佐は、そうした虐待がどうして起きたか聞かれ、「知るもんか。指導者の問題だ。指導がなかったらしいんだ」と答えた。

男性と同様に女性の被拘留者もアブグレイブで性的虐待を受けていたことに誰も驚くべきではない。この監獄から持ち出され、私たちがすでに目にした写真のことを考えてみよう。そうした侮辱が男性の「抵抗力を弱める」ために使われるならば、女性の被拘留者に対して強姦が使われるのは想像できないことではまったくない。

けれども、どうすれば確実だと言えるだろうか? 2004年1月、イラク駐留アメリカ合衆国軍の上級司令官リカルド・サンチェス中将は、アントニオ・W・タグバ少将に、アブグレイブにおける人権侵害の疑いが続くことについて調査するよう命じた。タグバ報告は、少なくとも一度、アメリカ合衆国軍事警察官の一人が、女性被拘留者少なくとも一命を強姦し、また、守衛たちが裸の女性被拘留者たちをビデオと写真に撮影していたことを確認している。シーモア・ハーシュも、2004年、ニューヨーカー誌で、これらの秘密の写真やビデオ----そのほとんどはペンタゴンにより今も隠蔽されている----は、アメリカ合衆国軍兵士たちが「イラク人女性捕虜とセックスしている」シーンを示していると述べている。さらにいくつかの写真は、AfterDowningStreet.orgsalon.comなどのウェブで発表された。ある写真では、ある女性がシャツをたくしあげ、胸を向きだしにしている。どうやらそうするよう命令されたようである。

写真やビデオがすべて手に入れば、さらに多くのことを示すことだろう。アブグレイブの写真とビデオを統べてみたアメリカ合衆国議会の議員たちは、自分たちが目にしたものに本当にショックを受け気分を悪くしたようである。上院の多数党院内総務ビル・フリスト(テネシー州・共和党)はそれらを「ぞっとする」と述べ、当時の少数党院内総務トム・ダッシュルはそれを「身の毛もよだつ」と述べた。2004年4月にスキャンダルが明るみに出て以来、人権団体と市民権団体は、すべての視覚資料を公開するよう求めて、国防省と法的闘争を行っている。それらの文書がすべて一般の人々の手に入るようになったときはじめて、私たちは、女性と男性の被拘留者たちいずれにも加えられた性的行為の記録についてはっきりと----そして疑いなくもっと身の毛のよだつような----記録を知ることができるだろう。

後半(路上での性的テロリズム/女性を失踪させる)に続きます。

ルス・ローゼンは歴史家でジャーナリスト。米国カリフォルニア大学バークレー校で歴史と公共政策を教え、またロングビュー・インスティチュートの上級フェローでもある。彼女の新刊「 The World Split Open: How the Modern Women's Movement Changed America (Penguin, 2001)」の新版が、新たなあとがきを加えて2007年に刊行される予定。

本記事の初出はTomdispatch.com(「主流派メディアに対する定期的な解毒剤」)に掲載された。このサイトは、トム・エンゲルハートが運営するネーション・インスティチュートのブログで、トム・エンゲルハートは「アメリカン・エンパイア・プロジェクト」の共同設立者であるとともに、「The End of Victory Culture, a history of American triumphalism in the Cold War」の著者。

ブッシュへの申し入れ署名、締め切りが7月末となっています。どうかできるだけ大きく広めて下さいますよう。

投稿者:益岡