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2005/11/11

BBCの記事見出しが「化学兵器」から「焼夷兵器」にサシカエになった件

「反戦翻訳団」さんの掲示板で知らせていただいたのですが、9日の当ウェブログ記事中のBBCの記事の見出しは差し替えられているそうです。

元の見出しは、US 'used chemical arms' in Iraq(米国はイラクで「化学兵器」を使用した)。

それが、US 'uses incendiary arms' in Iraq(米国はイラクで「焼夷兵器」を使用した)となったとのこと。

それを指摘しているのが、iraq-war.ruのフォーラムのgabrieleさんという方の記事。
http://www.iraq-war.ru/article/69499

これの元が、英国のメディアウォッチのサイト、Media Lensのフォーラム
http://www.medialens.org/board/
※FALLUJAH: BBC News changed title!!! - gabriele November 8, 2005, 11:23 am という投稿と、EXCLUSIVE! Fallujah and Chemical Weapons: the BBC is WRONG!!! - gabriele November 8, 2005, 4:19 pm という投稿

Media Lensのフォーラムに投稿された情報の元はthe Cat's BlogのTuesday, November 08, 2005投稿記事。
http://www.thecatsdream.com/blog/2005/11/exclusive-bbc-is-wrong.htm

このウェブログは、the Cat's Dreamという小さな映像製作会社(USA)のウェブログだそうです。

このthe Cat's Blogの記事に書かれているのは、ブログオーナーのGabriele Zampariniさんが、BBCの Tarik Kafala氏に、「BBCでRAIの番組を紹介している記事に、RAIへのリンクを入れてはどうか」と、RAIのURLを書いたメールを送ったこと、およびその後の一連のやり取りとBBCの記事の変更のメモです。

最初の「RAIへのリンクをしてはどうか」というガブリエルさんのメールに対するBBCからの返事には、「RAIにリンクするには権利関係をクリアしなければならないし、またどのように取材しているのかを調べなければならない」といったことが書かれています。(その後、前日のガブリエルさんからのメールへの返事と思しきことが書かれている。)

そのBBCからの返事を読む前に、ガブリエルさんはBBCの記事の見出しが変わっていることに気づいたそうです。

I had not read yet Mr Kafala's email when I noticed that the BBC NEWS website had changed the title to the article. From US 'used chemical arms' in Iraq to US 'uses incendiary arms' in Iraq.


ガブリエルさんは「見出しが変更されていますね。RAIへのリンクはまだないようですが」という内容のメールを、BBCに送ったそうです。

数分後に(早っ)来た返事には「少し調べてみたところ、WPは化学兵器ではないようです。また、米国はWPの使用を制限する条約の締結国ではないということもわかりました」と書かれていたそうです。

また、We are doing our best with a complicated report. Our story is not opinionated, it is both accurate and balanced. The Rai report may have at its heart an important truth, but it is factually inaccurate and misleading.(単純な話ではなく、BBCもベストを尽くしている。BBCの記事はオピニオンを表明するものではなく、事実に即し偏りのないものである。RAIのレポートはその核心部分には重要な真実を含んでいるかもしれないが、事実として不正確でミスリーディングである)とも書かれていたそうです。

その間、ガブリエルさんはBBC記事の変更に気づいて、ウェブログではそのことをメモしています。また、それに続いて、BBCに送ったメールも掲載されています。

ガブリエルさんは、この記事を受ける形で、次の記事を書いておられます。これがまたすごいんで、可能であれば、別途ご紹介します。

一方、ガブリエルさんが投稿したMedia Lensのフォーラムでは、WPは合法か違法か、WPは化学兵器かそうでないかなどについて、いくつかのスレッドで意見が交わされています。(11月8日から10日の投稿を参照。多いので全部は読んでいません。)

さて、他人様の説明を紹介するだけでは何ですので、以下は私の説明。長くなりますが。

私が最初に当該のBBC記事が出ていることを確認したのは8日の夕方、多分5時半くらいだったと思います。5時ごろからの民放のニュースでサダム・フセイン政権要人を裁く特別法廷の弁護団の人がまた射殺されたと聞いて、「とりあえずBBC」の習性でBBCにアクセスしたときです。が、BBCニュースのイラクについてのページに弁護団の射殺事件についての記事は見当たらず、おかしいなということに意識が行っていたので正確には記憶していないのですが、ひょっとしたらこの時点では、見出しは「化学兵器」(書き換えられる前)だったかもしれない。

