米軍の殺人占領
ランセットで発表された調査を受けて、デーブ・リンドルフが分析する。
米軍の殺人占領で12万7000人から23万8000人のイラク人が殺された
デーブ・リンドルフ
2006年10月11日
CounterPunch原文
ジョンズホプキンス大学の研究者らによって、権威ある英国の医学雑誌ランセット最新号に発表された研究によると、米軍のイラク侵略と占領により、42万6000人から79万4000人の死者がもたらされたという。同じグループが2004年により小規模な調査で発表した約10万人という死者数からかなりの増加であり、人口全体の2・5%に及ぶという驚くべき率である。
この不吉なニュースは、すべてと言わないまでも広い範囲の米国メディアで報じられた(私の地元の新聞フィラデルフィア・インクワイアラーは黙殺した)が、この研究の結果の中で最も心を乱す部分について報じたメディアはほとんどない。すなわちそれは、殺された人々のうち31パーセントは米軍と「連合軍」部隊(連合軍といっても実際には米軍兵士によってである。というのも、米軍と協力しているほとんどの外国部隊は、英軍を除いて戦闘に従事してこなかったし、英軍は、ほとんどが、戦闘がはるかに少ない南部に展開しているからである)により殺されたという点である。
これはつまり、2003年3月19日の侵略以来、米軍は、13万2000人から24万6000人のイラク人を殺してきたことになる。ペンタゴンが、ゲリラの数をおそらく2万人から4万人と推定してきたことを思い起こそう。そして、米軍は、そのごく一部だけを殺してきただけであることに。米軍が敵の兵士の4分の1を殺したと親切に仮定すると、それで最大1万人ということになる。すると、米軍が殺した民間人の数は12万2000人から23万6000人ということになる。別に急進的でも何でもないクリスチャン・サイエンス・モニター誌は、以前行った調査で、イラクの米軍は、敵の兵士一人を殺すにあたり30人の民間人を殺していると結論した。そうすると、査読誌であるランセットの研究が正しいとして、米国のイラク侵略占領は12万7000人から23万8000人の民間人を殺したことになるようである。イラク人犠牲者に関する様々な調査が明らかにしているように、犠牲者のうち少なくとも3分の1、おそらくは半分が、子どもたちである。
これが、我らが血塗られた大統領が自らの贈り物として声高に讃える、解放と民主主義のための偉大な戦争である。
そしてこれが、アメリカをもっと安全にするのだと聞かされた戦争である。
少し広い視野からものを見るために言うと、この偉大な総司令官大統領殿の命令で制服を着た我らが「英雄」たちの手で殺されたイラクの人々は、イラク人全人口2400万人の1%に及ぶ。対応する比率でアメリカ人が戦争で殺されるとすると、100万人から190万人が命を失うことになる! そんなことをするどこかの軍隊を、アメリカ人が「解放者」と呼んでいることを想像してみよう! イラクでこんなことをしながらそれがイラク人の友人を作っているのだと考えるのは、大馬鹿者に違いない。
虐殺におけるこの米国の役割が、ニューヨーク・タイムズやUSAトゥデイの報道から除外されていたのはどうしてか、不思議に思わざるをえない(ニューヨーク・タイムズは小さな円グラフを掲載し、そこには米軍兵士が引き起こした死者の比率が濃い網掛けで示されていたが、数値も比率もなく、また記事中にも数値は示されなかったので、インパクトは大きく減ぜられた)。
内側のページに掲載されたタイムズ紙のこの記事をさらに不快なものにしていたのは、同じ日のトップに掲載された記事で、その見出しは「イラクにおける3人目の死者が町を心底震わせている」というものだった。この記事は、ハイランドのニューヨーク村出身の兵士3人がイラクで死亡したことを詳しく報じ、それが小さなアメリカの町に悲しみと苦しみを引き起こしたと報ずるものである。米軍兵士たちによる人々の大量殺戮に関する報道を小さな扱いにしながら、この記事 ----それ自身としては優れた感動的な記事である----をそんなに大きく取り上げる編集者というのは、どんなものなのだろう? この編集者は、イラク人の死の一つ一つが、イラク全土の町や村で同じ悲しみと苦しみを引き起こしていることに気づいていないのだろうか?
アメリカ合衆国人は、いまも、米軍兵士がイラクの人々に加えている恐怖を理解していない。そして、犠牲者の数値----そして米軍がそのうち3分の1近くに直接の責任を負うこと----が隠されていることが、それがなぜなのかを示す一例となっている。
ブッシュ政権は、注意深く、アメリカ合衆国の人々がアメリカ合衆国人の死者や負傷者を目にしないよう取りはからった。棺桶は、デラウェアのドーバー空軍基地にある公開されていない場所に夜、飛行機で運ばれる。ブッシュ政権はまた、米軍の行為により殺された犠牲者数の公表を拒み、また、記者がイラクで米軍兵士の立ち会いなしに活動することを阻止することでイラク人死者数を隠してきた。
ランセットの研究は、この秘密のベールを、少なくとも一部は引き剥がしたが、米国のメディアは大部分、ブッシュ政権と共謀して、最も醜悪な真実----米軍が引き起こした民間人犠牲者の比率----を報道しない。そうした情報を手に入れたいならば、直接ランセットの報告そのものを読むか、ガーディアン-- --この点をはっきり報じている----のような英国の新聞を読むしかない。
デーブ・リンドルフは、「Killing Time: an Investigation into the Death Row Case of Mumia Abu-Jamal」の著者。カウンターパンチのコラムを集めた新著「This Can t be Happening !」はCommon Courage Pressの発行。また、バーバラ・オルシャンスキーと共著で「The Case for Inpeachment」を刊行している。
投稿者:益岡