ランセットで発表された調査
ジョンズホプキンス大学とアル・ムスタンシリヤ大学が2006年に共同で行ったイラクにおける「通常でない死者数」の調査結果概要。65万5000人近くの人々が非通常の死を遂げている。
ランセットで発表された調査:2003年イラク侵略移行の死者
2006年10月12日
ElectronicIraq原文
著者:ギルバート・バーンハム教授・MD、リヤド・ラフタ教授・MD、シャノン・ドーcイー博士、レス・ロバーツ博士。参加期間:ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公共衛生校(ボルチモア)、アル・ムスタンシリヤ大学(バグダード)。
イラクで死ぬ人の数は増加を続けている。「連合軍」による死者の比率は2006年に減ったが、絶対数としてはそれも毎年増えている。銃撃が死因で最も多いことはこれまでと同じであるが、自動車爆弾による死者数が増えた。
図:濃い赤:年間に1000人あたり11人以上が暴力的に死亡する地域
紫薄赤:年間に1000人あたり2人~10人が暴力的に死亡する地域
桃薄赤:年間に1000人あたり2人未満が暴力的に死亡する地域
白:調査対象なし
2003年3月、米軍率いる「連合軍」がイラクを侵略して以来、イラク人死者の数については関心が広まっていた。暴力的な死をとげた人々の数を数えるために、保健省による病院での死亡者データや、埋葬記録、メディアの報道など、さまざまな方法が使われてきた。最もよく知られているのはイラク・ボディ・カウントで、その推定によると、侵略以来2006年9月26日までに、43491人から48283人のイラク人が殺されている。イラク内務省の推定は、同じ時期のイラク・ボディ・カウントの推定よりも75%高い。イラクのNGOイラキユンは、家族へのインタビューを含む様々な情報源から、侵略以来2005年7月までに12万8000人が死亡していると推定している。
米国国防省も、当初は記録などとっていないと言ったにもかかわらず、イラク人死者の記録を一部とっている。最近、マルチナショナル・コープス・イラク(MNC-I)重要活動データベースのイラク人犠牲者データベースが公開された。このデータは、2005年5月から2006年6月までに、一日平均117人の民間人犠牲者が出たと推定している。これは、「連合軍」が対応した出来事の中での死者に基づいている。人々に紛争がどう影響しているかについても様々な調査がある。これらの調査は、受動的な報告よりもはるかに高い犠牲者数推定を行っている。
暴力だけでなく、水の供給不足、下水施設が昨日しないこと、電力供給が限られていることなども、健康に害を及ぼしている。不安定でますます悪くなる保健医療サービスと、保健医療専門家がいなくなることで、リスクはさらに高まる。セクト的暴力が続く中で家を追放された人々が出て、被害を受けやすい人々の数も増加している。多くの紛争では、こうした間接的な理由による犠牲が、民間人死者の大部分を占める。
2004年に、我々は、イラク全土で平均8人からなる30世帯を一単位とするクラスターを無作為に33選び、調査を行った。2003年の侵略から17・8カ月の間に通常ではない死者がどのくらい出たかを知るためであった。この調査では、死亡者数が高かったファルージャのクラスターをはずれ値として除外したあとのデータに基づき、通常ではない死者が少なくとも9万8000人(95%信頼区間は8000人から19万4000人)と推定された。2004年の調査で記録された通常ではない死者の半数以上が暴力的な理由によるもので、暴力的な理由による死者の約半数はファルージャでの死者であった。
その後のイラクでの展開が死亡率にどう影響したかを見るために、我々は2006年5月から7月に全国の世帯調査をもう一度行った。このときは、2004年の調査期間を含む、2002年1月から2006年7月までの死者数を数えた。
図:赤四角 世帯調査
青三角 国防省
赤菱形 イラク・ボディ・カウント
他の紛争と同様、イラクでも、戦争の被害を民間人が負っている。ベトナム戦争では、300万人の民間人が死亡した。コンゴ民主共和国では紛争により380万人の死者が出た。東チモールでは、全人口80万人のうち20万人が死んだと推定されている。最近の推定では、この31カ月にダルフールでは20万人が死亡したとされる。我々の推定では、65万5000人近く----調査対象地域の人口の2・5%にあたる----がイラクで死亡した。イラクにおけるこの死亡率は戦時にはよくあることなのかもしれないが、長期にわたっていること、何千万人もの人々が影響を受けていることから、イラクは21世紀における最も致命的な国際紛争となっている。これは誰にとっても深く憂慮すべき事態である。
2004年の調査の結論として、我々は、中立の団体が、我々がイラクで観察した通常以外の死者について評価すべきだと述べたが、それは実現しなかった。我々は、現在もやはり、独立の国際団体がジュネーブ条約をはじめとする紛争時の人道的基準の遵守状況を監視することが危急に求められていると考えている。信頼できるデータのもとで、紛争にとらわれた民間人のために声を挙げることが、今後の戦争における悲劇的な犠牲を減らす教訓になるかも知れない。
関連リンク:
ランセット調査
投稿者:益岡