BBCにchemical armsという文字列が出てたら、一瞬見ただけでもまず間違いなく記憶に残ります。「あのBBCで」という意識があるからです。一方、incendiary armsでも記憶に残るとは思いますが、「間違いなく」とは言い切れない。というのは、BBCで検索するとわかるように、昨年Real IRA(今年武装闘争終結を宣言して武器を放棄した「IRA」の分派)がこのタイプの爆弾を作って北アイルランドのいくつかの場所に仕掛けていますから、この語自体がBBCに出ていることにさほど「意外性」はなく、一瞬見ただけではそれほど印象に残らないかもしれないからです。(だからReal IRAはこわいって思ってるんですけどね。「作る能力がある」んじゃなくて、実際に作って仕掛けてるんだから。)

いずれにせよ、そういう記事が出ていたことは記憶していて、仕事が終わったあとでこのウェブログに書くために当該のBBC記事にアクセスして、「RAIでかくかくしかじかという内容の番組が放送」という記事であることを確認しました。

直後に、自分の個人ウェブログにもメモを載せました。8日21:11の投稿。(BBC記事を見たのはおそらく21:00ちょっと過ぎでしょう。)

nov9news-3

ここで私は、いつものように、記事の見出しと冒頭の2~3パラグラフ(文)、およびその後から1パラグラフを引用しています。引用箇所、特に見出しは単にコピペするだけですから、このときには見出しは既に書き換えられていたことがわかります。
またこのとき、自分のウェブログを開いたタブの横でteanotwarを開いていて、益岡さんがthe Independent掲載記事について書いてアップロードしていることも確認し、同時にRAIはイタリアだからイタリアのuruknet.infoにもっと詳しい情報が出ているのではないかと検索してみたりという作業を同時にやったと記憶しています。

次に、既に関連記事(the Independent)をアップしていた益岡さんに、2人の作業がかぶらないように「BBCは私が」という連絡をしました。そのついでに、わからないところを質問しました。これが8日の午後9時50分ごろ。メールの文面は:

ちょっとわかんないところがあるのですが、
BBC記事にWashington is not a signatory of an international treaty
restricting white phosphorus devices.とあるんですね。

白燐は化学兵器禁止条約の禁止化学物質ではないということでしょうか?


要は"an international treaty restricting white phosphorus devices"がわかってなかったんですが、それについて「化学兵器禁止条約」なんて短絡するかっていうと微妙なところです。記事について、どっかで「化学兵器」というインプットがあったことは確実。多分最初に見た見出しが「化学兵器」だったのだろうと思うのですが(自分のパターンから考えて)、本文には「化学兵器に相当」というRAIの主張が書かれているので、それに引きずられたのかもしれません。

ともあれ、益岡さんからはすぐに「たぶん1980年の国連特定通常兵器禁止条約を批准していないということではないか」というお返事をいただいて、「なるほどそういうことか」と納得し、検索をして、この1980年の特定通常兵器禁止条約の締結国にUSAが入っていないことを確認しました。

それからRaedにメールしたり風呂に入ったりして、11時半ごろに再度BBC記事にアクセスしたのですが、さっきと違うような気がします。BBCでは同じURLで記事の上書き更新はよくあることなので、それ自体は特筆にあたいすることじゃないのですが、違っていたのは、非常にわかりやすいところにWHITE PHOSPHORUSという囲みコラムが出現していたこと。

nov9_news-4
※画像はクリックで原寸。

記事の内容も変わっています。送信したメールを見直してみたら、Raedに送ったメールに記事の一部のコピペがありました。メールのタイムスタンプはTue, 08 Nov 2005 21:34:17。9時ごろに見た記事のコピペです。

以下、パラグラフごとに新旧を比較してみます。

第1パラグラフ

旧)Italian state TV, Rai, has broadcast a documentary accusing the US military of using of phosphorus bombs against civilians in the Iraqi city of Falluja.

新)Italian state TV, Rai, has broadcast a documentary accusing the US military of using white phosphorus bombs against civilians in the Iraqi city of Falluja.

変更点:
phosphorus bombs → white phosphorus bombs


第2~3パラグラフ

旧)In the film, eyewitnesses and ex-US soldiers who served in Iraq said white phosphorus bombs were used in built-up areas in the insurgent-held city.

Rai says this amounts to the illegal use of chemical arms, though such bombs are considered incendiary devices.

新)Rai says this amounts to the illegal use of chemical arms, though the bombs are considered incendiary devices.

Eyewitnesses and ex-US soldiers say the weapon was used in built-up areas in the insurgent-held city.

変更点:
パラグラフの入れ替え。
旧第2パラ、新第3パラにおいて、In the film, がトルツメになった。(このために時制が過去から現在になった。)
ex-US soldiers who served in Iraq → ex-US soldiers
white phosphorus bombs were used → the weapon was used(これは大して意味のない書き換えかもしれません。次のパラグラフで逆の書き換えがあるので、文章として語句配置を整えるための書き換えの可能性もあり。)


第4パラグラフ

旧)The US military admits using the weapon in Iraq to illuminate battlefields.

新)The US military denies this, but admits using white phosphorus bombs in Iraq to illuminate battlefields.

変更点:
denies this, but の追加。
the weapon → white phosphorus bombs


第5パラグラフ

旧)But US military officials deny using it in built-up areas. Washington is not a signatory of an international treaty restricting white phosphorus devices.

新)Washington is not a signatory of an international treaty restricting the use of white phosphorus devices.

変更点:
But US military officials deny using it in built-up areas. の1文丸ごと削除。
restricting white phosphorus devices → the use of white phosphorus devices(the use ofの挿入)


ここまでしかメールで送ってないので、その後の部分はどう違いがあるのかはわかりません。第6パラグラフの内容(タラバニがイタリア訪問中)と第9パラグラフの内容(BBCのローマ支局の人がイタリア軍撤退はpolitical tug-of-warのsubjectになっているとコメントしている)はこの位置にあったと思いますが、第7パラと第8パラの内容(ファルージャ攻撃から1周年であること、また放送についての情報)については記憶がないです。記事のどこかには書かれていたと思いますが、この位置だったかどうかは「?」。

その後の部分では、新しい記事では番組の内容がわりと細かく書かれていますが、この点は8日午後9時ごろの記事にはここまで細かく書かれてなかったと思います。

白燐弾についてのワシントンの主張も、8日午後9時ごろの記事には書かれてなかったと思います。

よって、8日午後9時ごろの記事と、午後11:20の記事(確定版)との違いは、大きなところでは「米国はこの武器を使ったことを違法とは考えていない」ということに重点を置くようにしてあることと、白燐弾と米国との関係について囲みコラムを入れたことの2つと、フィルムの内容を細かく書いていることです(BBCの人がRAIのフィルムを見たのでしょう)。(なお、元米兵のインタビューの箇所はBBC記事内からストリームされるようになっています。)

既に書いたように、BBCは同じURLで記事のアップデートをすることはよくあり、その内容によって見出しが更新されることは日常的です。(例えば、「どこそこで鉄道事故発生」という見出しの記事は、数時間後には同じURLで「どこそこで鉄道事故、死者○人」という見出しで、内容もアップデートされたものになる、というように。)

しかし、US 'uses chemical arms' in IraqをUS 'uses incendiary arms' in Iraqにしたことは、情報のアップデートではありません。

記事自体が、米国の主張を大きく取り入れる方向で書き換えられているので、「WPはchemicalではなくincendiaryだ」という米国の主張に準じた形にした、とも考えられなくはないのですが、もともとの見出しでも、chemicalを含む部分は引用符でくくられていて、「そう述べているのは私たちBBCではありません、ほかの誰かです」ということは明示されていますから、書き換える必要性はないはずです。

それでもなお置き換えたということは、語を置き換えることそのものが目的だったのかもしれないですね。つまり、chemical arm/weaponという語は、BBCにおいてはタブーに近い、ということです。

なお、今回のRAIテレビの報道について、英紙インディペンデントではしっかりした記事を出していましたが、ガーディアンは沈黙しています。インディペンデントでは見出しも「化学兵器」です。
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投稿者:いけだ

全然関係ないしどうでもいいけど、わたし、「RAI」とタイプしようとして「IRA」とタイプしてた。orz
修正しましたけど、習慣っておそろしいですね。

追記:
BBCでおもしろいものを見つけた♪

ロシアで「外国のNGOはロシアでNGOとして登録しないと活動できない」という法律が議会を通過した、という記事。見出しにご注目・・・"curb"って〈事実〉じゃないっすよね、記事読むと。

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この法律に反対するNGO(複数)が「これは活動をcurbするものだ」って主張してるんですよね。

でも見出し。

しかもこの記事写真。

激笑った。BBC流だね。